相続対策の費用は、目的と方法を決めてから、報酬、公的手数料と税、実費、継続する支出に分けて確かめる。遺言、贈与、信託を、すべての家族が一式で用意する必要はない。
架空の家族で考えよう。父の隆雄は、妻の恵子が住まいを維持できるよう、遺言を考えている。娘の玲香は贈与も調べているが、対策一式の料金に何が含まれるか分からない。
恵子は、準備にお金を使いすぎ、今の生活費が減ることを心配している。
目的は、税額を下げることだけではない。本人の希望を実行し、生活と財産管理を保ち、引き継ぐ人が手続と資金を用意できるようにする。
作成費だけ安くても、実行できない内容や、生活費が足りなくなる案では、希望を実現しにくい。
手持ちの資料から、一覧を作る
通帳、不動産の登記や税の通知、証券、保険、借入れと保証の契約を集め、財産と負債の一覧を作る。新しいサービスを契約せず、手持ちの資料から始めることもできる。
ただし、証明書の取得、照会、専門的な評価等には費用がかかる場合がある。調査がすべて終わるまで無料、という意味ではない。
家族関係も、記憶だけで決めず、必要な戸籍等で確かめる。
子の有無、再婚、前の婚姻の子、認知、養子、子に代わって孫等が相続する代襲等で、相続人と権利が変わる。戸籍の取得費も、別の予算に入れておこう。
隆雄は、恵子の毎月の生活費と自宅を残す希望を、玲香は分かっている財産と未確認事項を記入することにした。相続対策の始め方を見ながら、相談の目的を先に絞る。
遺言の作成・保管・確認費用
自筆証書遺言と法務局の保管制度
自筆証書遺言は自分で作れるが、民法が定める方式を守る必要がある。
紙やペンの代金を比べることと、希望を有効に実行できる内容かを確かめることは違う。全文、日付、氏名を自分で書くこと、押印、財産目録の方式等を確認しよう。
法務局へ保管を申請する手数料は、遺言書一通につき3,900円だ。保管する年数ごとに料金が増える制度ではない。
戸籍や住所の資料、専門家へ内容を確認してもらう報酬、亡くなった後の証明書の交付等は、別の費用になる。
法務局に保管された遺言書は、家庭裁判所の検認が不要になる。ただし、内容の有効性、一定の家族の最低限の取り分である遺留分、税の問題まで保証する制度ではない。
3,900円で、すべての法的確認と、亡くなった後の実行まで終わるわけではない。
公正証書は、受取人ごとに手数料を計算
公証人の作成手数料は、政令で決まっている。専門家に相談や準備を頼む報酬とは別だ。
2025年10月の改正後の表を使い、財産を受け取る人ごとの価額に対応する手数料を足す。遺言加算等も確かめる。
手数料の計算に使う財産の価額を、恵子が受け取る分2,000万円、玲香が受け取る分1,000万円とする。全体が1億円以下の説明用の例だ。
2,000万円に対応
手数料 2万6,000円
1,000万円に対応
手数料 2万円
全体が1億円以下
加算 1万3,000円
①+②+③=5万9,000円
これは基本部分の合計で、費用の総額ではない。電子データ・書面の交付、原本の枚数による加算、証人、病床での加算、公証人の出張日当・交通費、資料取得、専門家への依頼報酬等は別に確かめる。土地の価額の扱い等も公証役場へ確認する。
「総財産3,000万円だから一人分の表だけ」とは計算せず、受け取る人ごとの内訳を伝える。保管申請の3,900円と、公正証書の例の5万9,000円は別の制度の費用だ。方式、保管と亡くなった後の手続も比較し、遺言作成を相談できる専門家へ必要な範囲を確認する。
贈与の税と、残る生活資金を確認
現金の贈与では、合意と振込み、申告が必要な場合の税や税理士報酬等を確かめる。
不動産なら、登記の税と報酬、不動産取得税等も関わる。相続の登記の税率を、贈与の名義変更へそのまま使わない。
暦年課税の基礎控除110万円は、受け取る人が一年間にもらう贈与の合計で考える。
玲香が同じ年に、隆雄から80万円、恵子から50万円をもらえば、合計130万円だ。贈る人が別でも、各110万円以下だから税はかからない、と済ませない。他の贈与、課税方法、特例等も確かめる。
相続税へ生前贈与を加えるかは、別に判定する。2024年以降の暦年贈与には、対象期間を7年へ延ばす経過措置がある。
2026年中の死亡では原則3年で、その後、段階的に伸びる。贈与税がかからなくても、相続税が必ず減るとは限らない。
相続時精算課税には、別の110万円、届出、同じ贈与者について暦年課税へ戻せない点、相続時の加算等がある。
2,500万円まで、無条件で相続税もかからなくなる制度ではない。税の試算、贈与の成立、本人の生活や介護費を、一緒に確かめる。
隆雄が玲香へ渡した資金は、原則として隆雄自身の生活費へ自由に戻せるお金ではなくなる。恵子は、税額の比較だけでなく、対策後に夫婦の現金がいくら残るかを先に見たいと話した。贈与と他の相続対策の組合せも、生活の前提をそろえて検討する。
信託は、契約後と終了時の費用も確認
家族信託は、どの財産を何のために、誰に管理してもらうかを決める。預かる人を受託者、利益を受ける人を受益者といい、管理、処分、交代、終了後に渡す先等を設計する。
家族信託という名前だけで、全財産の管理、生活や介護の支援、遺留分、税が、自動的に解決するわけではない。
相談と設計、契約書、公正証書、不動産登記、銀行の口座調整、税の確認等が、見積りにどこまで含まれるかを調べる。
税や登記費用と、専門家報酬を分ける。全国一律で50万〜150万円になる等、根拠のない相場を前提にしない。
契約後も、受託者の記録と報告、口座や財産の管理、必要な申告、変更、交代、終了と登記等に、費用がかかる場合がある。
最初の契約作成費だけを、将来も含めた総額と考えない。
今の生活費の支払いを助けてほしいなら、信託だけでなく、本人の意思と能力に応じた管理契約や後見等も比べる。
必要な権限と、対象の財産が違う制度を、広告の基本料金だけで選ばない。
生前の試算と、死後の申告を分ける
生前の相続税の試算は、財産の評価、将来の家族関係、受取人等を仮定して行う。
亡くなった後の申告は、死亡日の財産と借金等、一定の贈与、実際の相続人と取得分、特例の条件等を調べて行う。生前の試算を頼んでも、将来の申告まで契約したことにはならない。
税理士報酬に、法律で決まる公定料金はない。財産の何%という見積りでも、基になる財産の範囲を確かめる。
土地、非上場の株、相続人の数、資料収集等の加算、申告後の照会や税務調査、未分割後の修正、準確定申告等は、別費用になる場合がある。
相続税の基礎控除は、3,000万円+600万円×法律上の相続人の数が基本だ。ただし、財産の売れそうな値段を足すだけで、申告不要とは決められない。
特例で税がゼロになっても、申告が必要な場合がある。依頼報酬、納める税額、支払いに使える現金を、分けて用意しよう。
対策する場合も、しない場合も比べる
税の効果を比べる時は、家族、財産、評価、死亡時期等の前提をそろえる。
贈与税と相続税だけでなく、登記や取得の税、報酬、維持費、必要な資金も比べる。安い相談料だけを差し引き、必ず得をすると決めつけない。
遺言の作成費を払えば、すべての争いがなくなるわけでもない。遺言の有効性、遺留分、受取り後の管理や生活は、別に考える。
将来の争いの費用を、根拠なく決めつけ、契約を急ぐ理由にしない。
一方、本人の意思と能力がある間に確認できることはある。現状の資料を整え、本人が希望する配分と生活を記録し、必要な範囲を相談する。早く準備する理由は、支払う商品を増やすためではなく、選択肢を具体的に比べる時間を持つためだ。
見積書の七項目を確かめる
- 何の目的で、誰の財産について、誰が依頼するか。
- 調査・試算・書面・手続のうち何を仕上げるか。
- 公的手数料・税、報酬、実費を分けた金額。
- 資料収集、他の専門家、人数や物件の追加条件。
- 契約変更、解約と中途終了時の精算。
- 作成後の継続管理、見直し、死亡後や終了時の対応。
- 支払時期、原本とデータの受取り、報告と連絡方法。
自分で行う資料整理と、専門家へ頼む仕事を分ける。一つの窓口でも、すべてが同じ契約に含まれるとは限らない。
税は税理士等、登記は司法書士等、紛争交渉や権利は弁護士等、必要な担当を確かめよう。
本人の生活と、実行できる内容で選ぶ
隆雄たちは、財産と生活費を確認し、恵子の住まいと玲香への承継について、遺言を相談することにした。
基本手数料の例の5万9,000円を総額と考えず、交付、証人、専門家への依頼等も含めた見積りを取る。贈与や信託は、その方法を使う目的があるかを、別に考える。
家族の話合いは、生前の遺産分割合意だけで将来の相続権や税務がすべて確定するものではない。本人の意思を適切な方式で残し、制度ごとの効力と見直しを確認する。相続対策の全体も、何を実行できるようにするかという目的から見ていく。
ほかにも確認する手続がある場合は、生前の全体計画の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
相続対策の費用は誰が払うか
依頼者と契約、仕事の目的と合意を確認する。一人が支払えば、他の家族や共同の財産から自動的に全額精算できるとは限らない。
自筆証書と公正証書は、材料費だけで比較できるか
材料費だけでなく、方式、内容の確認、保管と検認、執行を比較する。公的手数料と専門家報酬、亡くなった後の費用は別だ。
110万円以下の贈与なら必ず相続税が減るか
必ずではない。暦年の贈与を受ける人ごとの合計、贈与の成立と管理、加算対象者と3年から7年への経過措置等を確認する。精算課税とも別に判定する。
相続税申告の税理士報酬に公定相場はあるか
現行の公定料金はない。財産の種類、評価と調査、依頼範囲、追加条件や申告後の対応をそろえて見積りを確認する。
始める年齢に決まりはあるか
一律の開始年齢ではなく、本人の意思と能力、生活、家族と財産に応じて考える。既に争いや期限があれば資料完成を待たず相談する。
本記事は一般的な情報である。費用と税効果は、財産、本人の希望、現行の手数料と各契約等を確認して判断する。



