- 誰がどの遺産を現物で取得するか
- 何の評価額を基に代償金を決めるか
- 支払原資・期限・分割払い・担保
- 相続税の課税価格をどう計算するか
- 現物で代償する場合や資産売却の所得税
代償分割は、一人または数人が遺産の現物を取得し、他の相続人に対して代償金等の債務を負う分割方法です。不動産や事業資産を細分化せずに承継できますが、評価と支払原資を曖昧にすると紛争・税務の原因になります。
代償分割と明記する
相続税法基本通達11の2-9は、代償分割を、現物を取得する相続人等が他の相続人等に対して債務を負担する分割方法と説明しています。
協議書には、取得する遺産、代償債務であること、金額、支払期限、振込先、分割払い・利息、担保、不履行時の扱いを記載します。分割後の単なる贈与・売買と区別できる記録を残します。
相続税の課税価格
国税庁No.4173では、代償財産を支払った人は取得した現物財産の価額から代償財産の価額を控除し、受け取った人は取得した現物財産の価額に代償財産の価額を加えて課税価格を計算します。
例えば相続税評価額6,000万円の土地をAが取得し、Bへ3,000万円を支払う単純な例では、A・Bの課税価格は各3,000万円です。ただし、通常の取引価額を基に代償額を決めた場合は、国税庁が示す比率計算を用いるため、評価基準を確認します。
代償金の評価基準を決める
- 相続税評価額
- 固定資産税評価額
- 不動産鑑定・査定等による時価
- 非上場株式等の専門評価
どれを使うかで代償額が変わります。評価基準日、資料、含み益、売却費用、税負担、収益性も共有し、合意過程を残します。
現金以外で代償すると譲渡所得が問題になる
所得税基本通達33-1の5は、代償債務の履行として資産を移転した場合、履行時の価額でその資産を譲渡したものとしています。現金不足を理由に別の不動産・株式等を渡す場合は、譲渡所得を事前に試算します。
相続した資産を売って代償金を作る場合
相続した土地建物の取得費・取得時期は原則として被相続人から引き継ぎます。国税庁No.3270を確認し、取得資料が不明な場合の概算取得費、売却費用、長期・短期区分を整理します。
一定期間内の譲渡で要件を満たす場合は、相続税の取得費加算を検討します。相続税と譲渡所得税は別の課税であり、「二重課税だから一方が不要」とは扱いません。
支払能力と不履行対策
代償金は相続税納税・借入返済・生活費と競合します。預金、融資、保険、売却予定を確認し、必要なら分割払い、期限の利益喪失、担保、所有権移転・登記の時期を設計します。全体比較は相続財産の4つの分け方も参照してください。
よくある質問
代償金を受け取ると贈与税ですか?
適正な遺産分割として支払われる代償金は、相続税の課税価格計算に反映されます。ただし遺産に比べて不自然に高額な支払や分割後の別取引は、贈与等が問題になることがあります。
代償金は相続税評価額で決めますか?
当事者が合意する評価方法で決めますが、通常の取引価額を基に代償額を決めた場合は、相続税の課税価格の計算方法が変わります。評価基準と根拠を協議書に残します。
現金の代わりに不動産を渡せますか?
可能ですが、所得税基本通達33-1の5により、代償債務の履行として資産を移転すると、その時の価額で譲渡したものとして譲渡所得が問題になります。
代償金を作るため相続不動産を売ると二重課税ですか?
相続税と譲渡所得税は課税原因が異なります。売却益の計算、被相続人から引き継ぐ取得費・取得時期、相続税の取得費加算を確認します。
本記事は一般的な制度の説明です。評価額、相続分、代償金、譲渡所得、特例、登記・売却方法は個別事情で変わります。協議書へ署名する前に、資料、条文、国税庁等の最新案内と専門家の確認を併用してください。



