成年後見を受けていた人が亡くなったら|後見人の精算と相続人への引継ぎ

成年後見を受けていた人が亡くなったら|後見人の精算と相続人への引継ぎ

成年後見を受けていた人が亡くなると、成年後見は終了する。後見人が、そのまま遺産を分ける権限を持つわけではない。一方で、計算や引継ぎ、条件を満たす限られた死後の事務が残る。

母が亡くなり、娘の理恵は後見人に「施設の支払も、葬儀も、兄との分割も全部お願いしたい」と連絡した。兄の誠は通帳の引渡しを急いでいる。後見人の仕事がいつまで続くのか、家族が何を引き継ぐのかを整理する架空の例である。

死亡後の窓口を確認し、生前と同じ代理を続けない

成年後見は本人の生活や財産を守るための制度であり、本人の死亡によって終了する。後見人が生前に持っていた代理権で、死亡後も何でもできると考えない。死亡を確認したら、後見の事件を担当する家庭裁判所への報告と必要書類を確認する。

相続人の一人から「自分が全部受け取る」と言われても、後見人がその人へ遺産を自由に配分するわけではない。相続人の範囲、遺言執行者の有無、受取る権限、今後の財産管理の体制を確かめる必要がある。

理恵が娘であることと、母の預金全部を単独で受け取れることは同じではない。誠との分割を後見人に決めてもらう前提ではなく、財産と資料を適切に引き継ぐ段取りを相談する。

後見の計算と、財産の引継ぎを行う

民法870条は、任務終了後2か月以内に管理の計算をすることを定め、家庭裁判所による期間の伸長も認めている。裁判所に提出する終了時の報告、財産目録、収支や領収書等の具体的な書式と期限を確認する。

管理していた預金、現金、有価証券、重要書類、鍵等を一覧にし、相続人等の権限を確認して引き継ぐ。渡した日、相手、品目、残高、未払金、保管している原本を記録する。口頭で「通帳は渡した」で終わらせない。

後見人の報酬が未確定なら、家庭裁判所の審判など必要な処理と、その分を含む収支を確認する。報酬や未払費用があることと、家族が遺産をどの割合で分けるかは別の問題だ。

できる死後事務には条件と範囲がある

民法873条の2は、必要があり、相続人が財産を管理できるようになるまで、相続人の意思に反することが明らかな場合を除き、一定の事務を成年後見人が行えるとする。特定財産の保存、支払期限が来た相続債務の弁済などが対象となる。

火葬・埋葬に関する契約や、それ以外の相続財産全体の保存に必要な行為など、同条3号の行為には家庭裁判所の許可が必要だ。千葉家裁の案内では、電気・ガス・水道の解約や、債務の弁済のための預貯金の払戻し等も許可を要する例として示されている。

「支払ってよい費用なら、口座も自由に解約できる」とは考えない。債務を払う行為と、その資金を口座から払い戻す行為を分けて確認する。急ぐ事情があれば、請求書、残高、必要な行為を具体的に示して家裁へ相談する。

葬儀、遺産分割、保佐・補助を一括りにしない

火葬・埋葬の契約と、葬儀全体の契約は同じではない。千葉家裁の案内も、後見事務の一環として葬儀を執り行うことはできないと区別している。親族が別の立場で契約する場合などは、その立場と費用を分けて整理する。

民法873条の2の死後事務の仕組みを、保佐人、補助人、任意後見人などへ、そのまま当てはめない。制度ごとの契約や権限を確認する。後見人が別に遺言執行者へ就任する場合も、後見人としての仕事と区別する。

理恵と誠は、母の財産一覧と未払費用の一覧を受け取り、引継ぎ先と確認書類をそろえることにした。葬儀の契約者、口座の相続手続をする人、税金や放棄の期限を調べる人を決める。後見の終了処理がある間も、相続人自身の期限が止まるわけではない。

関連する手続は、相続手続きの流れと期限|死亡後7日・3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月の順番からも確認できる。

よくある質問

後見人がそのまま遺産分割を決めるか

成年後見は死亡で終了する。後見人という立場だけで、相続人の代わりに遺産を配分する権限が続くわけではない。

本人が亡くなったら一切の事務ができないか

計算・引継ぎのほか、民法873条の2の条件を満たす限られた死後事務を行える場合がある。行為によって家裁の許可が必要だ。

保佐人にも同じ死後事務の許可制度があるか

民法873条の2による成年後見人の仕組みをそのまま使うものではない。保佐・補助・任意後見等は権限と制度を別に確認する。

確認に使える資料

2026年10月21日時点の一般的な説明である。登場人物と金額は説明用の架空の例で、実際の相談事例ではない。具体的な判断は資料と事情を確認して行う。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律と税務を分けずに確認

相続税申告、相続登記、不動産処分、遺産分割が同時に動く場面を前提に、弁護士・税理士の両面から整理しています。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

確認日

最終更新:

TOP

電話でお問い合わせ LINEで簡単お問い合わせ