遺言書の探し方。確認すべき4か所と、発見後に動く順番

遺言書の探し方とは、被相続人が残した遺言書の有無を確認し、その保管場所や種類に応じて適切な方法で発見・取得するための一連の手順とされています。

結論から言うと、遺言書は自宅・貸金庫・公証役場・法務局の4か所を中心に確認し、種類によって発見後の対応が異なるため、見つけた段階で内容を確認する前に一度立ち止まることが重要とされています。

「あの引き出し、もう全部開けた?」

親族が集まった実家のリビングで、誰かがそう言い出す瞬間がある。故人の温もりがまだ残っているような気がするその部屋で、我々は静かに、しかし確実に「捜索者」へと変貌していくのだ。

遺言書の探し方、などと検索している時点で、あなたはすでにその渦中にいるはずだ。そして正直に言おう。これは思っているより、ずっとシステマティックに動かないと、あとで盛大に後悔することになる。

焦り顔

遺言書なんて、どこに隠れてるんだ……。家中ひっくり返しても見つからない。

で、結論から言うと。遺言書の探し場所は「4か所」に絞られる

で、結論から言うと、遺言書の捜索は勘と根性で行う「大捜索」ではない。確認すべき場所は、大きく4か所に集約される。

  1. 自宅の保管場所(引き出し・金庫・仏壇の奥)
  2. 貸金庫(銀行の貸金庫は、相続人であることを証明すれば開けられる場合がある)
  3. 公証役場(公正証書遺言の検索)
  4. 法務局(自筆証書遺言の保管制度)

この4か所を制すれば、少なくとも「あとから別の遺言書が出てきた」という最悪の展開は、かなりの確率で防げる。

では、なぜ4か所なのか。そこには「遺言書の種類」という問題が深く絡んでいる。

遺言書の種類は3つ。発見後の動き方が、種類ごとに変わる

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相続手続き
遺言書の種類は3つ。発見後の動き方が、種類ごとに変わる

遺言書には「3種類」ある。種類を知らずに探すのは、地図なしの宝探しだ

遺言書には、法律上認められた形式が3種類存在する(民法967条)。

  • 自筆証書遺言:故人が全文を手書きした遺言書。保管場所は故人次第、つまり完全に野生の状態で存在している。
  • 公正証書遺言:公証人が作成した遺言書。全国の公証役場のネットワークで検索できる。これが最も「見つかりやすい」。
  • 秘密証書遺言:内容を秘密にしたまま、存在だけを公証役場に証明させる形式。レアだが、ゼロではない。

ここで重要なのは、「探し方」が種類によって変わるという事実だ。公正証書遺言なら、全国の公証役場に「遺言検索システム」があり、相続人であることを証明できれば検索してもらえる(平成元年以降に作成されたものが対象)。一方、自筆証書遺言は、2020年に始まった「法務局における遺言書の保管制度」(遺言書保管法)を利用していれば法務局で確認できる。利用していなければ、もう物理的に探すしかない。

図解

つまり、探し始める前に「どの種類の遺言書があり得るか」を推測することが、捜索を圧倒的に効率化する。

遺言書の効力は「作り方」で決まる。有効と無効を分ける条件

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自宅捜索の「5か所優先リスト」。執念深く、しかし冷静に

故人が公正証書遺言や法務局保管を利用していなかった場合、いよいよ「物理的な捜索」が始まる。やみくもに部屋を荒らしても混乱するだけだ。優先順位をもって動くことが肝心だ。

優先順位の高い保管場所

  • ①引き出しの奥・タンスの中:最もベーシック。封筒に入っていることが多い。「遺言書在中」と書かれている場合もある。
  • ②金庫・耐火ボックス:大事なものはここ、という人間は多い。暗証番号が不明な場合は、鍵師に依頼することになる。
  • ③仏壇・神棚の周辺:意外な盲点。故人が「大切な場所」と認識していた場所に置く心理は、珍しくない。
  • ④銀行の貸金庫:故人が利用していた銀行で確認。相続人であることを証明する書類(戸籍謄本等)が必要になる場合がある。
  • ⑤かかりつけの弁護士・司法書士・税理士:故人が専門家に預けていた可能性がある。付き合いのある士業がいれば、まず確認。
図解

見つけた瞬間に「やってはいけないこと」がある

ここは特に重要だ。遺言書を発見した直後、多くの人間が「とりあえず開けてみよう」という選択をする。しかしこれが、場合によっては大きな問題になる。

自筆証書遺言(法務局保管以外)と秘密証書遺言は、家庭裁判所での「検認」手続きが必要とされている(民法1004条)。

封をしたまま家庭裁判所に持ち込む必要があるのだ。開封してしまっても遺言書の効力自体は失われないとされているが、5万円以下の過料が科される可能性がある(民法1005条)。「開けてしまってから慌てる」という展開は、避けられるなら避けた方がいい。

一方、公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言は、検認不要だ。発見したらそのまま内容を確認できる。

遺言書の検認手続き、発見から完了まで動く順番

遺言書の検認とは、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認・保全するための法的手続き…

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遺言書が「なかった場合」の動き方も、知っておきたい

すべての場所を確認し、どこにも遺言書が存在しなかった場合。これはこれで、ひとつの「確定」だ。

遺言書がない場合、遺産の分け方は相続人全員による「遺産分割協議」によって決める(民法907条)。全員の合意が必要であり、一人でも欠けると無効になる。

ここで押さえておきたいのが、時間軸だ。遺産分割協議そのものに法定期限はない。ただし、相続税の申告期限(相続開始を知った翌日から10ヶ月以内)が一つのマイルストーンになる場合が多い。配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)や小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4)を使いたいなら、原則として申告期限までに分割が整っていることが望ましいとされている。

また、相続放棄を検討している場合は別の時計が動いている。相続放棄の期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」(民法915条)だ。死亡日からではなく「知った時」が起算点になる点は、特に注意が必要とされている。

ホッとした顔

探す場所さえわかれば、ちゃんと動ける。意外と整理できるもんだな。

関連記事として、こちらも参考になります。

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よくある質問

遺言書が見つからない場合、どこに問い合わせればいいですか

まず全国の公証役場で「遺言検索システム」を利用することをおすすめします(平成元年以降作成の公正証書遺言が対象)。次に、法務局の「遺言書保管事実証明書」の交付請求で、法務局保管制度の利用有無を確認できます(遺言書保管法10条)。いずれも相続人であることを証明できる書類が必要になる場合があります。

封がされていない遺言書を見つけた場合、有効ですか

自筆証書遺言は、封がされていなくても要件(全文自書・日付・氏名・押印)を満たしていれば有効とされています(民法968条)。ただし封がない場合でも、家庭裁判所での検認手続きは原則として必要とされています(民法1004条)。

複数の遺言書が見つかった場合、どちらが有効ですか

原則として、日付が新しい遺言書が優先されるとされています(民法1023条)。ただし内容が一部重複する場合は、抵触する部分についてのみ新しい遺言が有効になる場合があるため、慎重な確認が必要です。

遺言書の検認申立てはいつまでにすればいいですか

民法上、検認申立てに明確な期限の定めはありません。ただし、検認を経ずに遺言を執行した場合には過料が科される可能性があります(民法1005条)。遺言書を発見したら速やかに申し立てることが望ましいとされています。

法務局で遺言書が保管されているか確認するにはどうすればいいですか

最寄りの法務局に「遺言書保管事実証明書」の交付を請求することで確認できます(遺言書保管法10条)。相続人・受遺者・遺言執行者であれば請求が可能とされており、戸籍謄本等の書類が必要になる場合があります。


遺言書の探し方。これ、ルートさえ知っていれば、闇雲に引き出しを開け続ける消耗戦にはならない。4か所の確認、種類の把握、発見後の検認──この順番で動くだけで、あとで「知っておいてよかった」と思える展開が、ちゃんと待っている。

早めに動いた人間だけが、後の手続きをスムーズに運べる。それだけの話だ。

けっこうオススメです。公証役場への問い合わせ、まず一本。伝わりましたかね。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務アドバイスではありません。具体的な判断は必ず弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。

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