相続空き家の3,000万円控除|2027年期限・要件・必要書類

相続空き家の3,000万円控除|2027年期限・要件・必要書類

実家の鍵を不動産会社に預ける日が決まった。片付けも終わり、買主も見つかった。ようやく肩の荷が下りる、と思ったところで「空き家なら3,000万円の控除が使える」という話を聞く。

ここで、一度だけ売買契約書の予定を見直してほしい。いつ引き渡すのか。古い家は誰が、いつ壊すのか。家と土地を誰が相続したのか。その違いが、控除を使えるかどうかにつながる。

相続空き家の特例は、一定の要件を満たす売却の譲渡所得から最高3,000万円を控除する制度だ。対象の家屋と敷地等を取得した相続人が3人以上なら、2024年以後の譲渡では上限が一人2,000万円になる。売却代金や税額から一律に3,000万円を引く制度ではなく、確定申告が必要となる。

売ってから調べるより、契約と工事の予定を決める前に確認した方が、選べる方法は多い。

3,000万円は、「税金」から引く数字ではない

不動産を売ったときの譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算する。この特例は、要件を満たすその所得から一定額を控除するものだ。

控除前の譲渡所得が1,000万円なら、控除できるのも1,000万円まで。上限3,000万円が適用される人の譲渡所得が4,000万円なら、控除後は1,000万円が残る。余った控除額が現金で戻るわけではない。

相続した家や土地では、基本的に親の取得費を引き継ぐ。家の取得費には建物の減価償却等の調整も関わるため、昔の購入代金をそのまま全部差し引くとは限らない。当時の売買契約書が見つからなければ概算取得費等の検討も必要になる。

仲介手数料、測量や解体にかかった費用も、売却との関係を確認する。片付けの支出がすべて譲渡費用になると決めず、契約書や領収書を残して税理士に示したい。

相続からの期限と、制度の期限を並べる

売却には、次の二つの期限がある。

  • 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却であること。
  • 2027年12月31日までの譲渡であること(2026年4月1日現在の国税庁公表要件)。

例えば、2023年6月10日に相続が始まったなら、3年を経過する日は2026年6月10日で、その年末の2026年12月31日が一つ目の期限になる。「ちょうど3年後まで」とも、「制度が2027年末までだからそこまで待てる」とも違う。

契約日と引渡日が年をまたぐ予定なら、所得税上の譲渡時期の扱いも先に確認する。確認書の交付日が、そのまま売却期限になるわけではない。日程をぎりぎりに寄せるより、工事と書類の取得まで含めて予定を組みたい。

古い家なら何でも対象、ではない

対象となる家屋は、原則として相続開始の直前に親が住んでいた家で、次の条件を満たす必要がある。

  • 1981年5月31日以前に建築されている。
  • 区分所有建物登記がされていない。
  • 相続開始の直前に、亡くなった人以外の居住者がいなかった。

「築年数の古いマンションが空き家になった」という場合でも、区分所有建物として登記されていればこの特例の対象にならない。親と同居していた家が、死亡後に空いた場合も、一人暮らしだったという条件と同じには扱えない。

母屋と離れが同じ敷地にある場合などは、主として居住していた一つの建物と、それに対応する敷地の範囲を確認する。敷地全体へ無条件に適用するとは限らない。

家と土地を、別々の人が相続していないか

この特例の対象者は、相続または遺贈により、対象の家屋と敷地等の両方を取得した相続人だ。包括受遺者や死因贈与を含む取扱いもあるが、誰が何をどの原因で取得したかを確認する。

兄が家だけ、妹が土地だけを取得した場合などは、売る物が空き家だからという理由だけでは進められない。生前贈与で取得した財産についても、相続税の計算に加わるからこの特例にも使える、とはならない。

分割協議をする段階で売却を考えているなら、税の要件も並行して確認したい。後から名義を動かせば同じ結果に戻るとは限らない。

親が老人ホームにいた場合は、家を出た日までさかのぼる

親が施設で亡くなったから、すぐ対象外と決める必要はない。一定の要件を満たす老人ホーム等への入所なら、入所前に住んでいた家が対象になる場合がある。

確認するのは、家に住まなくなる直前の要介護・要支援認定等、入所先の施設区分、入所直前に他の居住者がいなかったかという点だ。入所後も家財の保管などに使われ、事業、貸付け、他人の居住に使われていないことなども必要になる。

「住民票だけ実家に残していた」では足りない一方、住民票の記載だけで確認できない場合に、補足資料等で確認書が交付される余地もある。入所契約書、認定資料、家財の保管状況、電気・水道等の記録を確かめる。

介護のため子の家へ転居した場合を、老人ホーム等の例外と同じには扱えない。施設の名前だけでなく、法令上の区分と実際の居住経緯を確認したい。

売れるまで貸しておこう、の前に

空き家の維持費はかかる。買い手が決まるまで貸せば助かる、親族が短期間住めば管理も頼める、と考えることがある。

しかし、この特例では、相続後から譲渡まで、対象財産を事業、貸付け、居住に使っていないことなどが要件になる。取壊し前の家屋、取壊し後の敷地では、それぞれ確認する期間もある。新たな建物や構築物の敷地として使っていないかも確認が必要だ。

換気や清掃のために訪れることと、住まいや貸付けに使うことは違う。利用を始めてから取り消せば元どおり、と考えず、契約前に特例への影響を確かめる。

耐震改修か解体か――引渡しの前後で手順が変わる

主な方法は、次の三つに分かれる。

  1. 家屋を残して売る:譲渡時に一定の耐震基準を満たす家屋を売る。必要な証明書の調査・評価の時期にも条件がある。
  2. 全部取り壊してから敷地を売る:家屋と敷地の利用要件を満たし、全部の取壊し等をした後に売る。
  3. 売却後に耐震改修または全部取壊しを行う:2024年1月1日以後の譲渡では、譲渡の時からその翌年2月15日までに、一定の耐震基準に適合することとなるか、全部取壊し等が完了する類型もある。

三つ目を使うなら、「来年の申告までに解体すればよい」と覚えないことだ。期限は翌年2月15日。例えば2026年の譲渡なら2027年2月15日までで、確定申告の締切とは別になる。

耐震改修の類型では、売却後に証明書を取っただけでは足りない。国土交通省は、拡充されたこの類型では、定められた期間中の改修工事の実施が必要と説明している。

買主に工事を頼むなら、書類を受け取る約束まで

買主が解体する場合、売主は自分だけで工事を完了できない。工事を誰の費用でいつまでに行うか、必要書類をいつ受け取るか、実施されず控除を使えなかった場合にどうするかを、契約段階で話し合っておく。

国土交通省も、こうした特約の文例を公表している。ただし、特約がないだけで確認書が絶対に交付されない、という要件ではない。特約は、買主の協力を確保して後のトラブルを防ぐための備えだ。

約束を書けば工事の未完了が免除されるわけでもない。実際の完了と、それを示す書類が必要になる。税の適用確認は税理士へ、買主との義務や責任の定めは弁護士・仲介業者等へ、契約前に相談しておきたい。

相続人が3人なら、人数の数え方も確認する

2024年1月1日以後の譲渡で、対象となる家屋と敷地等のいずれも取得した相続人が3人以上の場合、控除の上限は一人2,000万円となる。2024年以後に相続した場合だけ、という意味ではない。

相続人が全部で何人いるかだけでなく、対象財産を誰が取得したかを見る。共有持分、換価分割の内容、登記や協議書の記載も確認する必要がある。全員に自動的に3,000万円ずつ、と試算しないことだ。

売却代金1億円は、自分の受取額だけで判定しない

売却代金は1億円以下である必要がある。同じ家屋・敷地等を分けて売った場合や、他の相続人が売った部分についても、一定の期間の売却代金を合算して判定する。

合算の対象期間は、相続時から、この特例の適用対象となる売却の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。後の売却で合計が1億円を超えた場合は、その売却の日から4か月以内に修正申告と納税が必要となる。自分の申告が終わった後の売却予定も、関係者間で確認しておきたい。

親子や夫婦、生計を一にする親族、内縁関係の人、特殊な関係のある法人等への売却にも適用制限がある。相手が法人だから親族との関係を見なくてよい、とはならない。

確認書をもらって、確定申告まで進める

対象家屋の所在地の市区町村で、被相続人居住用家屋等確認書の交付を申請する。相続人の住所地の役所と同じとは限らない。家を残して売るか、解体前後のどの類型を使うかで、確認事項や様式も変わる。

確定申告では、譲渡所得の内訳書、登記等に関する資料、売買契約書、確認書、類型に応じた耐震・取壊し関係の証明などを準備する。登記事項証明書は、不動産番号等を記載する所定の明細書によって添付を省略できる場合もある。

確認書は申告に必要な資料の一つであり、ほかの税務要件まで省略できる証明ではない。相続財産の取得費加算など、同じ譲渡について併用できない特例もあるため、申告前にどちらを使うか試算する。控除で譲渡所得がゼロになる場合も、適用を受けるための確定申告は必要だ。

相続登記は、不動産の名義変更の手続も確認し、買主への移転までの段取りを司法書士等と組む。名義変更前でも相談や売却の準備はできるが、登記を後回しにしたまま完了できるとは考えないようにしたい。

鍵を渡す前に、日付を三つ書き出す

相続開始日、売却・引渡しの予定日、工事の完了予定日。そこへ家屋と敷地の取得者、売却額、親の居住や入所の経緯を添えれば、税理士へ相談する材料になる。

片付けの最中には、古い契約書や介護認定の資料まで不要な紙に見えるかもしれない。捨てる前に、控除の確認に使うものがないか見ておきたい。売却までの管理や負担は、相続した空き家の固定資産税でも整理している。

家を手放す決心がついた後に、税のためだけに話をやり直すのは負担が大きい。だから、鍵を渡す前に日付と条件を確かめる。実家の整理を、売買契約の成立だけでなく、申告まで見通して終えられるようにする。

公的資料・根拠

よくある質問

相続した空き家なら3,000万円控除を使えますか

必ずではない。取得者、建築日、区分所有、居住者、利用状況、譲渡時期、売却額、耐震・取壊し等の要件を確認する。

相続からちょうど3年後までに売る必要がありますか

相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までが要件だ。現行制度の2027年12月31日という適用期限も別に確認する。

買主が売却後に取り壊す場合も使えますか

2024年以後の一定の譲渡では、譲渡の時から翌年2月15日までの全部取壊し等で対象になり得る。実施と証明書類の取得まで確認する。

相続人が3人なら上限はどうなりますか

2024年以後の譲渡で、対象の家屋と敷地等のいずれも取得した相続人が3人以上なら、一人の控除上限は2,000万円となる。

控除で税額がゼロになる場合も申告が必要ですか

この特例の適用を受けるためには、所定の書類を添えた確定申告が必要だ。

本記事は一般的な情報提供です。個別の対応は、相続開始日、取得と利用の経緯、契約や財産の資料を示して弁護士・税理士等へ確認してください。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律と税務を分けずに確認

相続税申告、相続登記、不動産処分、遺産分割が同時に動く場面を前提に、弁護士・税理士の両面から整理しています。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

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