相続登記の費用は、税金、依頼する仕事の報酬、証明書等の実費に分けよう。自分で申請しても、すべてゼロにはならない。
相続登記は、受け継いだ不動産の名義を変える手続だ。物件と必要な仕事を先にそろえると、自分でする部分と依頼する部分を比べやすくなる。
父の葬儀後、実家を受け取る奈緒は、弟の大地へ「登記まで頼むと高そうだから、自分でしようかな」と話した。大地が見つけた見積りには6万6,000円、別のものには7万7,000円とある。
税金まで含む総額なのだろうか。架空の姉弟と、仮の見積りで考えよう。
奈緒は費用を抑えたいが、平日に何度も動く余裕はない。大地も手伝いたいが、自分が払う部分が分からずにいる。
なぜ、分け方が決まった後も登記が必要なのか
家族全員が「実家は奈緒が取得する」と分かっていても、登記に父の名前が残ったままなら、外からその事情を確かめにくい。後に売却や担保設定をするときも、取得の経緯をたどる必要がある。
登記は、不動産の権利を公の記録に示す手続だ。長く名義が変わらないと、所有者の調査や土地の利用が難しくなる。その問題へ対応するため、相続登記が義務になった。
「家族内で争いがないから不要」と考えず、記録を現在の権利関係へつなごう。
ただし、相続登記の費用を払いさえすれば、遺産分割や相続税の手続も全部終わるわけではない。今回、誰がどの不動産をどの原因で取得する登記なのかを先に確認する。
費用を三つに分け、報酬だけの見積りと総額を区別する
| 費用 | 支払先・内容 | 比べる点 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 国へ納める登記の税 | 不動産の価額、取得持分、税率、免税。 |
| 専門家への報酬 | 申請・代理・資料収集等 | 税込か、含む業務、追加の条件。 |
| 証明書・郵送等 | 戸籍・住所・評価等の証明と郵送 | 取得済み資料、必要通数、立替えと精算。 |
報酬には、全国一律の法定総額はない。土地の所在地、古い相続の重なり、相続人等によって、必要な仕事も変わる。
誰でも必ず10万〜30万円等の一つの幅で決めず、同じ仕事の範囲で比べよう。
登録免許税は、原則として不動産の価額の0.4%
相続による所有権移転の登録免許税は、原則として1,000分の4、つまり0.4%だ。計算の基になる価格は、原則として固定資産課税台帳に登録された価格を使う。
価格がない場合等は、不動産を担当する登記所へ確認する。
奈緒が土地と建物を全部受け取り、同じ申請で登記する単純な例を考える。免税等はなく、土地の価格1,600万円、建物400万円とすると、合計2,000万円だ。
登録免許税は、2,000万円×0.4%=8万円になる。
実家が3,000万円で売れそうでも、その売値で自動的に計算するわけではない。
納税通知書の「価格・評価額」と、住宅用地の特例等を反映した「課税標準額」も区別しよう。持分の一部だけを受け取る場合は、その割合も確かめる。
複数物件や、担当法務局が違う物件の申請では、すべてを足して一回の税額で終わるとは限らない。
申請を分ける単位、価格と税額の端数処理、最低税額等を確認する。
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低い価額の土地は、免税を確認する
2027年3月31日までの一定の登記には、価格100万円以下の土地の相続等について、登録免許税を課さない措置がある。
土地を相続した人が登記前に亡くなり、その人を名義人とする相続登記にも、別の免税措置がある。取得する持分の価格や、申請書へ根拠を書く条件等を確かめよう。
免税は土地についての措置で、安い建物にもそのまま広げられるわけではない。
税率で計算した税額が1,000円未満なら、最低税額1,000円が問題になる。ただし、免税の土地にも必ず1,000円を払うという意味ではない。
6.6万円と7.7万円、同じ仕事を含めるとどうなるか
どちらも税込の架空の報酬で、下記以外に追加の仕事はないと仮定する。
申請 6万6,000円
+ 書類取得代行 1万1,000円
= 7万7,000円
申請と書類取得代行を含み
7万7,000円
報酬7万7,000円 + 税8万円
+ 実費3,000円 = 16万円
税8万円は前の土地・建物の例、実費は証明書・郵送等の仮額だ。報酬の表示額だけでは、最終的な支払額を比べられない。
16万円は相場ではなく、同じ仕事の範囲を比べるための仮定だ。
戸籍収集、相続関係図、協議書、未登記建物、住所のつながり、重なった相続や複数の担当法務局等について、何を追加で頼むかを見積書へ入れよう。
自分で申請すれば、何の費用を減らせるのか
必要な仕事をすべて自分で行い、上の例と同じ税金と実費がかかるなら、その二つで8万3,000円は残る。
専門家への報酬を省けることと、登記の費用が全部ゼロになることは違う。
手続を調べ、資料を集め、書類を作り、訂正に対応する時間も見込もう。
物件や相続人の数だけで、自分で申請できるかを決めない。相続の経緯、必要資料、家族の協力、期限と、自分が使える時間を確かめる。
奈緒は休む日数が気になる。大地は、資料を集める作業なら手伝えると話した。
全部任せるか、全部自分かの二択にせず、依頼先の対応範囲を確かめよう。取得済みの書類を使えるかも相談する。
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証明書代は、必要通数と取得済み資料を確認する
- 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍、除籍、改製原戸籍等。
- 相続人の戸籍、亡くなった人・受け取る人の住所を確認する資料等。
- 遺言、協議書等の取得原因に対応する資料と、必要な印鑑証明等。
- 固定資産評価、登記事項、その他の物件・権利を確認する資料。
必要書類は、遺言、協議、法定相続分等の申請内容で変わる。戸籍謄本1通450円、除籍・改製原戸籍1通750円等を基に、請求先と必要通数を確認する。
住所・評価の証明や郵送の料金は、自治体と請求方法ごとに確かめよう。
2024年3月からは、本籍地以外の市区町村窓口で戸籍等を取れる広域交付も始まった。ただし、請求できる人、戸籍の範囲、本人確認等に条件がある。代理人や郵送で使える制度ではない。
ほかの相続手続で集めた書類は、取り直す前に使えるか確かめよう。
遺産分割協議書は、相続人が合意した分け方を記録する書類だ。登記へ添えるというだけで、その書類へ一律に収入印紙が必要になるわけではない。
別の契約を含めた書類なら内容を確認しよう。登録免許税を納める印紙等とも区別する。
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家族内の負担と、国へ払う義務を分ける
登録免許税法3条は、登記等を受ける人に納税義務を定める。二人以上なら、各人が全額について義務を負う連帯納付となる。
家族で「税金は弟が持つ」と決めることと、国に対する納付義務は別だ。
奈緒と大地は、登記を受ける人、専門家へ頼む人、実費を立て替える人、最後に負担する人を分けて書いた。
遺産の預金から払うなら、使い道と家族の合意、精算の方法も確かめる。一人が自由に使い、後から自動的に全員負担としない。
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費用を調べる間も、登記の期限を確認する
原則として、自分のために相続が始まったことと、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、申請する義務がある。分割成立日からだけ数えるわけではない。
2024年4月1日より前の相続で、すでに取得を知っていた場合は、原則として2027年3月31日までに対応する。
分割がまとまらないなら、相続人申告登記で基本の義務を簡易に果たす方法も考える。ただし、所有権の登記や売却準備まで終わるものではない。
法定相続分の登記や申告登記の後で分割した場合は、取得者の追加の申請義務も確認する。
正当な理由なく義務を怠ると、10万円以下の過料の対象となる。費用と一緒に、いつまでに、何の義務を果たすかを考えよう。
奈緒たちは、総額の表に、資料の取得日と申請予定を加えた。価格だけでなく、必要なときに名義を整えることも次の手続につながるからだ。
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登録免許税のほかに、遺産全体について相続税の申告が必要かも別に確認する。相続税の申告が不要な条件と、税額ゼロでも申告する場合を混同せず調べよう。
公的資料・根拠
ほかにも確認する手続がある場合は、不動産の登記・分割・処分の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
相続登記の費用は誰が払うのですか
登記を受ける者には登録免許税の納付義務があり、二人以上なら連帯納付となる。これと家族内の最終負担は別に考え、専門家への依頼者、実費の立替え、分担・精算を合意しておく。
相続登記を自分でやった場合、登録免許税は安くなりますか
自己申請だから税率が下がるわけではない。相続による所有権移転は原則0.4%で、免税措置等を別に確認する。依頼しない業務の報酬は省けるが、税金と証明書等の実費は残る。
相続登記をしないとどうなりますか
相続開始と不動産の所有権取得を知った日から原則3年以内の申請義務がある。正当な理由なく怠れば10万円以下の過料の対象となる。分割未了や過去の相続も、経過措置(新しい制度に切り替わるときの特別な扱い)と必要な対応を確認する。
複数の不動産がある場合、費用はどう変わりますか
不動産ごとの価額、取得持分、免税対象を確認し、登記の申請単位で税額を計算する。別の管轄や相続が重なる場合等は、必要書類・申請・報酬が変わるため、全物件の一覧で見積りを取る。
相続登記に期限はありますか
基本の申請義務は原則3年。義務化前に相続し既に取得を知っていた不動産は、原則2027年3月31日までの対応が必要になる。法定相続分の登記や相続人申告登記の後に分割した場合の追加義務も確認する。
本記事は一般的な説明だ。物件、取得の経緯、家族関係、申請時期の資料から、個別の税額と手続を確認する。



