相続人における外国人とは、日本の相続において、外国籍を持つ者が相続人または被相続人となるケースを指し、日本の民法に基づく相続権を持つとされています。
結論から言うと、外国人が相続人に含まれる場合でも、日本の民法上は原則として国籍による相続権の差はなく、遺産分割協議には全員の参加が必要とされています。ただし、手続き上の難易度は格段に上がる可能性があります。
「うちの相続、ちょっと複雑で……」
そう言いかけて、言葉が止まる。その「ちょっと複雑」の正体が、外国籍の相続人だったりする。
兄が海外移住して現地国籍を取得した。亡くなった父の再婚相手が外国人だった。あるいは、自分自身が日本に住む外国籍の人間で、日本に財産を持つ親族が亡くなった。こういったケースが、いまや珍しくも何ともない時代になってきた。
問題は、「外国人が絡むと、どこが変わって、どこが変わらないのか」が、驚くほど広く知られていない点だ。
外国籍の兄が相続人にいるって、そもそも普通の手続きで大丈夫なのか……?
で、結論から言うと──国籍は関係ない。ただし、手続きの山は変わる
で、結論から言うと、日本の民法においては、相続人の国籍は問わない。これは民法の大原則だ。外国人であろうと、無国籍者であろうと、法定相続人としての地位を持つ者は、日本の相続において権利を行使できるとされている。
法的根拠はシンプルで、民法第882条が定める「相続は、死亡によって開始する」という一文から始まる相続の体系は、国籍で線引きをしていない。相続権は、続柄と血縁関係によって決まる。外国籍かどうかは、その判断に影響しない。
ただし。
「権利があること」と「スムーズに手続きが進むこと」は、まったくの別次元の話だ。
外国人が相続人に含まれた瞬間、書類の壁、言語の壁、そして制度の壁が、重なりあって立ちはだかる。それがこの問題の本質である。
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外国人相続人が絡むと、具体的に何が起きるか
ここからが本番だ。「権利は同じ」という安心感を胸に抱きつつ、現実に何が待ち受けているかを把握しておきたい。知っておくだけで、動きが格段に変わる。
① 遺産分割協議には「全員」が参加しなければならない
民法907条が定めるとおり、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要だ。一人でも欠けると、その協議は無効になる。これは国内在住者でも海外在住の外国人でも、例外なく適用される鉄則だ。
外国に住む相続人に署名してもらう必要がある。そのとき問題になるのが、「印鑑証明書の代わりに何を使うか」という話だ。日本に住所のない外国人には、日本の印鑑証明書が存在しない。この場合、在外公館(大使館・領事館)で発行してもらえる「サイン証明(署名証明)」が、印鑑証明書の代わりとして機能するとされている。
② 戸籍に相当する書類が国によってまったく異なる
日本の相続手続きでは、相続人を確定するために戸籍謄本をひたすら集めていく作業が発生する。ところが外国人の場合、「戸籍」という概念がない国が多数存在する。そこで代わりに使われるのが、出生証明書、国籍証明書、婚姻証明書などで、これらを日本語に翻訳した上で提出するケースが多い。翻訳は公的機関や認定翻訳者が行ったものである必要があり、ここだけで相当な時間と費用がかかる可能性がある。
③ どの国の法律で相続を処理するか、という問題
これが最も見落とされがちな論点だ。被相続人(亡くなった方)が外国人の場合、どの国の法律を適用するかは、「法の適用に関する通則法(以下、通則法)」第36条が基準となる。同条によれば、相続は「被相続人の本国法による」とされている。
つまり、日本に財産を持つ外国人が亡くなった場合、その外国の法律が相続のルールとして適用される可能性がある。法定相続分の割合も、相続できる人の範囲も、国によって大きく異なることがある。これを「準拠法の問題」と呼ぶ。

一方で、被相続人が日本人であり、相続人の一人が外国籍という場合は、日本の民法が適用されるのが原則だ。この区別を最初に押さえておくと、全体像がクリアになる。
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外国人相続人がいる場合の実践ステップ
「知っている」と「動ける」の間には、具体的なアクションが必要だ。以下に、実際に手を動かせる流れを整理する。

- STEP 1:準拠法の確認
被相続人の国籍を確認し、日本の民法が適用されるのか、外国法が適用されるのかを先に確定させる。通則法第36条が判断の起点。 - STEP 2:相続人の確定
日本側の戸籍収集を進めつつ、外国籍の相続人については出生証明書・国籍証明書・婚姻証明書などを本国から取り寄せる手配を開始する。 - STEP 3:サイン証明(署名証明)の取得
外国在住の相続人には、最寄りの日本大使館・総領事館でサイン証明を取得してもらう。この書類が印鑑証明書の代わりになる。事前に領事館のウェブサイトで必要書類を確認しておくと動きやすい。 - STEP 4:遺産分割協議書の作成と翻訳
協議書を外国語に翻訳し、全相続人が署名できる形にする。翻訳の精度が問われるため、公的機関や認定翻訳者を活用するのが無難だ。 - STEP 5:相続税の申告期限を意識する
相続税の申告・納付期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」(相続税法27条)。外国人相続人がいても、この期限は変わらない。書類収集に時間がかかることを見越して、早めに動き始めることが重要だ。なお、遺産分割協議が間に合わない場合は、法定相続分で仮申告(未分割申告)が可能とされている(相続税法55条)。
相続放棄を検討している場合は、民法915条が定める「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」という期限を忘れずに。外国在住の相続人がこの事実を「知った時」の起算点は、状況によって変わる可能性がある。
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「外国人が絡む相続」は難しい。でも、把握できる
外国人が相続人になるケース、あるいは被相続人が外国人のケース。どちらも「特殊な相続」として敬遠されがちだ。だが実際のところ、構造は把握できる。準拠法を確認し、書類の取り寄せ先を特定し、全員のサインを集める。この流れさえ理解していれば、何から手をつけるべきかは見えてくる。
国籍の違いは、相続権を奪わない。ただし、手続きの複雑さは正直に受け入れて、早めにスタートを切るのが、結果として最も賢い選択になる可能性が高い。
なんだ、権利は同じなのか。書類が大変なだけで、ちゃんと対処できるんだな。
「知っていてよかった」と思える日が、必ず来る。外国人相続人がいると分かった瞬間から、動き始めることだ。
けっこうオススメです。早めの着手。伝わりましたかね。
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よくある質問
外国人は日本の相続において相続権を持ちますか
はい、日本の民法は国籍による相続権の差を設けていないとされています。被相続人との続柄・血縁関係が法定相続人の要件であり、外国籍であっても相続権は認められる可能性があります(民法882条・887条以下)。
外国人相続人には印鑑証明書の代わりに何が必要ですか
日本国内に住所登録がない外国人の場合、在外公館(日本大使館・総領事館)で発行してもらえる「サイン証明(署名証明)」が印鑑証明書の代わりとして機能するとされています。各在外公館によって手続き方法が異なる場合があるため、事前に確認することをお勧めします。
被相続人が外国人の場合、どの国の法律が適用されますか
「法の適用に関する通則法」第36条により、相続は被相続人の本国法によるとされています。したがって、被相続人が外国人の場合、その国の法律が適用される可能性があり、相続割合や相続人の範囲が日本の民法と異なる場合があります。
外国に住む相続人がいても相続税の申告期限は変わりますか
相続税の申告・納付期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」(相続税法27条)であり、相続人が外国在住であっても期限は変わらないとされています。書類収集に時間がかかるケースが多いため、早期に動き始めることが重要です。
外国人相続人が遺産分割協議に参加しない場合、協議は成立しますか
民法907条により、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要とされており、一人でも欠けた状態で行われた協議は無効となる可能性があります。外国在住の相続人であっても参加が必要であり、書面・翻訳・サイン証明を通じて合意を取り付ける手続きが求められます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務アドバイスではありません。具体的な判断は必ず弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。





