家族信託 税金

家族信託の税金|設定・運用・受益者変更・終了と登記費用

家族信託の税金は、名義を管理する人だけでなく、誰が利益を受け取るかで考える。契約を結ぶとき、運用中、権利が変わるとき、死亡・終了時を分けて確かめよう。

以下は説明用の架空の家族だ。「家族信託」という名前だけで、税金がかかるかどうかは決まらない。

孝司は、アパートを家族信託にして息子の亮に管理を任せたい。亮は「名義が僕に変わるだけだから税金はない」と考える。けれど、妹の美帆には気になることがあった。父が亡くなった後は誰が利益を受け取るのか。毎年の家賃は誰が申告するのか。そのことも確かめてほしいと伝えた。

信託は、目的に沿って財産を管理し、お金の受渡しや引継ぎを整える仕組みだ。

本人が利益を持ったまま、子に管理を任せる設計もできる。一方、別の人へ経済的な利益を移せば、その税までなくなるわけではない。契約を完成させる前に、税金と登記の扱いを確かめよう。

設定時は、受託者への名義移転と、受益権等の取得を分ける

孝司が財産を託す委託者で、利益を受ける受益者でもあり、亮が管理を担う受託者になる。これは一般的な「自益信託」の例だ。

管理の名義が亮に移っても、贈与したのと同じ利益を亮へ渡すわけではない。本人が利益を持ち続ける場合と、別の人が無償で利益を受ける場合を分けよう。

相続税法9条の2第1項は、信託の効力が生じたとき、適正な対価を払わず受益者等となる人について、委託者から贈与で権利を受け取ったものとみなす。

委託者の死亡が原因で効力が生じる場合は、遺贈として扱うことが問題になる。遺贈は、遺言で財産を渡すことだ。

たとえば父の2,000万円を信託し、子が対価を払わず利益を受け取るなら、管理の名義だけを変える場合とは違う。贈与税の対象となる権利等を確かめる。

2,000万円がそのまま税額になる意味ではない。控除や使う制度、ほかに受けた贈与も含め、申告が必要かを判断しよう。

受益者等には税法上の特定委託者が含まれる場合もある。契約書の役職名だけで判定せず、実際に持っている権利、変更権限と給付、停止条件、最後に残った財産の権利を確認する。設定時の確認は信託の基本構造と合わせて読む。

注意点1:所有権移転登記と信託登記の登録免許税は別に確認する

信託の設定時には、二つの登記を区別しよう。

登録免許税法7条1項1号により、委託者から受託者へ信託のために財産を移す登記は非課税だ。一方、所有権の「信託登記」には登録免許税がかかる。

二つをまとめて、所有権移転登記に0.3%や0.4%がかかるとは説明しない。

所有権の信託登記の通常の税率は、不動産の価額の0.4%だ。土地は、2029年3月31日まで0.3%に軽減される。

税を計算する基準の価額、登記の内容と、申請時の特例を確かめよう。売れそうな価格、相続税の評価額、固定資産評価額を混同しない。

説明用に、課税標準を土地2,000万円、建物500万円とし、土地の軽減が適用される所有権の信託登記だけを計算すると、土地6万円、建物2万円で計8万円だ。司法書士報酬、公正証書、他の登記や書類費は含めていない。

亮は、贈与税がかからない設計でも登記まで無料とは限らない、と分かった。

終了や受託者交代の際の登記も、設定時と同じ税率とは決めない。何を原因に、誰が財産を受け取るかと、登録免許税法の条件を確かめよう。

注意点2:運用中の家賃・売却は、収入・所得・現金を分ける

一般の「受益者等課税信託」では、所得税法13条により、信託の財産・借金や、そこから生じる収入・費用を、利益を受ける人等のものとして扱う。

集団投資信託や法人課税信託等の例外は別だ。通帳を管理する人が、そのまま税を申告する人とは限らない。

家賃、所得、残る現金は違う

年間家賃600万円、実際に払った必要経費200万円、適法に計上できる減価償却費150万円とする。ほかの調整はない説明例だ。

税の計算に使う不動産所得
600万円 − 200万円
− 減価償却費 150万円
= 250万円
この入出金だけで残る現金
600万円 − 200万円
= 400万円

減価償却費150万円は、その年の出金とは違う。建物等の取得費を、税の計算で年ごとに経費へ配分するものだ。

400万円を全部、父に渡せるとは限らない。税金、借入元本の返済、将来の修繕への備え等は、この計算の外にある。元本返済をすべて必要経費にできるわけでもない。美帆は、家賃・所得・父へ渡せる現金を、別々の欄で見たいと亮に伝えた。

信託した不動産を売れば、譲渡所得等の税も確かめる。売却代金の全額が所得になるわけではない。

購入時の取得費、売却の費用、持っていた期間や特例の条件等を調べよう。受託者が売買契約をしたことと、誰の所得になるかは、分けて考える。

個人の受益者について、信託から生じた不動産所得の赤字は、生じなかったものとみなす特例がある。

自分が直接持つほかの不動産の黒字や、給与から、自動的に差し引けるとは見込まないようにしよう。国税庁1391を確認し、信託する前に損益への影響も試算する。

受託者が用意する帳簿・報告・税務書類と、受益者等の申告は役割が違う。

どの調書等を、誰が、いつまでに提出するかを税理士へ確かめよう。口座を作るだけで、毎年の税務が終わるわけではない。

注意点3:受益者の変更と、終了したときに誰が受け取るかを追う

途中から新しい受益者等が加わる場合や、利益を受ける割合が変わる場合も、税を確かめる。相続税法9条の2第2・3項等が関係する。

送金がなくても、無償で利益を得れば課税の検討が必要だ。契約上の名前を変えるだけ、と考えないようにしよう。

前の受益者等の死亡を原因に、新しい受益者等が権利を得る場合は、遺贈とみなす扱いが問題になる。

相続税の対象でも、必ず納税額が生じるわけではない。ほかの相続財産、法律上の相続人、控除や特例も合わせ、申告が必要かどうかと、納める額を考える。

信託が終わるときは、最後に残る財産を誰が受け取るかを、9条の2第4項に照らして確かめる。

適正な対価を払わず受け取る財産か、終了の直前にどんな権利を持っていたか、死亡が原因の終了か等により、贈与・遺贈の扱いを考える。委託者の相続人以外に渡す場合だけ、税がかかる制度ではない。

亮が受託者から別の人へ交代することと、受益者が変わることも別だ。管理者の名義が変わるだけなのか、誰かの経済的な利益が増えるのかを、契約と財産の動きで確認する。

受益者連続型信託は、引き継ぐ回数と評価の特例も確認する

父の後は母、その後は子という設計でも、各段階の権利と課税を検討する。信託法91条の期間制限があり、永遠に子孫の財産の行先を固定できるわけではない。

相続税法9条の3は、受益者連続型信託の評価に特別なルールを定める。一定の場合、利益を受ける期間等の制約がないものとして、権利を評価する。

母が家賃だけを受け取る設計でも、短い期間分の安い評価でよいとは見積もらないようにしよう。

孝司が妻の生活を支え、その後は子に渡したいと望む場合も、一つずつ試算する。妻の生活費、権利の評価、妻の死亡時の二次相続、納税資金は別の問題だ。

権利を受け取っても現金は受け取らない設計なら、税を何で払うかも考えよう。

信託と節税を同じ目的にしない

自益信託で財産管理の担当を変えても、それだけで本人が持つ経済的な利益が減るわけではない。相続税の課税財産を減らすための贈与とは分ける。信託口座から送金すれば、本人の意思や権限を確認せず自由に贈与できるというものでもない。

生命保険や贈与を組み合わせる場合も、契約者、保険料負担者、受取人、お金の出どころ、権限と税を具体的に確認する。信託の終了時に保険金受取人を設定すれば自動的に節税できる、といった一般化はしない。

制度の利点と負担、費用の内訳を、税額と同じように確認する。税の試算で有利でも、必要な管理を続けられなければ目的を達成できない。

相談には、設定から終了までの時系列と金額を持っていく

  1. 委託者、受託者、現在の受益者等と権利の内容を書き入れる。
  2. 対象財産、負債、取得費・評価の資料、家賃と経費を用意する。
  3. 変更、死亡、受託者交代、終了時の条項を順に並べる。
  4. 各時点の申告者、税目、期限、支払いに使うお金を確認する。
  5. 登記・金融機関の実行条件と、毎年の帳簿・報告を整える。

契約の内容は信託契約書の確認点とも照らし合わせる。孝司と亮、美帆は、契約を結ぶときだけでなく、管理を続ける間、変更するとき、終えるときの欄も作った。それぞれについて、法律の手続き、登記、税金を一緒に確かめることにした。

確認に使える公的資料

ほかにも確認する手続がある場合は、家族信託・成年後見の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

設定した瞬間に贈与税が発生するか

一般の自益信託で本人が利益を持ち続ける場合と、別人が無償で受益権等を取得する場合を分ける。信託という名前だけで課税なしとは判断しない。

受益者が変わるたび必ず相続税を納めるか

権利の取得原因と対価、死亡との関係を確認する。相続税の対象となることと、控除等を踏まえて実際に納税が生じることは別だ。

家賃は受託者が申告するか

一般の受益者等課税信託では、受益者等のうち誰の所得になるかを確認する。口座を管理する人と申告する人を同じと決めず、帳簿や調書等の役割も分ける。

信託を使えば相続税が減るか

管理を任せるだけで課税財産が減るわけではない。権利と利益の移転、受益者連続型の評価、本人の生活資金と納付資金を別に検討する。

終了時は相続人以外へ渡す場合だけ税金がかかるか

そうではない。終了直前の受益者等、対価、取得する最後に残った財産、死亡に基因するか等を確認して、贈与・遺贈等の扱いを検討する。

本記事は2026年10月18日時点の一般的な情報である。具体的な課税は、信託条項、取得原因と日付、財産・権利等を確認して判断する。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

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