孫だから相続放棄が必要、または不要とは決まらない。親に代わる代襲相続人か、養子としての子か、遺言で財産を受け取る人か等、立場を先に確かめよう。
以下の家族と金額は、説明用の架空の例だ。
祖父の信一が亡くなった後、27歳の悠里へ、祖父の借金に関する書面が届いた。悠里の父の光は、祖父より2年前に亡くなっている。悠里は「父はもういないし、孫の自分は相続の当事者ではない」と思っていたが、弟の拓人と叔母の晴美から、相続人の確認を求められた。
相続は権利だけでなく借金などの義務も引き継ぐため、相続人に拒否する道が設けられている。一方、家族へ「いらない」と伝えただけでは、債権者(お金の支払いなどを求める権利がある人)との関係まで消せない。悠里は、先に亡くなった父の相続と、今の祖父の相続を分けて確認することにした。
親が祖父母より先に亡くなっていれば、代襲を確認する
子が相続開始前に亡くなる等した場合に、その子に代わって孫等が相続することを、代襲相続という。民法887条は、相続欠格や廃除で相続権を失った場合等も定めている。
欠格は法律上の一定の理由で相続資格を失うこと、廃除は虐待等を理由に家裁の手続で相続資格を失わせることだ。父の光が祖父の信一より先に亡くなったので、悠里と拓人は光に代わって相続する立場になり得る。
代襲する孫も、相続人である以上、預金や土地だけでなく、借金や保証等の義務に関わる。祖父の請求書に驚いたとしても、孫だから一律に無関係とはいえない。戸籍、死亡の順番、相続人、債務の内容を調べる。
祖父の信一に配偶者はおらず、子は晴美と、先に亡くなった光だけ。光の子は悠里と拓人だけとする。預金800万円のみで、ほかの相続人はおらず、遺言・特別受益・寄与分等による変更もなく、借金や税等は計算に含めない。
晴美の側 1/2 = 400万円
光の側 1/2 = 400万円
光の側を、その子二人で分ける。
悠里 200万円 / 拓人 200万円
晴美 400万円 / 拓人 400万円
光の側の取り分を、拓人が引き継ぐ。
悠里の放棄だけでは、悠里の子への再代襲は起きない。
実際には祖父の借金に関する書面が届いている。これは割合を比べる例で、引き受けると有利かを決める計算ではない。財産と借金の両方を調べよう。
悠里は「孫は何人でも叔母と均等」と考えかけたが、光の相続分をその子たちで分けるという違いを知った。実際には借金の書面があるので、この預金だけの例で相続の有利・不利を決めず、資産と債務を調べる。
親の相続放棄は、孫の代襲の原因にならない
比較として、父が祖父の亡くなった時に生存していて、その後に祖父の相続を有効に放棄した場合を考える。相続放棄は代襲原因に含まれないため、その放棄だけで孫が代わりに相続することはない。
祖父がまだ生きている間に、将来の相続を家庭裁判所で放棄しておくことはできない。
「父が生前に放棄した」と聞いたら、誰が先に亡くなり、誰の相続について何をしたかを確かめよう。遺留分という最低限の取り分の生前放棄や、家族の間で相続しないと約束したこととも違う。
悠里の父は祖父より前に死亡していたので、この比較例とは違う。また、悠里が父の相続を放棄していたとしても、その事実だけで祖父からの代襲相続まで自動的に放棄したことにはならない。二つの相続を別々に確かめる必要がある。
反対に、祖父が先に亡くなり、父が承認・放棄を決めないまま後から亡くなった場合は、再転相続等の問題になる。
再転相続は、選ぶ立場を次の相続人が引き継ぐ場合の話だ。亡くなった順番を見ず、すべてを代襲相続と呼ばないようにしよう。
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祖父母の養子、遺言の受遺者なら、立場を分ける
孫が祖父母と養子縁組をしていれば、法律上は子としての相続も問題になる。実の親が生存しているから必ず相続人ではない、という説明を当てはめない。戸籍と縁組の種類・時期等を確認する。
遺言で孫へ財産を渡す場合、その孫は受遺者という立場になる。それだけで、法律上の相続人に自動で変わるわけではない。
遺言で何をどう受け取るかによっても、断る手続は変わる。
「財産の全部」「全財産の2分の1」等、全体や割合で受け取るのが包括遺贈だ。包括受遺者は、相続人と同じ権利義務を持つとされ、借金も問題になる。
放棄するには家裁へ意思を申し出る申述が必要だ。原則として、自分のために包括遺贈があったと知った時から3か月の期限も確認する。
特定の土地や一定の預金等を対象とする特定遺贈は、原則として、遺言を実行する義務を負う遺贈義務者へ、断る意思を伝えて放棄する。
民法986条・987条の扱いを確かめよう。利害関係人から、決められた相当の期間内に承認・放棄を答えるよう求める催告を受けた場合等も注意が必要だ。包括遺贈まで、すべて家裁の手続は不要とまとめない。
相続人としての立場と受遺者としての立場が重なることもある。「相続放棄したから遺贈もすべてなくなる」「遺贈だけ断れば相続債務もなくなる」とまとめず、遺言の文言と自分の立場を示して相談する。
3か月は、死亡日と知った内容を並べて確かめる
相続するかを考える原則3か月を、熟慮期間という。数え始めは、自分のために相続が始まったと知った時だ。
死亡と、自分が相続人になったことを、それぞれいつ知ったかを確かめる。借金の請求書が来るたびに、新しく3か月が始まる制度ではない。
悠里は、祖父の死亡を知った日、父の死亡と親族関係を知っていた事情、請求書を受け取った日を別々に記録した。借金を知らなかったことだけで期限が延びるとは決めず、通知と戸籍を持って確認する。
3か月以内に調べても判断材料がそろわなければ、期間が過ぎる前に、家裁へ熟慮期間の伸長を申し立てる方法がある。伸長は、期間を延ばすことだ。
申し立てれば必ず希望どおり延びるわけではない。理由と、調査の状況を示す必要がある。
未成年者は、法定代理人がその子のために相続が始まったと知った時から数える扱いもある(民法917条)。
18歳になるまで待てるとは考えず、親権者等による代理と、双方の利益がぶつかる問題がないかを、早めに確かめよう。
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財産と借金を調べる間、処分や支払を急がない
預金、不動産、証券、借入れ、保証、未払金等を一覧にする。銀行、登記、契約、郵便、取引資料等を照らし合わせる。信用情報機関へ照会できる場合もあるが、登録対象や保存期間に限りがあり、それだけですべての債務・保証が判明するわけではない。
遺産を処分すると、そのまま相続を引き受けたとみなされる法定単純承認が問題になることがある。祖父の預金を自分の生活費に使う、資産を売る等の前に確かめよう。
葬儀費用の支払いや財産を守る保存行為等も、何をどの財産から払ったかで考える。少額なら何でも問題ない、とまとめないようにしたい。
自分が個別に保証人になっている債務等は、相続放棄で自動的になくなるものではない。受け取った請求が祖父の債務の相続に関するものか、自分自身の契約に関するものかも区別する。
悠里は「払わないといけないか」を一枚の請求だけで決めず、祖父の契約、残高、父との相続関係を確認することにした。分からない資料が残っていても、期限が近いなら、現時点の一覧と不足を持って相談する。
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相続人として放棄するなら、家裁へ自分の申述をする
相続人が放棄する申述先は、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所だ。申述書、戸籍等の資料、一人当たり800円の収入印紙、郵便料等を確認する。
代襲する孫は、祖父母から父母、自分へつながる戸籍と、死亡の記載等を示す必要がある。
未成年者は、法定代理人が代わって申述する。ただし、代理人も共同相続人で子だけが放棄する場合や、複数の未成年者のうち一部だけを代理する場合等は、特別代理人の選任が問題になる。
代理人が先に放棄している場合等の扱いもある。家族構成と手続の順番を、家裁へ確かめよう。
申述を提出した後の照会や呼出しに対応し、受理の記録を確認する。家族に「いらない」と伝えただけ、分割協議書の取得をゼロにしただけで、家裁での相続放棄を済ませたことにはならない。
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孫一人の放棄で、家族全員の手続は終わらない
悠里が有効に放棄したことだけで、悠里の子へ再代襲が起きるわけではない。一方、拓人はすでに光を代襲する相続人になり得るので、悠里の放棄だけで拓人まで相続しなくなるわけでもない。
拓人が放棄しても、晴美が相続人として残るなら、第一順位の人がいなくなったわけではない。
子やほかの代襲者を含む第一順位の全員が放棄等でいなくなった場合は、父母・祖父母等、次に兄弟姉妹側を確かめる。配偶者の立場も別に見る。「孫が放棄した分は叔母へ戻る」と一律には決められない。
悠里は、拓人と晴美へ、分かっている財産と借金、受理された場合の記録を共有する準備をした。二人の同意がなくても自分の放棄は申し立てられるが、ほかの人も自分の期限と負担を確かめられるようにしておきたい。
放棄する時に実際に占有している遺産があれば、引渡しまでの保存義務等も別に確認する。
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ほかにも確認する手続がある場合は、相続放棄・債務の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
孫は必ず相続人になるか
必ずではない。代襲、養子縁組、遺言による受遺者等の立場を分ける。受遺者であることと法定相続人であることも同じではない。
親が放棄したら孫が代襲するか
放棄は代襲原因ではない。親が祖父母より先に死亡した場合等や、孫に別の相続人の立場がある場合は個別に確認する。
孫の放棄は請求書が届いてから3か月か
常にそうなるわけではない。原則は自分のための相続開始を知った時から3か月で、死亡や身分関係をいつ知ったかも確認する。
家族へ断れば手続が終わるか
相続人の放棄には家裁への申述が必要だ。特定遺贈と包括遺贈の放棄は方法が違うため、立場と遺言の内容を確かめる。
3か月では調査が終わらない場合はどうするか
期間内の熟慮期間伸長の申立てを検討する。調査内容と不足資料、知った経緯を示し、期限を過ぎてから自動的に延ばせると考えない。
公的資料・根拠
この記事は一般的な情報を説明するものだ。親族関係、死亡の順番、遺言、知った経緯、財産の処分等を資料で確かめ、個別に判断しよう。



