相続放棄した後の手続きとは、家庭裁判所に申述して相続放棄が受理された後に発生する、各機関への通知・確認・後続相続人との調整などの一連の実務作業とされています。
結論から言うと、相続放棄は「申述が受理された瞬間」で終わりではなく、その後に放棄申述受理通知書の取得・債権者への連絡・次順位相続人への通知など、複数の実務ステップが残っている可能性があります。
相続放棄は、終わった瞬間から「次のステージ」が始まる。
家庭裁判所の窓口を出て、ほっと息をついたその瞬間。「これで全部終わった」と思ったとしたら、少しだけ待ってほしい。放棄の手続きそのものは確かに完了している。しかしその先に、静かに、しかし確実に、やるべきことが積み上がっているのだ。
申述が受理されたのに、まだ何かやることがあるの……?
で、結論から言うと、相続放棄が受理された後には「受理証明書の取得」「債権者への通知」「次順位相続人の把握」という三本柱が待ち受けている。これを知らずに放置しておくと、放棄したはずの借金問題が、まるでゾンビのごとく再び立ち上がってくる可能性がある。
相続放棄が受理された後に起きること
まず前提を整理しよう。相続放棄とは、家庭裁判所への申述によって法的効力が生じるものである(民法938条)。相続人間で「俺は要らない」と宣言するだけでは、1ミリも法的効力は発生しない。これは意外と見落とされている事実だ。
そして家庭裁判所が申述を受理すると、まず手元に届くのが「申述受理通知書」。これは裁判所から自動的に送られてくる。しかしこれとは別に、自分から請求しなければ手に入らないものがある。それが「相続放棄申述受理証明書」だ。
この二つ、名前が似すぎていて混乱する。整理するとこうだ。
- 申述受理通知書:裁判所から自動的に郵送されてくる。放棄が受理されたことを知らせるもの。
- 相続放棄申述受理証明書:自分で申請して初めて発行される。金融機関・債権者・法務局など、第三者に「放棄した事実」を証明するために使う。
通知書だけで安心していると、銀行や債権者に「証明書を出せ」と言われた際に手が止まる。放棄した直後に、証明書の申請もセットで行っておくのが実務上の定石といえるだろう。
https://souzoku-pro.com/souzoku-houki-tetsuzuki/
「次順位の相続人」への通知という、地味だが重要な仕事
相続放棄をすると、その人は「最初から相続人でなかった」ものとして扱われる。ここが、代襲相続との決定的な違いだ(民法939条)。放棄した人の子どもには、相続権は移らない。

では、誰に権利が移るのか。次順位の相続人だ。
たとえば子どもが全員放棄したとする。するとその瞬間に、第二順位の相続人である「故人の親(直系尊属)」に相続権がバトンタッチされる。親がすでに他界していれば、第三順位の「兄弟姉妹」に移る。
ここで問題が起きる。次順位の相続人は、自分に相続権が回ってきたことを知らないケースが非常に多いのだ。そして彼らにも「相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」という放棄の期限が走っている(民法915条)。
つまり、放棄した側が「知らせなかった」せいで、遠い親族が気付かぬうちに多額の負債を抱え込む可能性がある。法的義務とまでは言えないケースも多いが、人道的に、そして実務的に、次順位の相続人に速やかに連絡を入れておくことは強く推奨される行動だ。
相続放棄を兄弟の一人だけが選んだとき、残りに起きること
相続放棄を兄弟の一人だけが行うとは、複数いる相続人のうち特定の一人のみが家庭裁判…
債権者への対応という、避けては通れない関門
相続放棄が受理されれば、故人の借金を返済する義務は消える。しかし、債権者はそのことを自動的に知るわけではない。督促状や請求書は、容赦なく届き続ける。

この段階でやるべきことを、箇条書きで整理するとこうなる。
- 相続放棄申述受理証明書を取得する:家庭裁判所に申請。手数料は1通150円程度とされている。
- 金融機関・消費者金融などに証明書を提出する:「相続放棄が完了した事実」を書面で通知する。
- 故人の財産に手を触れない:放棄後に故人の財産を使用・処分すると「単純承認」とみなされる可能性がある(民法921条)。これが一番の落とし穴だ。
- 管理義務に注意する:相続放棄後も、相続人が財産管理を開始していた場合は一定の管理継続義務が残るとされている(民法940条)。
特に「財産に手を触れない」という点は、知らずにやってしまいがちな行動だ。故人の口座から葬儀費用を引き出す、不動産の賃料を受け取るといった行為が、法的に単純承認と解釈されるリスクを孕んでいる場合がある。放棄前後の行動は、慎重に。
相続放棄と借金。「知った日から3ヶ月」で変わる選択肢
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産および借金を含む一切の権利義務を引き…
相続放棄後の実践ステップ:自分で動くための手順
では具体的に、放棄受理後に何をどの順番でやればいいのか。シンプルにまとめるとこうだ。
- ステップ1:家庭裁判所で「相続放棄申述受理証明書」を申請・取得する(受理後すぐに行動)。
- ステップ2:次順位の相続人を確認し、相続権が移転した旨を連絡する。
- ステップ3:把握している債権者(金融機関・消費者金融など)に証明書を送付し、放棄の事実を書面で伝える。
- ステップ4:故人の財産(不動産・預貯金・動産)には一切手を触れないよう徹底する。
- ステップ5:不動産が残存する場合、相続財産清算人の選任が必要になるケースがあるか確認する(民法952条)。
この5ステップ、難しいことは一つもない。ただし「知っているかどうか」で、動けるかどうかが大きく変わる。そこが全てだ。
放棄という選択が「終点」ではなく「通過点」であることを、頭の片隅に置いておくだけで、その後の対応がグッとスムーズになる。
やることが整理されたら、動き出せる気がしてきた。
相続放棄の申述が受理された後、証明書を取って、次の人に連絡して、債権者に伝える。それだけだ。手順を踏めば、一つひとつは決して難しくない。「知らなかった」が最大のリスクで、「知っていた」が最強の武器になる。これが相続の現実だ。
けっこうオススメです、早めの確認。伝わりましたかね。
関連記事として、こちらも参考になります。
相続放棄の期限は3ヶ月。「知った日」から始まるカウントダウンの正体
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産・負債を含むすべての相続権を放棄する…
よくある質問
相続放棄が受理された後、証明書は自動的に発行されますか
申述受理通知書は裁判所から自動的に郵送されますが、相続放棄申述受理証明書は別途、家庭裁判所への申請が必要とされています。金融機関や債権者への提示には証明書が求められる場合がほとんどであるため、受理後に速やかに申請することをお勧めします。
相続放棄後に故人の財産を一部使ってしまった場合はどうなりますか
相続放棄後に故人の財産を処分・消費した場合、民法921条に基づき「単純承認」とみなされる可能性があるとされています。ただし、どの行為が単純承認に該当するかは個別の事情によって判断が異なる場合があります。放棄後は原則として故人の財産に触れないことが安全と考えられます。
相続放棄をすると次順位の相続人に権利が移るとのことですが、必ず連絡しなければなりませんか
法律上、次順位の相続人への通知義務が明示されているわけではありませんが、次順位の相続人にも「相続の開始を知った時から3ヶ月以内」の放棄期限(民法915条)が存在するとされています。連絡が遅れることで次順位の相続人が期限を見逃す可能性があるため、実務上は速やかな通知が推奨されます。
相続放棄後、不動産が残っている場合はどうなりますか
相続人全員が放棄した場合などは、相続財産が法人として管理され、利害関係人や検察官の請求により家庭裁判所が相続財産清算人を選任する場合があるとされています(民法952条)。放棄後に不動産が残存する状況では、管理義務の範囲についても確認しておくことが望ましいとされています。
相続放棄の期限に間に合わなかった場合、何か方法はありますか
相続放棄の期限(民法915条の3ヶ月)を過ぎた場合でも、一定の事情がある場合には期間の伸長申請や、例外的な救済が認められる可能性があるとされています。相続財産の存在を知らなかった等の事情がある場合、「知った時」からの起算が認められるケースもあるため、個別の状況を踏まえた確認が重要です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務アドバイスではありません。具体的な判断は必ず弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。





