- 相続放棄は、その相続について初めから相続人でなかったとみなされます。
- 限定承認は、相続財産の限度で債務・遺贈を弁済する留保付きの承認です。
- 共同相続では限定承認は全員共同、相続放棄は各相続人が単独で申述できます。
財産と借金の全体像が見えないときは、単純承認・限定承認・相続放棄の効果と手続を分けて比較する必要があります。「プラスの財産だけを受け取る」といった説明では、限定承認の清算手続や税務を正確に表せません。
限定承認と相続放棄の違い
| 項目 | 限定承認 | 相続放棄 |
|---|---|---|
| 効果 | 相続財産の限度で債務・遺贈を弁済 | その相続について初めから相続人でなかったとみなす |
| 共同相続 | 共同相続人全員が共同 | 各相続人が単独で申述可能 |
| 主な手続 | 財産目録を作成し家庭裁判所へ申述、その後に清算 | 家庭裁判所へ放棄を申述 |
| 期限 | 原則として自己のために相続開始があったことを知った時から3か月 | |
民法915条が熟慮期間、同922条から937条が限定承認、同938条・939条が相続放棄を定めています。
限定承認は「財産の範囲内で清算する制度」
民法922条の限定承認では、相続で得た財産の限度で被相続人の債務と遺贈を弁済します。共同相続人がいる場合は、民法923条により全員が共同して行います。民法924条は、熟慮期間内の財産目録作成・家庭裁判所への提出と申述を求めています。
申述後にも公告、債権者への弁済、換価などの清算手続があります。また、限定承認に係る相続では、資産によって所得税法59条のみなし譲渡が問題になります。民法上の責任範囲だけで選ばず、税額と実務負担も見積もります。
相続放棄は家庭裁判所への申述が必要
相続人間で「財産を受け取らない」と合意することと、民法938条の相続放棄は別です。相続放棄は家庭裁判所への申述によって行い、受理されると同939条によりその相続について初めから相続人でなかったとみなされます。
3か月の起算点を一律に死亡日にしない
熟慮期間は、各相続人が「自己のために相続の開始があったことを知った時」から個別に計算します。最高裁昭和59年4月27日判決は、相続財産が全くないと信じ、そう信じる相当な理由があり、調査を期待することが著しく困難だった事案について、財産を認識した時等からの起算を認めました。ただし、借金を後で知れば常に期限が延びるという一般ルールではありません。
調査が間に合わない場合は、裁判所の熟慮期間伸長手続を確認します。借金が疑われる場合は、相続放棄と後から判明した債務、期限の整理は相続放棄の3か月の起算点も参照してください。
よくある質問
限定承認は一人だけでできますか?
共同相続人が複数いる場合、民法923条により共同相続人全員が共同して行う必要があります。相続放棄により初めから相続人でなかったとみなされる人を除いた上で、共同相続人の範囲を確定します。
限定承認なら借金を一切払わなくてよいですか?
相続財産の範囲で被相続人の債務・遺贈を清算する制度です。財産目録、公告、弁済などの手続があり、「何もしなくてよい」制度ではありません。
3か月で財産調査が終わらない場合は?
熟慮期間内に家庭裁判所へ期間伸長を申し立てる方法があります。申立てをすれば当然に延びるわけではないため、期限と調査状況を早めに確認します。
限定承認に税務上の注意はありますか?
資産の種類によっては所得税法59条のみなし譲渡が問題になります。民事上の責任限定と税務上の計算は別に確認してください。
本記事は一般的な制度の説明です。個別の期限、相続人、財産・債務、税額は資料と事実関係で変わるため、具体的な判断は弁護士・税理士等へ確認してください。



