相続時精算課税とは|2024年以後の110万円・届出・計算を整理

相続時精算課税とは|2024年以後の110万円・届出・計算を整理

相続時精算課税は、生前贈与の税と、贈った人が亡くなった時の相続税をつなぐ制度だ。

2024年以後の贈与には年110万円の基礎控除がある。一方、累計2,500万円の特別控除を使って贈与税が0円でも、その部分まで相続税の計算から消えるわけではない。

父の穣は、娘の遥へ1,000万円を渡したい。母の恵子は「贈与税が0円なら、その後も税はないのか」と尋ねた。遥は、翌年以後も同じ父からの贈与に選んだ方式が続くと知り、迷っている。

架空の家族で考えよう。贈与年の1月1日に父68歳、娘33歳で、ほかの条件も満たすと仮定する。

選ぶ前に、使える人、最初の届出期限、相続時に加える額を確認しよう。

一度選ぶと、同じ贈与者について暦年課税へ戻れない。贈った年の税額だけで決めないことが大切だ。

誰から誰への贈与で選べるか

一般制度では、贈る人は、その年の1月1日に60歳以上の父母・祖父母等であることが必要だ。

受け取る人は、同日に18歳以上で、贈与者の子・孫等の直系卑属に当たる推定相続人、または孫であることが必要になる。直系卑属は、子・孫等、自分から後の世代へ直線でつながる親族をいう。

年齢は、贈与日ではなく、その年の1月1日で判定する。推定相続人は、今相続が始まれば相続人になると見込まれる人のことだ。これに当たるかは贈与日に確認する。

孫は、親が健在で推定相続人でなくても、年齢等の条件を満たせば対象になる。養子縁組のない義父母からの贈与には、原則として一般制度を使えない。

住宅取得等資金の贈与には、贈る人の年齢条件の特例がある。一定の事業承継税制にも、対象者の特例がある。

一般制度と条件が違うため、使う特例と必要書類を先に確かめよう。基本の対象者は国税庁の質疑応答で確認できる。

選択するのは、贈与者と贈与を受ける人の組合せごと

父からの贈与について選択しても、母からの贈与へ自動的に適用されるわけではない。同じ父から子2人が贈与を受ける場合も、子ごとに選択するかを判断する。

一度父について選ぶと、その年以後の父からの対象贈与は相続時精算課税になる。

最初は不動産、翌年は現金でも続き、暦年課税へ戻れない。贈与のない年を挟んでも、選択は消えない。

選んだことを家族や後任の税理士へ伝えないと、後の贈与を暦年課税として計算するおそれがある。

選択届出書の控えと提出記録を、年ごとの贈与一覧と一緒に保管しよう。

年110万円と累計2,500万円の違い

控除 仕組み
年110万円
基礎控除
2024年以後の贈与に適用。贈与を受ける人ごとの年額で、複数の特定贈与者がいれば按分する。原則として相続時にも加算しない。
累計
2,500万円
特別控除
特定贈与者ごとに、過去の使用額を差し引いた残りを使う。期限内の贈与税申告が条件。相続税の加算額から差し引く控除ではない。
贈与1,000万円を、三段階で見る

遥が2026年に父から初めて精算課税で受け取り、ほかに精算課税の贈与はない例だ。届出・申告等の条件を満たすとする。

① 年110万円を引く

1,000万円 − 110万円 = 890万円

② 特別控除を使う

890万円を控除し、贈与税は0円。
累計2,500万円の枠は、残り1,610万円になる。

③ 父の相続時に加える

原則として890万円を、相続税の計算へ加える。これは税額ではない。

特別控除後にまだ残る額があれば、その額に一律20%の贈与税がかかる。

上の890万円は、今払う税額ではない。父の相続時に、原則として相続税の計算へ加える額だ。

特別控除2,500万円のうち890万円を使ったからといって、相続時の計算からも消えたとは考えない。

父母の両方について精算課税を選び、同じ年に各110万円を受ける別の例を考える。この場合、年110万円の基礎控除は、父と母へ各55万円ずつ分ける。

特別控除2,500万円の残額は、父と母で別に管理する。別の贈与者から暦年課税で受けた財産には、暦年課税の年110万円を使って別に計算する。

父の手元資金は、贈った1,000万円だけ減る。税額とは別に、その後の生活と介護に必要な現金を残せるか確かめよう。

最初の選択届出と、毎年の申告を区別する

初めて選ぶ年は、原則として贈与の翌年2月1日〜3月15日に、受け取る人の納税地を担当する税務署へ、相続時精算課税選択届出書を出す。

贈与税申告書を出す場合は、その申告書へ届出書を添える。

その年の状況 通常必要になる手続
初めて選ぶ年
精算課税の
贈与合計
110万円以下
選択届出書と添付書類。ほかに理由がなければ贈与税申告書は不要。
選択済み
精算課税の
贈与合計
110万円以下
ほかに申告理由がなければ贈与税申告書は不要。選択届出の再提出も不要。
精算課税の
贈与合計
110万円超
贈与税申告を確認する。特別控除を使うには期限内申告が必要。初回なら選択届出書も添付。

2023年以前から選んでいる人にも、2024年以後の贈与には年110万円の控除を使う。改めて選択届出書を出す必要はない。

ただし、2023年以前の贈与にさかのぼり、各年110万円を引くことはできない。

戸籍は作成時期も確認する

一般的な親子・祖父母と孫の関係では、受け取る人の氏名、生年月日、推定相続人または孫であることを証する戸籍謄抄本等が要る。

国税庁は、贈与を受けた日以後に作られた書類を案内している。個人番号を記入する際の本人確認も必要だ。

古い戸籍を手元に置いているだけで準備完了とせず、選択届出書の添付書類と照らし合わせる。事業承継の特例、贈与年中の死亡、国外居住等が関係するときは通常の手続とは分けて確認する。

恵子は、届出だけでよい場合と、税額0円でも特別控除のために申告する場合を分けた。

この制度は、生前の移転と相続時の課税をつなぐものだ。書類を出すためだけに財産を動かす必要はない。遥は、戻せない選択の前に、暦年課税を続ける案や相続で渡す案も比べる。

期限を過ぎた届出や、評価の見落としに注意する

国税庁は、原則の提出期限を過ぎて選択届出書を出しても、この制度は使えないとしている。

贈与税申告書だけを精算課税で計算し、選択届出を忘れないようにしよう。

不動産や非上場株式を110万円以下と考えて届出書だけを出した後で、評価額が110万円を超えると分かる場合がある。非上場株式は、取引所に上場していない会社の株式だ。

期限後の申告では、特別控除2,500万円を使えず、基礎控除後の額に20%の税が生じる問題がある。控除枠が残っていても、後で何でも直せるわけではない。評価を期限前に確かめよう。

贈与者が亡くなったら、相続税で精算する

相続時には、贈与時の価額を基に計算する。2024年以後の贈与は、年ごとの基礎控除後の額を、相続や遺贈で受け取った財産と合計する。遺贈は、遺言で財産を渡すことだ。

精算課税の加算は、暦年課税の3年・7年という期間を過ぎれば対象外になる仕組みではない。

計算した相続税額から、すでに納めた精算課税分の贈与税相当額を引く。引ききれない額は、相続税の申告で還付を受けられる。

財産全体を集計せず、「相続で受け取った財産が少ないから申告不要」と決めないようにしよう。

選択前には、不動産の小規模宅地等の特例との比較、贈与後の値下がり、納税資金、他の相続人との調整も確認する。2,500万円控除の計算と選択前に確認するデメリットを合わせて検討したい。

穣と遥は、贈与1,000万円、相続時に加える890万円、特別控除の残り1,610万円を分けて記録した。

恵子も、父の生活資金と家族全体の配分を確認する。届出と期限内申告の控えを残し、相続時に加える額まで引き継ごう。

ほかにも確認する手続がある場合は、生前贈与の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

孫は親が健在でも精算課税を選べるか

年齢等の条件を満たす孫なら、推定相続人であるかにかかわらず一般制度の対象となる。

110万円以下なら初回の届出も不要か

初めて選ぶ年は期限内の選択届出が必要である。贈与税申告書が不要であることとは別に判断する。

2,500万円は毎年使えるか

特定贈与者ごとの累計枠であり、過去に使った額を差し引いた残額を使う。

2023年以前の選択者も年110万円を使えるか

2024年以後の贈与には使える。再度の選択届出は不要だが、過去の贈与へ遡って控除することはできない。

贈与から7年経てば精算対象外になるか

ならない。相続時精算課税の加算には暦年課税の3年・7年の期間制限を当てはめない。

本記事は一般的な情報を示すものである。具体的な手続や税務は、亡くなった日、財産、資料などを確認して判断する必要がある。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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