- 被保険者を確認する
- 実際の保険料負担者を確認する
- 死亡保険金受取人を確認する
- 相続税・所得税・贈与税のどれかを判定する
- 相続税なら非課税枠と2割加算を確認する
死亡保険金は、民法上の遺産かどうかと、税法上何税がかかるかを分けて考えます。指定受取人が保険契約に基づいて取得する死亡保険金請求権は通常その人の固有財産ですが、被相続人が負担した保険料に対応する部分は、相続税法上のみなし相続財産になります。
相続税の基本は国税庁No.4114、3税目の区分は国税庁No.1750で確認します。
保険料負担者・被保険者・受取人を並べる
| 保険料負担者 | 被保険者 | 受取人 | 主な税目 |
|---|---|---|---|
| 死亡した人 | 死亡した人 | 配偶者・子等 | 相続税 |
| 配偶者・子等 | 死亡した人 | 同じ保険料負担者 | 所得税・住民税 |
| 配偶者等 | 死亡した人 | 保険料負担者とは別の人 | 贈与税 |
契約者名だけでなく、誰の口座から保険料を払い、誰が実質的に負担したかを確認します。負担者が複数なら、負担割合に応じて課税関係が分かれることがあります。
固有財産とみなし相続財産を混同しない
最高裁昭和40年2月2日第三小法廷判決(昭和36年(オ)第1028号・民集19巻1号1頁)は、第三者を受取人とする生命保険契約について、受取人が契約成立により停止条件付きの保険金請求権を取得する法的構造を示しました。指定受取人が受け取る保険金を、被相続人の預金と同じ遺産として当然に分割するものではありません。
一方、相続税法3条1項1号は、被相続人が負担した保険料に対応する死亡保険金を相続・遺贈により取得したものとみなします。「固有財産だから相続税はかからない」「相続税がかかるから遺産分割の対象」という説明はいずれも両制度を混同しています。
500万円×法定相続人は全体の限度額
相続人が取得した死亡保険金には、相続税法12条1項5号により、原則として「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額があります。これは各受取人に500万円ずつ自動付与される計算ではありません。
全相続人が受け取った対象保険金の合計が限度額を超える場合、各相続人の受取額の割合で非課税額を配分します。養子を法定相続人の数へ含める人数にも相続税法15条の制限があります。
相続放棄者は「人数」と「本人の適用」を分ける
非課税限度額を計算する法定相続人の数は、相続放棄がなかったものとして数えます。しかし、相続放棄した人自身は相続税法12条の非課税枠を使える「相続人」には含まれません。
したがって、放棄者を人数から外して全体限度額を減らすのも、放棄者本人の受取保険金へ非課税額を配分するのも誤りです。相続放棄しても指定受取人として保険金を受け取れるかは保険契約上の問題であり、税務上の非課税とは別です。
相続人以外の受取人
孫、子の配偶者、内縁配偶者など法定相続人でない受取人が、被相続人負担分の死亡保険金を取得すると相続税の対象になり得ますが、生命保険金の非課税枠は使えません。
また、配偶者・一親等の血族等以外の人には相続税額の2割加算が生じる場合があります。孫でも代襲相続人か、養子か、相続放棄の有無などで扱いが異なるため、受取人の続柄だけで結論を出しません。
受取人を決めるときの確認事項
- 納税資金を必要とする相続人と受取人が一致するか
- 保険金を代償金へ充てる合意が必要か
- 相続人以外で非課税枠・2割加算の影響があるか
- 遺留分・特別受益をめぐる家族間の争いが想定されるか
- 受取人が先に死亡した場合の約款上の扱い
受取人固有財産であることは、保険金を他の相続人へ分ける合意を妨げるものではありません。ただし、受取後に贈与する場合の贈与税や、代償分割との関係を事前に設計します。
相続税申告で集める資料
- 保険証券、契約内容のお知らせ、受取人指定
- 保険料の払込履歴と引落口座
- 保険会社の支払通知・死亡保険金計算書
- 配当金、割戻金、前納保険料の払戻し
- 相続放棄受理通知書、戸籍、相続関係
- 相続税申告書第9表と各人の非課税額計算
死亡保険金だけでなく、契約者貸付金、未払保険料、入院給付金、解約返戻金、年金受給権などは支払原因と権利者を別に確認します。
受取後の税務を分ける
保険料負担者本人が死亡保険金を受け取る所得税のケースでは、一時金は一時所得、年金形式は雑所得となるのが基本です。必要経費・特別控除・他の所得との計算を確認します。
負担者と受取人が異なり、相続税法3条の被相続人負担分でない場合は贈与税の対象になり得ます。名義変更や受取人変更をした時点だけでなく、保険事故発生時の契約・負担関係を確認します。
生命保険を相続対策に使う限界
生命保険には受取人固有の請求権、現金化の速さ、一定の非課税枠という利点があります。しかし健康状態・年齢・保険料・解約返戻率、途中解約、インフレ、相続人以外の税負担を比較する必要があります。
死亡時の現預金を全て保険へ移すのではなく、介護費、生活費、債務、葬儀、税金を残します。非課税枠の計算に特化した確認は生命保険金の相続税非課税枠、みなし相続財産全体はみなし相続財産とはも参照してください。
最終チェック
保険会社へ受取請求する前後で、契約者・被保険者・受取人・実質保険料負担者を一枚の表へまとめます。そのうえで民法上の帰属、税目、非課税枠、2割加算、申告期限を別列で判定します。
「死亡保険金なら一律非課税」「相続放棄すれば税金もなくなる」「孫を受取人にすれば必ず節税」という断定は避けます。
保険金以外の給付を分ける
死亡後に保険会社から支払われる金銭でも、死亡保険金、入院給付金、手術給付金、解約返戻金、契約者配当、保険料払戻金では、死亡時の権利者と課税関係が異なります。被相続人が生前に受け取る権利を有していた入院給付金等は、本来の相続財産となる場合があります。
支払明細の合計額だけを第9表へ記入せず、給付名・原因・受取人・保険料負担者ごとに仕分けます。
本記事は一般的な保険・相続税の説明です。保険料の実質負担、約款、受取人、相続放棄、続柄により結論が変わります。保険会社の資料、国税庁の最新情報、税理士等の確認を併用してください。



