相続の弁護士を選ぶときは、自分の問題に対応できるか、費用と頼む仕事の範囲、説明・連絡の方法を確かめよう。
実績の数字が多ければ、必ず有利になるわけではない。まず相談し、助言だけを受けるか、代理人として任せるかも決められる。
架空の家族で考えよう。父の遺産について、沙織は弟の陽介と話し合っている。
沙織は、父の介護費を立て替えた点を整理したい。陽介は、預金の動きを確かめてから分けたいと言う。
沙織は弁護士へ相談しようと考えた。ただ、取扱件数と料金表だけでは、誰へ何を頼むか決められない。
相談は、何を法的に求められ、どの資料を調べ、どの期限を守るかを整理するためにも使える。
調査、交渉、調停、税務等を、誰へ頼むかも確かめよう。調停は、裁判所で調停委員を交えて話し合う手続だ。
先に、困っている仕事を言葉にする
遺産分割では、遺産の範囲と評価、誰が何を受け取るか、分け方を決める。
一方、生前の無断出金の返還、遺言が有効かの争い、遺留分侵害額の支払等は、別の請求や裁判が必要になることがある。相続全部とだけ伝えず、困っている点を具体的に話そう。
- 戸籍や財産がある場所が分からず、調査方法を確認したい。
- 協議書案への署名前に、権利と負担を見てほしい。
- 相手へ分割条件を提案し、交渉を代理してほしい。
- 遺言や出金の効力・返還、遺留分の通知を検討したい。
- 調停や審判、関連する訴訟を代理してほしい。
登記の申請が中心なら司法書士、税の評価・申告なら税理士等の担当範囲も確認する。争いのない書類作成と、対立する相手との交渉は同じ仕事ではない。弁護士と司法書士の役割の違いも確かめよう。
沙織は、立替費の精算と、父の口座の出金への疑問が混在していることを相談時に伝えることにした。陽介の資料確認の希望を、単に協議への反対として処理せず、どの点が争いなのかを整理する。
自分の問題と、対応する手続を確かめる
相続の経験は、判断材料の一つになる。ただし、掲載件数には、相談、遺言作成、協議、調停、訴訟等が混ざることもある。
数だけで比べず、自分の問題で、何を調べ、どの方法を検討するかを尋ねよう。
介護への貢献、不動産の評価、使い道の分からないお金、会社の株式、外国の財産等では、必要な調査が違う。同じ「相続」の表示でも、その相談で対応できる業務、外部専門家の利用と費用を確認する。
解決事例は、その家族関係、財産、証拠を前提にしている。似た例があっても、同じ取り分や期間が保証されるわけではない。
資料をまだ見ていない段階での、必ず勝てる、全額回収できる等の説明だけで、判断しないようにしよう。
実際の担当者も確かめよう。最初に面談する人と、交渉や裁判所の期日を担当する人が違うなら、連絡先、引継ぎ、責任を持つ人を聞いておく。
事務所の知名度に加え、今回の仕事を進める体制も調べる。
費用と仕事を、同じ条件で比べる
弁護士報酬に、全国共通の法定料金はない。各弁護士の基準と契約で決まる。
相談料、依頼時の着手金、結果に応じた報酬金、実費、出張等の日当、時間に応じた報酬等を確かめる。すべての契約に、着手金と成功報酬があるわけではない。
説明用に、相手の提示800万円が、交渉で1,000万円へ増えたとする。仮の報酬率を10%としよう。
取得総額1,000万円へ掛ければ100万円、増額分200万円へ掛ければ20万円となる。
相場や当事務所の料金ではない。消費税・着手金・最低報酬・実費等を加える前の、説明用の比較だ。
相手の提示800万円 → 取得1,000万円。増えた金額は200万円、という本文の仮定だ。
1,000万円 × 10%
= 100万円
200万円 × 10%
= 20万円
料金の相場や当事務所の基準を示すものではない。消費税・着手金・最低報酬・実費等を加える前の比較だ。見積りでは、率と、計算の基になる金額を一緒に確かめよう。
同じ率でも、計算の基になる経済的利益の定義が違えば、金額は変わる。不動産を取る場合は、評価方法も確かめよう。
取得額が大きくても、報酬を払う現金が、すぐ入るとは限らない。いつ払うか、回収したお金から引かれるかも調べる。
交渉までの見積りか、調停・審判まで含む見積りかをそろえる。
関連訴訟、財産を仮に確保する保全、強制的な回収等の執行、鑑定、税申告、登記等が必要になった場合の追加契約・外部費用と、中途終了時の精算を確認する。詳しくは弁護士費用と委任契約の確認を確かめよう。
弁護士会の統一報酬基準は、2004年に廃止された。
現在の弁護士会の案内には、報酬基準の提示、依頼を受ける際の費用説明、見積りの作成・交付に努めること、原則として委任契約書を作ること等が示されている。
不明な欄を質問し、表示価格だけで決めないようにしよう。
説明と連絡、本人の確認方法を決める
相談後に、分かった事実、まだ調べる点、選べる方法と不確かな点を、説明してもらおう。
専門語の多さより、自分の資料と希望に合う説明かを確かめる。
沙織は、介護費が全部戻るかだけでなく、どの立替えの記録があり、誰へ、何を根拠に求めるかを尋ねる。
陽介が気にする出金も、父の支出か、資金移動か、権限なく取られたお金かを分けて調べる。事実が分からない部分は、その限界も説明してもらおう。
連絡方法、報告の時期、相手からの提案を共有する方法を確かめる。
相手へ提案する前、和解する前、調停の条件を受け入れる前に、本人の希望と判断を、どう確かめるかも話そう。相談しただけで、すべての条件を自由に決めてもらう関係にはしない。
依頼者にも資料の提供と条件の判断が必要になる。自宅を残したい、早期に現金化したい、直接連絡を避けたい等の希望へ優先順位を付ける。金額、生活と時間の希望が両立しない場合もあるため、譲れない点と検討できる点を共有する。
予約時に、当事者と期限を伝える
故人、自分、ほかの相続人の名前と関係、相手の代理人、相談したい問題を伝える。
相手側との関係等から、相談や依頼を受けられないこともある。一人の弁護士が、対立する全相続人の代理を、自動で引き受けられるわけではない。
手元資料は、戸籍や関係図、遺言、協議書案、財産・債務一覧、預金履歴、不動産資料、介護費・贈与等の記録、相手との連絡を整理する。すべてを集め終わる前でも、何が不足し、誰が保管しているかを伝えればよい。
死亡日、自分のために相続が始まったと知った日、遺言・贈与を知った日、届いた書類の日付も記録する。
放棄や遺留分の期限が近いなら、予約時に先に伝えよう。予約だけで、権利行使や、裁判所へ意思を申し出る申述を済ませたことにはならない。
比較相談は、期限を守りながら行う
同じ資料と、頼みたい仕事を示し、複数の弁護士の説明・費用を比べる方法もある。必ず三件回るというルールではない。
期限が目前なら、比較と並行して、必要な通知や申立てを先に確かめよう。
弁護士会の公式相談窓口等を使う場合は、受付分野、相談時間と費用、担当方法を確認する。個々の事務所も同じ料金と時間で相談を行うとは限らない。無料相談という表示だけで、事前の資料検討、交渉や期限管理まで無料と考えない。
費用をすぐ払えない場合は、法テラスの相談・立替制度や、事務所の支払方法を調べる。
法テラスの立替えには、収入・資産等の条件と審査があり、原則として返済が必要だ。無料相談、費用の立替え、返済の免除は、別のものとして確かめよう。
交渉・税・登記の担当を決める
弁護士が交渉しても、相手へ合意を強制することはできない。分割に合意できなければ、家庭裁判所の調停・審判等を考える。
審判は、裁判官が事情や資料から判断する手続だ。本人で手続をする選択肢もあり、すべての事件で、弁護士の代理が法律上必須という意味ではない。
相手が回答しない、資料が出ない、評価が合わないとき、どの段階で次の手続へ進むかも聞いておこう。
使い込みの返還責任や、遺言が無効かの争いまで、遺産分割審判だけで、自動的にすべて決まるわけではない。
分割の成立に一律の期限がなくても、ほかの手続は待ってくれない。
放棄は、原則として、自分のために相続が始まったと知った時から3か月。遺留分侵害額の請求は、相続開始と、遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年、相続開始から10年等を調べる。遺贈は、遺言で財産を渡すことだ。
相続税の申告・納付が必要なら、原則として、相続開始を知った日の翌日から10か月となる。不動産の相続登記は、自分のための相続開始と、所有権を取得したことを知った日から3年以内が基本だ。分割後の追加の登記義務や、制度開始前の相続の扱いも別に確かめよう。
相続開始から10年後の分割では、贈与や貢献を反映した具体的相続分の扱いも変わる。例外と、改正前の相続に関する経過措置を調べる。経過措置は、新制度へ切り替える際の特別な扱いだ。
相続税の義務があれば、未分割でも、申告・納付を進める。特例の後日適用や、申告の修正等は、別に対応する。
税理士・司法書士と連携するなら、資料を渡す人と、各人へ頼む仕事を決めよう。交渉の弁護士費用に、ほかの専門家の報酬や税まで、自動で含まれるわけではない。
相談の最後に、次の行動を確かめる
- 自分の争点と不足資料を確認する。
- 依頼する仕事、相手と手続の範囲を決める。
- 費用の計算の基礎と追加条件、支払時期を確認する。
- 本人の意向確認と進捗報告の方法を決める。
- 次の通知・申立て・申告等の担当と期限を記録する。
沙織は、立替費と出金を同じ「不公平」の一言で扱わず、資料ごとの検討を相談することにした。
陽介へ何を示し、どの条件なら合意できるかを整理し、必要な交渉と期限対応を依頼する。
選んだ理由が件数や価格だけでなく、自分の問題と頼む仕事の一致になれば、依頼後も進み方を確認しやすい。相談するタイミングも照らし合わせる。
ほかにも確認する手続がある場合は、遺産分割・調停・紛争の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
遺産分割協議はいつまでに終えるか
一律の成立期限ではないが、税、登記、請求権や10年後の具体的相続分の扱い等は別に進む。未分割時の申告・納付も確認する。
弁護士へ頼むのは調停になってからか
署名前の確認、財産調査や交渉の段階でも相談できる。助言だけか、通知・交渉・調停等の代理まで頼むかを明確にする。
弁護士費用は遺産から自動的に払えるか
自動的に共同の遺産から控除できるわけではない。契約者、費用の目的と合意、取得後の支払方法を確認する。
遺留分の期限は相談すれば止まるか
相談予約だけでは権利行使にならない。相続開始と侵害する贈与・遺贈(遺言で財産を渡すこと)を知った時から1年、開始から10年等を確認し、通知と到達を管理する。
司法書士と弁護士はどう使い分けるか
登記・書類作成と紛争の交渉・家裁の代理を分ける。必要な仕事と資格上の範囲を確認し、税務等と連携する場合の担当も決める。
本記事は、一般的な情報だ。依頼を受けてもらえるか、具体的な対応と費用は、資料と各契約から確かめよう。



