年金を受けていた人が亡くなったら、死亡に伴う手続、未支給年金の請求、遺族年金等の請求を分けて確認する。死亡後に口座へ入った年金をすべて返すとも、すべてそのまま使ってよいとも限らない。何月分か、誰が受け取る権利を持つかを確認する必要がある。
架空の家族で考えよう。父の誠が9月に亡くなり、10月に父の口座へ年金が振り込まれた。
長男の拓也は「亡くなった後の入金だから全部返さなければ」と考え、長女の彩は「残高に入ったのだから兄妹で分けるのでは」と思っている。母の芳江は、今後の生活費を心配していた。
家族は口座残高だけで判断せず、年金の種類と対象月、未支給の請求者、芳江自身の遺族給付を確認することにした。以下では主に日本年金機構の国民年金・厚生年金を扱い、共済や企業年金等は別に支払元の制度を確かめる。
死亡後の入金は、何月分かを調べる
年金は死亡した月分までが支払対象となる。死亡後に振り込まれたものでも、死亡月までの分が含まれるため、振込日だけで全額を過払いと判断しない。
誠の10月の入金が、8月・9月分で、ほかに精算等の事情がない、と仮定しよう。9月に亡くなったので、この二つは死亡月までの分だ。
ただし、家族が預金と同じように、自由に分けてよいわけではない。未支給年金の請求や精算を、年金事務所へ確かめる。
誠が9月に亡くなり、10月の入金は8月・9月分だけだった例。ほかの精算等はない仮定だ。
年金は、死亡した9月分までが支払対象となる。
対象は8月・9月分。
振込日が死亡後でも、この例を全額過払いとはしない。
次は、未支給年金の請求者を確かめる。入金を兄妹で自由に分けるのではなく、生計同一と順位等を確認する。死亡月より後の月分等があれば、返還・精算も支払元へ確かめよう。
一方、死亡月より後の月分等を多く受け取った場合には返還が必要になり得る。入金されたから使ってよいとはせず、振込通知、通帳、死亡日を示して支払元に照会する。自己判断で別の給付と差し引いたり、指定のない口座へ返金したりしない。
死亡の届出や未支給の請求をしても、故人の口座へ入金されることがある。口座の扱いは金融機関にも確認し、年金事務所への手続と預金の相続手続を別々に管理する。
死亡の届出と、給付の請求を分ける
日本年金機構に亡くなった人のマイナンバーが収録されている場合、年金受給権者死亡届(報告書)は原則として省略できる。未収録や不明の場合は要否を確認し、必要な手続を速やかに進める。
未支給年金を受け取れる遺族がいる場合は、「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」を提出する。
死亡の届出を省略できても、未支給年金が自動で遺族へ支払われるわけではない。
市区町村へ提出する死亡届だけで、未支給年金や遺族年金の請求がすべて終わるわけでもない。死亡届が必要かどうか、未支給の請求、遺族年金の請求を別の欄にして、受付日と担当窓口を記録したい。
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未支給年金は、遺族の条件と順位で判断する
亡くなった時にまだ受け取っていない年金や、死亡後に振り込まれた死亡月までの年金は、所定の未支給年金の手続を確認する。請求できるのは、死亡当時に本人と生計を同じくしていた一定の遺族である。法定相続人(法律で相続人になると決められた人)であるだけでは足りない。
順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他の3親等内の親族の順となる。先順位の対象者がいれば後順位者は受け取れず、同順位者が2人以上なら、そのうち1人が代表して請求する。
同居していたかだけでなく、別居でも生計同一が認められる事情があるかを確認する。別住所なら送金や生活の実態等について所定の申立書が必要になる場合がある。戸籍上の続柄だけから、自分が受取人だと決めない。
誠と生計を同じくしていた芳江が、先順位の対象者だとしよう。拓也や彩が書類を集めても、それだけで、子へ未支給年金の権利は移らない。
遺産の相続分に合わせ、三人で分ける計算とは違う。
この取扱いの未支給年金は、遺族の固有の権利に基づく。通常の遺産分割の対象とは区別し、相続放棄をした場合も給付条件を別に確認する。ただし、JR・JT・NTT・農林共済が支給する共済年金等には法定相続人による請求の取扱いがあり、すべて同じとしない。
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未支給年金の書類は、続柄と生計で変わる
請求書のほか、年金証書、請求者のマイナンバーと本人確認の資料を確かめる。続柄を示す戸籍や法定相続情報一覧図、生計同一の資料、受取口座の資料等も確認する。
ただし、すべてを必ず添付するわけではない。マイナンバーや公金受取口座の利用等で、一部を省略できる場合がある。
住民票上で別住所なら、生計同一関係に関する申立書等を確認する。事実婚の配偶者には関係を証明する別の資料も必要になる。家族が別の相続手続で集めた書類が、そのまますべて使えるとは限らない。
年金機構の現行案内では郵送のほか、予約した対面相談、所定の電子申請の方法も案内されている。共済等では提出先が違う場合もあるため、給付元を確認する。取得前に必要書類と省略できるかどうかを窓口へ尋ねると、重複取得を減らしやすい。
請求書の控え、受付、追加資料、支給・精算の通知を残し、入金が確認できるまで状況を管理する。書類を送ったことと、支給額が確定して受取りが終わったことを区別する。
遺族年金は、今後の生活のために請求する
未支給年金は、故人に支払うべきだった分を受け取る手続だ。遺族年金は、条件を満たす遺族の、今後の生活を支える給付だ。
同じ「死亡後にもらう年金」でも、目的と条件が違う。
遺族基礎年金
亡くなった人の加入・納付等の条件に加え、その人に生計を維持されていた「子のある配偶者」や「子」等の条件を確かめる。
ここでの子は、18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある、婚姻していない子をいう。
成年の子がいるというだけで、その親に遺族基礎年金が生じるわけではない。芳江には成人した子しかいないとすれば、子の条件を満たすものとして見込まない。死亡した人の保険料納付や受給資格等も確認する。
遺族厚生年金
亡くなった人について、厚生年金の加入期間や、一定の障害・老齢年金の受給資格等を確かめる。遺族についても、生計維持、続柄と順位、年齢等を調べる。
亡くなった時に、厚生年金へ加入中の人だけが対象となる制度ではない。
現行の年金機構案内では、子のある配偶者、子、子のない配偶者、父母、孫、祖父母等の優先関係を示し、配偶者等には年齢や支給開始・期間の条件がある。すべての配偶者が同じ条件で同時に受け取れるわけではない。
自分の老齢厚生年金を受ける権利がある場合の調整等もある。故人の年金総額の4分の3を、そのまま自分の年金へ上乗せできると見込まない。将来施行される改正と、今回の死亡に適用される条件も区別して確認したい。
芳江の生活費を考えるときは、遺族給付の見込額と、自分の年金との調整後の受取額を確認する。財産として一括して入る保険金や預金と、継続的な年金収入は別の欄で整理する。
時効は、給付の種類と始めの日を確かめる
年金を受ける権利そのものを「基本権」、各期の支払を受ける権利を「支分権」という。日本年金機構は、それぞれの5年の時効と、その取扱いを案内している。
遺族年金を5年以上請求しなかったから、今後の分も必ず全部受け取れない、と決めつけない。
未支給年金の時効も5年だ。ただし、期間を数える始めの日は、機構の表では、受給権者の年金の支払日の翌月1日となっている。死亡日から一律に5年とは数えない。
給付ごとに、数え始める日、過去分、時効を援用しない場合等を窓口へ確かめよう。時効の援用とは、時効が成立したと主張することだ。
国民年金の死亡一時金等は、年金と異なる2年の期限などがある。年金関係はすべて5年あると思い込まず、未支給・遺族年金・その他の給付ごとに確認する。長く経過している場合も、相談前に自分で断念しない。
未支給年金は、遺族自身の所得税を確かめる
一定の遺族が固有の権利として受け取る未支給年金は、その遺族の一時所得の収入となる。故人の準確定申告へ自動的に入れるものではない。給付自体が非課税とされるもの等は別に確認する。
芳江が未支給年金40万円を受け取ったとしよう。その年に他の一時所得がなく、特別控除の適用にも問題がないなら、上限50万円の特別控除の範囲に収まる。
他にも一時所得があれば、合算して確かめる。40万円なら、誰でも一切の手続が不要、とは決めない。
国民年金法・厚生年金保険法等による遺族年金は、原則として所得税・相続税とも非課税である。しかし、企業年金や民間保険の年金受給権には別の課税関係がある。給付名だけですべて同じ扱いにしない。
故人の生前の老齢年金等は準確定申告の確認対象になり得る。所得税の申告義務、相続放棄の判断、相続税申告という別の手続も並行して管理する。
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拓也と彩は、誠の年金の対象月と未支給請求を確認し、芳江の遺族給付と生活費の見通しを別の欄へまとめることにした。入金額だけで判断せず、権利、税、今後の収入を分けて整理したい。手続は日本年金機構の死亡時の案内、税は国税庁No.1605で確認できる。
ほかにも確認する手続がある場合は、保険・金融資産・デジタル・海外の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
年金の死亡届は必ず出す必要があるか
日本年金機構に本人のマイナンバーが収録されていれば原則省略できる。未収録や不明なら確認する。死亡届を省略できても、未支給年金や遺族給付の請求は別に必要である。
未支給年金は遺産分割で分けるか
国民年金・厚生年金の所定の未支給年金は、条件を満たす遺族の固有の権利に基づく。生計同一と順位を確認し、通常の相続分とは区別する。共済等には異なる取扱いがある。
遺族年金は5年を過ぎると一切受けられないか
基本権と過去の各期の給付、期間を数え始める日、時効の取扱い等を確認する。すべての将来分も自動的に受けられなくなると決めず、速やかに年金事務所へ確認する。
相続放棄をすると遺族年金は受けられないか
遺族自身の権利に基づく給付は、相続放棄とは別に条件を確認する。すべての遺族や共済等に同じ結論を当てはめず、給付元と制度を確認する。
未支給年金を故人の準確定申告へ入れるか
所定の遺族が固有の権利で受ける未支給年金は、原則としてその遺族自身の一時所得として確認する。故人の生前の年金所得と混同しない。



