相続した車の手続は、車検証の所有者と使用者、登録車か軽自動車か、誰が受け取るかを確認することから始める。必要書類や窓口は一律ではなく、乗り続ける、売る、廃車にするという予定でも変わる。
架空の家族で考えよう。父の正彦が亡くなり、長女の由香は、父の車を母の通院に使いたいと考えている。
弟の航は、維持費がかかるため売りたい。母の恵美は車を残したいが、運転や費用を子に任せきりにすることを気にしていた。
家族は、車のキーを持っている人がそのまま自由に処分できるとは考えず、車検証と契約、車の価額、保険を確認することにした。車の所有権、登録上の名義、保険で補償される人は別の項目である。
車検証の所有者と使用者を確かめる
まず車検証と、自動車検査証記録事項等を調べる。登録番号、車台番号、所有者、使用者、主に使う場所、有効期間を確かめよう。
電子車検証には、券面に載らない情報もある。記録事項も確認する。
故人が普段乗っていても、所有者は販売会社、信販会社、リース会社という場合がある。
ローンの残額、支払完了まで会社に所有権を残す契約、リース契約等を調べよう。故人が所有する車と、同じ方法で移せるとは決めない。完済、契約の終了や引継ぎ、所有権を移す条件等を、契約先へ確かめる。
故人が所有者なら、遺言や相続人の状況等から、引き継ぐ人を整理する。
名義変更が終わらないと、所有権を一切相続しないという意味ではない。ただし、売却や登録の抹消等では、相続関係を証明する必要がある。
登録車と軽自動車の窓口・書類
普通車等の登録自動車は、運輸支局や自動車検査登録事務所で相続による移転登録を行う。軽自動車は軽自動車検査協会の事務所・支所で手続を確認する。原付や二輪等も別の窓口があるため、車種から確認する。
登録車の必要書類を、軽自動車へそのまま当てはめない。
軽自動車検査協会は、所有者の死亡と、新所有者が相続人等であることを示す、戸籍や法定相続情報一覧図等を案内している。必要書類、コピーでよいか、使用者の住所を示す資料等は、具体的な手続から確かめよう。
由香たちは正彦の車が登録車だと確認した。保管場所を変えるのか、誰が所有し誰が主に使うのかを整理してから、窓口へ必要書類を問い合わせることにした。
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相続でも、名義変更の期限を確かめる
道路運送車両法13条は、登録車の所有者が変わった時、新所有者に、その事由があった日から15日以内の移転登録申請を求めている。移転登録は、新しい所有者への変更を登録する手続だ。
同法67条も、使用者に、車検証の記録事項が変わった事由の日から、原則15日以内の変更記録を求める。効力を失った車検証では使用しようとする時までとできる例外等があるため、具体的な手続を確かめる。
相続だから一律に期限がない、とはいえない。
死亡、遺言、分割の状況から、誰がいつ権利を取得し、どの登録や変更が必要かを、車種と書類を示して窓口へ確認する。遺産全体が決まるまで、何年でも待てると考えない。
保険の変更、車検、税の届出等にも別の確認が必要になる。すでに時間が経過している場合も、そのままにせず、相続による手続の方法を窓口へ相談したい。
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登録車を一人が取る場合の必要書類
相続人の一人が登録車を取得する場合、関東運輸局は、申請書、手数料納付書、車検証、新所有者の印鑑証明書等を案内している。
死亡と相続関係等が分かる戸籍や法定相続情報証明書、誰がどの理由で取得するかを示す書類も必要になる。
取得の理由を示す資料は、遺産分割協議書だけではない。この協議書は、相続人同士が合意した、遺産の分け方を書くものだ。
遺言、遺言書情報証明書、調停調書、確定した審判等、状況に合わせて確認する。相続人が一人なら、存在しない共同相続人との協議書を作るものではない。
遺産分割協議書を使う案内では、相続人全員の実印の押印が示されている。ただし、印鑑証明書まで、いつも全員分が必要とは限らない。新所有者についての条件等を確かめる。
未成年者と親などの利害が対立する場合は、誰が代理できるかも整理しよう。
新所有者と使用者が違う場合の住所証明や委任状、車庫証明、管轄が変わる場合の車両提示等も調べる。
車庫証明は全件一律ではない。主に使う場所が変わるか、適用地域か等の条件がある。戸籍や住民票を多めに取る前に、原本か写しか、有効期間も確かめよう。
100万円以下でも合意は必要
登録車には、相続する車の価格が100万円以下であることを確認できる査定証や価格資料等を添え、遺産分割協議成立申立書を利用する取扱いがある。
この申立書は、協議により自分が車を取得すると決まり、この申立書で申請する同意も得たこと等を申し立てる書類だ。
安い車なら、他の相続人に無断で取得できる制度ではない。
例えば正彦の車が80万円と査定されたとしても、由香が一人で「自分が相続する」と決められるわけではない。使える価額資料と申立書の条件を窓口に確認し、家族の協議と申請書類の簡素化を区別する。
遺言がある場合や、所有権留保、共有取得、直接の第三者への移転等では、必要な方法が違うことがある。100万円以下という数字だけですべての手続を省略しない。
車だけ分けても全体を記録
共同相続人の協議で、車だけを先に分けることもできる。共同相続人は、同じ人の遺産を一緒に相続する人たちだ。
誰が取るか、ほかの財産の分割で車の価額をどう扱うか、費用の負担も確認する。一部分だけを分け、他の相続人の利益を害するおそれがある場合等には、問題になることがある。
由香が車を取得するなら、その価額を他の財産の配分にどう反映するかを家族で話し合う。80万円の車を取得したことと、航へ直ちに40万円を払う義務が自動的に生じることは同じではない。全体の分割内容による。
一部の車だけを決めた場合は、残る財産を未分割として一覧に残す。合意した対象の車台番号等を正確に示し、後の協議で同じ車をもう一度分配したり、価額を二重に数えたりしない。
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税の評価、売却現金、維持費を比べる
故人が所有する車は、相続税の財産として調べる。原則として、亡くなった時の売買の実例や、事情に詳しい人の意見価格等を参考に評価する。
年式、走行距離、状態等を示す査定資料を残そう。購入額やローン残高が、そのまま車の評価額になるわけではない。
亡くなった時の評価の参考となる査定が80万円で、後日75万円で売ったとしよう。実際の売却関連費が5万円なら、現金差額は70万円になる、という仮定だ。
死亡時の評価80万円、売却による現金70万円、実際の相続税額は、それぞれ違う数字である。
正彦が所有していた車を、適切な資料から死亡時80万円と評価し、後日75万円で売った仮定だ。売却関連費は、実際に5万円かかったものとする。
80万円
購入額やローン残高とは別の額だ。
75万円 − 5万円
= 70万円
この70万円が、相続税額ではない。
車を残す案では、維持費や保険も比べる。借金の返済、税、家族への分配等は、この計算に含めていない。80万円の車を由香が取るだけで、航への40万円の支払義務が自動的に決まるものでもない。
保有を続ける案では、駐車場、税、保険、車検、修繕等の支出を確認する。車の価額が低いことと、維持費が少ないことは同じではない。ローン等の債務は、契約と残額を別に調べる。
使う前は保険、手放す前は登録を確認
任意保険では、契約者、主に使う人としての記名被保険者、車両所有者を分けて確かめる。
車検証の名義だけで、補償されるとは判断しない。誰が主に使うか、運転者や年齢の条件、等級の引継ぎ等を、保険会社や代理店に確認する。
由香が運転するなら、母が使う車だから自動的に補償されるとは限らない。運転する前に現在の契約条件を確認し、必要な変更を行う。自賠責保険も、証明書や契約上の変更手続を別に確かめる。
売却や廃車では、相続による名義変更と、その後の移転・抹消等を、どの順で行うか確かめる。同日にできるかも、窓口で調べよう。
軽自動車検査協会は、相続の名義変更と廃車を同日にできると案内している。故人名義だから、今後一切売却・廃車できないという意味ではない。
家族は、恵美の通院に必要な頻度と、由香が運転・費用を負担できる範囲を確認し、航の売却案も含めて比べることにした。受け取る人を決めるだけで終わらず、登録、保険、入金や抹消の完了まで記録したい。
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登録車の必要書類は関東運輸局の相続の案内等を確認し、軽自動車は管轄の軽自動車検査協会へ照会する。車種、名義、遺言・分割の状況から必要な手続を絞り込みたい。
ほかにも確認する手続がある場合は、保険・金融資産・デジタル・海外の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
相続した車の名義変更に期限はないか
登録自動車の所有者変更には道路運送車両法13条の原則15日以内の移転登録規定がある。相続や分割の状況から必要な登録と時期を窓口へ確認し、期限がないと考えて放置しない。
分割協議が終わらなければ一切手続できないか
遺言や単独相続等の取得原因でも必要書類が変わる。協議で車だけ先に分ける方法もあり、対象者の合意と遺産全体への反映を整理する。
車は相続税の対象になるか
故人所有の車は財産として確認し、亡くなった時の売買実例や査定等から評価する。所有権留保・リースやローン等は契約と権利・債務を別に確認する。
名義変更は自分でできるか
本人が必要資料を用意して申請することもできる。代理人による申請では委任状等を確認する。登録車と軽自動車で窓口や必要書類が違う。
100万円以下なら他の相続人の合意は不要か
不要ではない。成立申立書を使う取扱いは、協議成立とその方法による申請への同意等を前提とする。査定等の添付と、具体的に使える条件を確認する。



