税理士か弁護士かは、頼みたい仕事を具体的にして選ぶ。家族が争っているかだけで決めず、税の評価と申告、遺言や権利、本人の生活、配分と資金を分けて考える。
架空の家族で考えよう。父の章は、生前に財産を引き継ぐ準備を始めたい。母の美和は、住まいと生活費を守りたい。
子の亮は税金を抑えたいと言い、姉の紗季は、家を誰が受け取るかと、兄弟の公平さを先に話したいと言う。
相談の目的は、税額を減らすことだけではない。本人の希望、誰が持つ権利と責任、手続の担当を明らかにする。
税を試算しても、家族の合意まで成立するわけではない。遺言を書いても、納税や、ほかの相続人へ払う調整のお金である代償金を、用意できるわけではない。
税の評価・申告は、税理士へ相談
相続税がかかるか、土地や株の税の評価、贈与と相続の税の比較、申告書作成、税務署への対応等は、税理士へ相談する分野だ。
税理士法2条等の範囲と、実際に頼む仕事を確かめる。
税がかかるほど財産はないと思っても、家族名義の預金、死亡保険金、一定の贈与等を調べる必要がある。
売れそうな値段、固定資産税の評価、相続税の評価は同じではない。複雑な土地や非上場の株は、資料を示し、どう評価するかを相談しよう。
税の相談をしただけでは、ほかの相続人との分割交渉まで、代理してもらう契約にはならない。
誰の申告や代理を頼むか、共同で依頼するなら、誰にどの資料を共有するかを確かめる。
権利・遺言・交渉は、弁護士へ相談
弁護士には、争いが起きる前でも、遺言、贈与、財産管理、家族の権利や承継の条件を相談できる。
一定の近い家族の最低限の取り分である遺留分、本人の意思と書面の方式、将来の利害の対立、契約を実行する方法等を確かめる。
相続後に、遺産の範囲、使い込み、価額、生前の援助や介護等を巡って対立したら、請求の根拠と資料を整理する。
話合い、家裁で調停委員を交えて話し合う調停、裁判所が決める審判、訴訟等の使い分けも調べる。すべての争いが、家裁の遺産分割審判だけで解決するわけではない。
弁護士へ頼んでも、相手の同意を強制できるわけではない。
本人が申立てや請求をする方法もある。放棄や遺留分の手続を、すべて弁護士だけが行えるという意味ではない。助言、書面の確認、通知、交渉、裁判の代理のうち、どこまで頼むかを決めよう。
税の仕事にも、資格や通知等の制度がある。税理士法51条に基づき通知した弁護士等が、税の業務を行える場合もある。
ただし、分割を弁護士へ頼めば、相続税の申告まで必ず含まれるとは考えない。担当者と契約の範囲を確かめる。
財産の価額・現金・税を分ける
説明用に、章の財産の民事上の価額を自宅6,000万円、預金2,000万円とし、将来の相続人は妻と子二人、遺言・債務・特別受益等の調整はないとする。法定相続分(法律で決められた相続の割合)の価額は美和4,000万円、亮と紗季は各2,000万円だ。
美和が自宅を取得し、子二人が預金各1,000万円を取得して、この前提で等額にそろえる案なら、美和から子へ各1,000万円、計2,000万円の代償金が必要になる。美和自身の現金や融資等を使えるか、生活費を圧迫しないかを確認する。家6,000万円があることと、その現金を払えることは違う。
税務では、この家族関係が税の人数にも当てはまる前提なら、基礎控除の目安は3,000万円+600万円×3=4,800万円だ。しかし、民事上の8,000万円をそのまま税の課税価格に置き換えない。土地の評価、債務(借金など、支払い等をしなければならない義務)、保険や贈与、特例等は別に調べる。
亮は税額だけを比べたかったが、紗季が何を受け取りたいかと、美和が払える現金も大事だと分かった。
税理士には税の評価と各配分案の申告を、弁護士には権利、遺言、代償金の条件を相談する。同じ財産一覧で考えることにした。
贈与は、本人の生活と税を確認
贈与は、本人が財産を無償で渡し、相手が受け取ると合意することが基本だ。
子の口座へ送金しただけで、贈与の成立や、税を計算する上での所有者まで、必ず決まるわけではない。資金の出どころ、双方の意思、誰が管理し使えるかを確かめる。
暦年課税の基礎控除110万円は、受け取る人が一年間にもらう贈与の合計で考える。複数の人からもらっても合算する。
贈る人一人ずつに、110万円の枠を足す制度ではない。
相続税への生前贈与の加算は、別に判定する。2024年以降の暦年贈与には、対象期間を7年へ延ばす経過措置がある。2026年中の死亡では原則3年で、その後、段階的に伸びる。
贈与税の申告が不要だったことと、相続税へ加算しないことは違う。相続時精算課税の別の110万円、届出、一度選ぶと同じ贈与者について暦年課税へ戻せない点も、分けて考える。
章が贈与して手元資金を減らす場合、夫婦の生活費、介護や住まいの費用を残せるかも確認する。税の試算で有利でも、必要なお金を先に渡しすぎる案が本人に合うとは限らない。生前対策で先に整理することも照らし合わせる。
遺言の内容と、実行方法を確認
誰に何を残すかを、財産の特定、先に受取人が亡くなった場合の予備の人、遺言を実行する人と権限、遺留分まで含めて考える。
家族の希望を聞くことと、遺言を書く本人の意思を確かめることは違う。子が代筆し、本人の名で仕上げてよいわけではない。
配偶者へ多く残す案は、税の軽減だけで決めない。配偶者が後に亡くなる時の相続、本人の生活、必要な資金も比べる。
特例で税がゼロになっても、その特例を使うための申告が必要な場合がある。
公正証書、自分で書く自筆証書、法務局の保管制度等では、作り方、保管、検認の要否が違う。
安い方法なら、希望を必ず実現できるとは限らない。本人の能力、内容の複雑さ、実行する方法を相談しよう。
交渉中も、放棄・請求・納税の期限
相続放棄等の判断期間は、原則、自分のために相続が始まったと知った時から3か月だ。家庭裁判所へ申し出る必要があり、家族内で何も受け取らないと合意することとは違う。
財産を処分すると引き受けた扱いになる場合や、調査が間に合わない時の期間延長も確かめる。
遺留分侵害額請求は、相続が始まったことと、遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年、相続開始から10年等を確かめる。
協議や相談予約だけで済ませず、権利を行使する通知と、相手への到達を管理する。古い相続では、旧制度を使うかも調べる。
相続税の申告義務があれば、原則、相続が始まったと知った日の翌日から10か月以内に、申告と納税を行う。
分割が決まらなくても期限は延びない。民法の相続分等を基に税を計算し、申告と納税を進める。仮に書類を出すだけで、支払いを待てる制度ではない。
未分割時の配偶者軽減等の制約と、後日の分割・更正等、当初の分割見込書と期限を税理士へ確認する。分割が長引いた場合の修正等は、最初の見積りに含むかも決める。全体は相続手続の流れで確認する。
担当と、仕上げる仕事を決める
| 課題 | 確認する担当と成果 |
|---|---|
| 財産と債務の把握 | 誰が資料を集め、誰が未確認の照会を行うか。 |
| 民事の権利・分割 | 弁護士の助言や交渉の範囲、合意の条件。 |
| 税務評価・申告 | 税理士等の担当者、申告者、評価資料と期限。 |
| 登記・金融機関の実行 | 司法書士等と本人の担当、名義変更と完了確認。 |
| 費用・原本と連絡 | 契約別の報酬・実費・税、原本管理と共有先。 |
窓口が一つでも、すべてが同じ料金に含まれるとは限らない。
交渉、調停・審判、税務調査、登記、追加の財産への対応等を、契約で確かめる。別の専門家へ渡す資料と、個人情報の共有方法も決めよう。
章たちは、税額を比べる前提となる家族関係、本人の希望、財産と現金を一枚にまとめることにした。亮と紗季の希望が違っても、同じ資料で税と権利を検討できる。早く始める理由も、単に税金を下げるためではなく、本人の意思と生活を確認する時間を持つためにある。準備を始める時期も参照する。
ほかにも確認する手続がある場合は、手続き全体・期限・専門家費用の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
税理士と弁護士、最初はどちらへ相談するか
税の評価・申告か、権利や遺言・交渉か、困っている仕事を分ける。期限と両方の課題があれば、担当と連携を並行して確認する。
遺産分割は期限がないから待てるか
一律の成立期限と、税・登記・請求権や10年後の具体的相続分の扱いは別だ。他の手続まで止めずに管理する。
相続放棄は家族内の合意だけでできるか
できない。家庭裁判所への申述が必要だ。原則3か月の熟慮期間、単純承認と調査未了時の伸長を確認する。
一人へ全財産を渡す遺言なら他の人は何も請求できないか
一定の相続人の遺留分等が問題になる。遺言の効力、権利の内容、通知と期限を分けて確認する。
分割が未了なら相続税は仮提出でよいか
申告義務があれば未分割でも申告・納付を行う。後日の修正・更正や特例の条件と期限を別に確認する。
本記事は一般的な情報である。具体的な分担、税と権利の判断は、資料と各専門家の受任範囲から確認する。



