税務署から連絡が来たら、まず調査か行政指導か、対象と期限、必要な資料を確認しよう。電話だけで、申告漏れや加算税が決まるわけではない。
税務調査は、申告と資料を照らして適正な税額を確かめる手続だ。連絡の種類と、家族名義の預金が誰の財産かは、別に調べる必要がある。
架空の家族で考えよう。父の相続税を申告した宏に、税務署から電話があった。妹の奈津は「すぐ修正申告した方がよいのでは」と心配するが、宏は何を修正すべきかまだ分からない。手元には、父の預金から孫名義の口座へ動いた300万円の記録があった。
82.3%は、令和6事務年度に実地調査を受けた9,512件のうち申告漏れ等の非違があった割合であり、相続税申告全体の調査確率ではない。
訪問して行う実地調査のほか、電話・書面等で確認する方法もある。連絡方法だけで、調査か行政指導かは決まらない。
申告漏れに気づいた時期等で、追加の負担である加算税の扱いも変わる。処分に不服があれば、現在の手続名は「再調査の請求」か「審査請求」だ。期限も確認する。
調査対象に選ばれた事件の統計を、すべての相続への調査確率として当てはめない。統計の母数は別記事で確認できる。 相続税の税務調査は8割超?統計の正しい読み方と申告前の備えで詳しく確認できる。
税務署から連絡が来たら、行政指導か調査か、対象と日時、求められた資料を記録する。一般的な調査確率よりも、受けた通知にどう対応するかを順に確かめる。
「調査」と「行政指導」は、最初に区別する
国税庁は、実地調査と、文書・電話・来署依頼等による簡易な接触の実績を分けて公表している。訪問以外にも調査はあるため、簡易な接触なら必ず行政指導だ、とは決められない。
国税通則法74条の3は、相続税・贈与税の調査に必要な場合、職員が納税義務者等へ質問し、財産や帳簿等を調べ、提示・提出を求める権限を定める。訪問して行う場合が実地調査だ。
計算誤りや記載漏れについて、自分で見直すよう求める行政指導は、調査と区別される。
国税庁のFAQは、税額等を認定するための調査と、自発的な見直しを求める行政指導を分けている。担当者は、具体的な手続に入る前に、どちらかを明示する運用だ。
電話や書面を受けたら、次の五点を記録しよう。
- 担当部署・氏名・連絡先
- 調査か行政指導か
- 対象となる税の種類・期間
- 求められた資料
- 回答期限
分からない項目は担当者へ確認する。この記録が、その後の対応の土台になる。
実地調査の事前通知と、無予告が起きる条件
実地調査では、原則として、始める前に通知がある。国税通則法74条の9は、日時、場所、目的、税の種類、対象期間、帳簿書類等を、原則として本人と税務代理人の双方へ通知すると定める。
本人の事前同意を記載した税務代理権限証書がある場合は、一定の税務代理人への通知で足りる扱いもある。合理的な理由があれば、日時や場所の変更を協議できる。
事前通知には例外もある。通知すると、不正な行為をしやすくなり、正確な税額の把握や調査に支障が出るおそれがある、と認められる場合だ。国税通則法74条の10を確認する。
無予告が普通という意味でも、希望すれば必ず事前通知を受けられるという意味でもない。
手元の申告書と財産資料を照らし合わせ、名義財産や記載漏れの疑いを整理する。 相続税の申告漏れ|名義預金・修正申告・重加算税の判断で詳しく確認できる。
申告漏れに気づいたとき、「いつ気づいたか」が加算税を分ける
申告後に誤りが見つかっても、「調査が始まる前に出せば、必ず加算税がない」とは考えないようにしよう。
調査開始日だけでなく、調査通知があったか、「更正があるべきことを予知」していたかが重要だ。更正は、税務署側が税額等を直す処分をいう。予知は、調査により税額等を直されると分かっていたか、という判断だ。
過少申告加算税の基本的な割合は、次のように分かれる。正当な理由や加重の条件、適用される時期等も別に確認する。
- 調査通知前かつ更正を予知する前:過少申告加算税が課されない場合がある
- 調査通知後、調査による更正を予知する前:新たに納める税額に原則5%、一定額を超える部分は10%
- 調査を受け、更正を予知した後:原則10%、一定額を超える部分は15%
高い割合がかかる「一定額を超える部分」は、原則として、期限内に申告した税額と50万円の、多い方を超える部分だ。既に修正申告や更正があれば、累積額も確認する。
延滞税はこれとは別に計算される。隠蔽・仮装がある場合は重加算税の問題となり、加算税の区分が変わる。重加算税との違いは相続税の重加算税とは|35%・40%の条件と単なる申告漏れとの違いで説明している。
現地訪問前でも、必ず自主申告として無加算になるわけではない。
誤りを見つけた日、税務署の連絡内容、手元の資料を、日付順に残そう。調査通知と更正を予知した時期を考える根拠になる。
調査期間に「通常1〜2年」という固定の目安はない
調査にかかる時間や日数は、開始後の状況で変わる。国税庁のFAQも、事前通知の時点で一律には示せないと説明している。
財産の種類、銀行への照会、国外資料、評価の争い、相続人の人数等でも変わる。「通常1〜2年」と固定した期間を示す公的根拠は、確認できない。
更正・決定等の期間制限には法定申告期限、行為の内容、相続税の特則等の確認が必要だ。「5年経てば必ず安全」「一律7年」と単純化せず、申告書と連絡経過を示して個別に確認する。
処分に不服があるとき、手続の名前と期限を確認する
税務署が税額等を直す更正処分を受けて、内容に納得できない場合は、不服申立ての手続を確認しよう。現在の手続名は「異議申立て」ではない。
税務署長等の処分に不服がある場合、原則として次の方法がある。
- 再調査の請求:処分があったことを知った日(通知を受けた場合は受けた日)の翌日から3か月以内に、所定の請求先へ
- 審査請求:再調査を経ず、処分があったことを知った日(通知を受けた場合は受けた日)の翌日から3か月以内に国税不服審判所長へ。再調査決定後は、決定書謄本の送達翌日から1か月以内に審査請求
- 訴訟:裁決後も不服がある場合、原則として裁決があったことを知った日の翌日から6か月以内
再調査・直接の審査請求には、処分があった日の翌日から原則1年という期限もある。訴訟にも、裁決の日から原則1年という別の期限がある。正当な理由等の例外を含め、通知と経過から確かめよう。
修正申告は、自分でする申告だ。その申告自体への不服申立ては、原則できない。
税額が多すぎた場合は、更正の請求の条件と期限を確かめる。申告した税額等を直してもらうよう求める、別の手続だ。
内容に不服がある場合は、再調査の請求や審査請求を検討する。通知日を記録し、一覧の期限も確認する。
修正申告を勧められることを、勧奨という。応じるかは本人の判断だ。提出前に、争点と金額の根拠を確かめよう。
宏は、税務署の連絡、家族への確認、資料提出、税額の説明を日付順に並べた。奈津も、誰の財産かという判断の違いと、隠したり実態を偽ったりしたかを分けて質問する。
処分に不服があれば、通知を受けた日と期限を記録しよう。自分でする修正申告と、税務署の処分への不服申立てを混同しないようにしたい。
いま手元にある書類で、何を確認するか
冒頭の82.3%は、選ばれた実地調査の中で、申告漏れ等が見つかった割合だ。申告した全員について、調査される確率や申告漏れの有無を決める数字ではない。
申告書が手元にあれば、財産のお金の出どころと、誰が管理したかを資料で説明できるか確かめよう。生前の資金移動には、贈与契約書や振込記録があるかも確認する。
土地や、取引所に上場していない会社の株式である非上場株式は、評価の根拠をほかの人へ示せる形で残しておこう。
税務署から電話や書面が届いた場合は、まず担当者の氏名・部署・連絡先と、調査か行政指導かを確認して記録する。その一歩が、その後の対応の起点になる。申告内容や手続の判断に迷いがあるなら、手元の書類と連絡内容を整理した上で専門家に相談するのが、具体的な次の動きになる。
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ほかにも確認する手続がある場合は、相続税の申告・納付・調査の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
よくある質問
82.3%は申告全体の調査確率か
違う。令和6事務年度に実地調査された9512件中7826件の非違割合であり、全申告の割合ではない。
電話が来たら必ず税務調査か
連絡方法だけでは決まらない。担当者へ調査か行政指導かを確認し、対象と期限を記録する。
現地訪問前なら加算税はないか
訪問日だけで決まらない。調査通知と、更正を予知したかを確認する。
修正申告自体に不服申立てできるか
修正申告は処分ではなく、不服申立てはできない。税額が過大なら更正の請求の条件・期限を確認する。
この記事は一般的な情報を説明するものだ。個別の判断は、相続関係、財産、契約、取引記録などの資料を示して弁護士・税理士へ確認したい。



