相続税 払えない

相続税が払えないとき|納税資金・延納・物納・特例の確認順序

相続税を納期限までに一括で払えない見込みなら、税額の確認と納税資金の確保を同時に進める。延納や物納は条件付きの申請制度であり、申告書を出しただけでは納付を待ってもらえるわけではない。

架空の家族で考えよう。父を亡くした恵理は、実家と土地を引き継ぐ予定だ。弟の直樹は「不動産があるのだから払えるはず」と言うが、恵理の納税見込みは800万円、期限までに納税へ回せる現金は200万円しかない。母の文子が住む家を、すぐ売るわけにもいかない。

差額の600万円をどう用意するか。まず800万円という税額が特例等を踏まえた数字かを確認し、そのうえで売却・借入れ・延納・物納を比較する。家族に財産があることと、恵理自身が納期限までに使える現金があることを分ける必要がある。

申告と納付の期限を、一つの予定表に記録する

相続税の申告・納付は、通常、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に行う。納付書や請求書が届くのを待つ制度ではなく、原則として自分で計算し申告・納付する。申告書の提出と送金の手続も同じではない。

遺産分割が終わっていないことだけでは、期限は自動的に延びない。誰がどの財産を受け取るか未定でも、法定相続分等で計算した未分割の申告・納付が必要になる場合がある。特例を使えない段階の税額と、分割後に適用を検討する税額を分けておく。

恵理たちは、分割の話合い、申告書の作成、納税資金の用意を、同じ予定表で進めることにした。

必要な場合の準確定申告は、通常、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内。相続放棄の検討は、原則として自分のために相続が始まったと知った時から3か月以内だ。税の10か月を待って、すべてを始めないようにしよう。

期限後申告・修正申告の場合、納付日は申告書の提出日となる。修正申告は、少なく申告した税額等を自分で直す手続だ。

税務署による更正・決定では、通知が発せられた日の翌日から1か月を経過する日が納付日となる。既に期限を過ぎている場合も、申告の種類に応じて延納等の申請期限を確かめよう。

相続手続きの期限一覧|3か月・4か月・10か月・1年・3年

相続の期限は、手続ごとに違う。放棄等は原則3か月、亡くなった人の所得税は4か月、…

相続手続き
相続手続きの期限一覧|3か月・4か月・10か月・1年・3年

第一の確認は、評価と特例を踏まえた税額か

財産の評価、債務(借金など、支払い等をしなければならない義務)・葬式費用等の控除、保険金等の非課税、各人の税額控除を確認する。税額が下がることを期待して、条件を満たさない控除や特例を先に入れることはできない。計算の根拠資料をそろえる。

配偶者の税額軽減は、配偶者が実際に取得した正味の遺産額について計算する。1億6,000万円と法定相続分相当額の多い方まで、配偶者の税額を軽減する制度だ。

文子が配偶者でも、娘の恵理の税額がそのまま0円になるわけではない。取得財産、母の生活、将来の相続も合わせて比べよう。

小規模宅地等の特例は、一定の土地等の相続税評価額を減らす制度である。特定居住用宅地等では330平方メートルまで80%減額できるが、土地の用途、受け取る人、居住・保有等の条件がある。土地の評価が下がる額と、税額が下がる額は異なる。

配偶者の軽減と小規模宅地等の特例には、申告・資料が必要だ。未分割の財産は原則として対象にならない。

分割が間に合わなければ、分割見込書等、後日に特例を使うための手続も確認する。後で税額が戻る可能性があっても、今の納税資金は別に用意する必要がある。

相続税はいくらから?預金・実家・保険と基礎控除を家族の例で考える

相続税は、財産を受け継ぐたびに必ずかかる税ではない。まず、税の決まりに沿って財産…

相続税・節税・不動産
相続税はいくらから?預金・実家・保険と基礎控除を家族の例で考える

第二の確認は、期限までに使える現金がいくらか

相続で受け継ぐ預金、本人の預金、受取れる保険金、売却できる財産、借入れを検討できる額を分ける。凍結された預金の払戻しには書類や手続が必要で、分割前に一人で自由に全額引き出せるわけではない。

死亡保険金も、受取人が誰かを確認する。母が受け取る保険金を恵理が自動的に使えるわけではないし、後から渡してもらえば贈与等の問題が生じることがある。家族の預金を一つの財布のように扱わない。

恵理の800万円に対し200万円しかないという差額600万円は、まず家計上の資金不足の数字である。延納や物納で認められる金銭納付困難額は、所定の計算で確認する。本人が生活のために残したい額が、そのまますべて控除されるとは限らない。

売却なら、売値から仲介・測量等の費用、借入返済、譲渡税を引いた手取りと入金日を確認する。納期限の後に入る代金は、期限内の納税資金としては間に合わない。売却価格の見込みだけで支払計画を決めない。

延納は、困難な額を年払いにする許可制度

延納は、お金で一括納付するのが困難な場合に、年払いの許可を求める制度だ。相続税額が10万円を超え、納付困難と認められる金額の範囲内で申請する。

原則、税額と利子税に相当する担保が必要だ。ただし、延納税額100万円以下、かつ、期間3年以下なら、担保は不要となる。

期限内申告なら、通常の申告・納付期限までに、延納申請書と担保関係書類を出す。

担保関係書類が間に合わなければ、所定の延長届出により、1回3か月、最長6か月まで提出期限を延ばせる。申請書そのものを後回しにできる制度ではない。

延納期間は相続財産の構成等によって異なり、条件によって最長20年となる部分がある。誰でも全額を20年に分けられるわけではなく、期間中は利子税もかかる。許可される額だけでなく、分納を続ける収入があるかを試算する必要がある。

600万円を説明上10回均等で払うとすれば、元本だけで年60万円だ。実際の許可条件を示す例ではない。

恵理の生活費に加え、年60万円と利子税等を払い続けられるか。直樹の「延納すれば大丈夫」という案も、毎年の収支で比べよう。

物納は、延納でも困難な額を一定の相続財産で納める

物納は、延納によってもお金で納めるのが困難な場合に、その困難額を限度として、一定の相続財産で納める制度だ。

当初の申請で、必ず一度は延納を実施しておく、という意味ではない。お金で納められるかという条件と、実際に利用した順番を分けよう。

対象は原則として相続税の課税価格計算の基礎となった国内の相続財産で、種類や順位、管理処分の適格性が定められている。恵理が別にもともと持つ土地を、相続した土地と同じように物納へ出せるわけではない。

担保権が付いている、境界が不明、共有や権利の争いがある等の財産は、物納に適さない場合がある。

ほかに適当な財産がない場合に限る「物納劣後財産」もある。居住・事業用の建物と敷地でも、納税義務者自身がその建物と敷地の物納を申請する場合を除く等、細かい条件を確かめる。不要な土地を何でも国へ渡せる制度ではない。

申請書と関係書類の期限、審査、収納価額を確認する。文子が住み続けたい家を物納の候補にするなら、その後の住まいも別に必要になる。使える現金がなくても、今後の生活の場所を失ってよいかは家族の問題として残る。

売却と物納は、手取りと残す財産で比べる

相続した不動産を売却して納税に充てることは可能だが、譲渡益には相続税と別の所得税・住民税等が関係する。相続したときの評価額を、そのまま売却時の取得費にできるわけではない。

相続税が課された人が、一定の期間内に相続財産を売れば、相続税の一定額を取得費へ加算できる特例がある。売却益の計算で差し引く費用を増やす仕組みで、相続税をそのまま全額返す制度ではない。

売る期間は、相続開始日の翌日から、相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日まで。適用には確定申告等が必要だ。

物納の収納価額は原則として課税価格計算の基礎となった価額で、市場の売値とは違う。許可されるか、どの額で納められるか、物納・売却それぞれの費用と税金を並べる。どちらかが常に有利とはいえない。

期限を過ぎた場合も、申告と納付相談を分けて動かす

申告をせず期限を過ぎれば無申告加算税、納付が遅れれば延滞税などが問題になる。申告済みで納税だけが遅れている場合と、そもそも申告をしていない場合では必要な手続が異なる。加算税の割合も、時期、税額、調査の状況等によって変わる。

申告・修正に必要な資料をそろえると同時に、所轄税務署へ納付困難の状況を具体的に伝える。期限後に申告を出す場合も、その提出日と延納等の申請期限の関係を確認する。「今は払えないから申告もしない」という先延ばしは避けたい。

相続税の延滞税は日割りで増える。申告期限から始まるコストの仕組み

相続税は、申告書を出すことと、税金を払うことを別々に確認する。期限までに納めない…

相続税・節税・不動産
相続税の延滞税は日割りで増える。申告期限から始まるコストの仕組み

恵理は税額の再確認、預金の払戻し、延納の試算を同時に始め、直樹には売却候補の調査を頼んだ。文子が住む家を残す希望も、必要資金の一覧へ記録する。600万円の差額を、期限と支払方法に分けて考えることが、実行できる対処へつながる。

相続手続きの流れと期限|調査・判断・申告を並行して進める

相続手続きでは、相続人・遺言・財産と借金を調べながら、相続放棄・税の申告・登記な…

相続手続き
相続手続きの流れと期限|調査・判断・申告を並行して進める

申請条件は国税庁の延納と物納、売却時の特例は取得費加算を参照できる。

ほかにも確認する手続がある場合は、相続税の申告・納付・調査の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

申告だけすれば納付は待ってもらえるか

通常、申告と納付は同じ期限までに必要になる。延納等は別に申請・許可が必要で、申告書を出しただけで納付期限が延びるわけではない。

延納しないと物納を申請できないか

延納によってもお金で納めることが難しいかを判定する制度であり、当初申請で実際の延納実施を必須とするわけではない。許可後に条件履行が困難となった場合の特定物納とは分ける。

未分割なら小規模宅地等の特例を使えるか

未分割財産は原則として対象外となる。未分割の申告・納付を行い、分割見込書等と分割後の更正の請求(多く申告した税額などを、税務署に直してもらうよう求める手続き)などを検討する。

期限を過ぎても申告できるか

期限後申告など必要な手続を進める。無申告加算税や延滞税が生じる場合があり、申告状況と納付方法を併せて確認する。

不動産を売れば相続税以外の税金はないか

譲渡益に所得税・住民税等が関係する。売却費用や借入返済を含む手取りを計算し、条件に合えば取得費加算等の特例と申告を確認する。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

TOP

電話でお問い合わせ LINEで簡単お問い合わせ