少数株式の締め出し。手続・価格・期限を確認

相続した少数株式の締め出し|スクイーズアウトの手続・価格・期限

少数株主の締め出しでは、何の手続か、株を取得される日や効力が生じる日、価格への対応を分けて確かめよう。

反対すれば全部止まる、何もできない、と決めつけない。通知から一律20日以内と覚えず、手続ごとに期間を調べる。

美沙が父から相続したのは、会社の500株だった。経営は、叔父の佳彦が続けている。

配当は多くないが、父の残した株だからと持っていた美沙に、株式等売渡請求という通知が届いた。取得日と、一株当たりの金額が書かれている。

佳彦は、株式を集めて事業を続けたい。美沙は、経営に反対したいわけではない。ただ、知らない間に株主でなくなり、値段も叔父の提示のままになることには、納得できなかった。

ここからは、手続と価格を考える架空の家族だ。

株を集める制度と、少数株主の保護

株式を集めると、会社の意思決定や事業の再編を進めやすくなることがある。

一方、売るつもりのない少数株主も、株主でなくなる。多数派が、好きな値段と日程だけで進めてよいのか、という問題が生じる。

会社法は、一定の条件と手続で、株式を集める方法を認めている。同時に、情報の提供、取得を止める請求、裁判所での価格決定等、少数株主を守る仕組みも置いている。

必ず一人ずつの同意を得る制度ではないが、価格や手続を調べる機会まで、なくなるわけではない。

相続税の評価額は、売渡価格が公正であることの証明とは別だ。会社が示した評価方式の名前だけで納得せず、その取引に合う前提か、資料と算定の根拠を確認する。

まず、どの手続かを通知と定款から確認する

方法 何が起きるか 最初に確認すること
特別支配株主の株式等売渡請求 一定の90%以上の議決権を持つ者が、残りの株式等の取得を請求する。 179条以下。支配割合、対象会社の承認、通知、取得日、対価。
株式の併合 複数株を一株へまとめ、少数株主の全持株が一株未満となる場合などがある。 180条以下。決議、併合割合、反対通知・議決、端数、効力発生日。
全部取得条項付種類株式の取得 会社がその種類の株式を全部取得する。 定款・種類株主関係、171・172条の決議・反対手続・価格決定期間。
合併・株式交換等の組織再編 再編で交付する対価の設計等により、元の株主の立場が変わる。 再編の種類、対価、各社での立場、反対株主の買取請求等。

株主総会の特別決議は、全株主の3分の2が賛成すれば、いつも足りるという計算ではない。

株主総会で投票できる議決権、開催に必要な出席割合である定足数、定款、株式の種類等を確かめる。手続が違えば、反対や請求の方法も変わる。

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179条では、誰が90%を持つか調べる

美沙の例を、会社自身が持つ自己株式はなく、一株一議決権の計1万株とする。佳彦が9,500株、美沙が500株なら、佳彦95%、美沙5%だ。

定款で法定より高い割合を定めていない等の条件なら、佳彦は、特別支配株主となるための議決権割合を満たす。

ただし、親族の株を全部足せば90%になる、というだけで、誰でも特別支配株主になるわけではない。

本人と、法律上の完全子法人等の条件を調べる。完全子法人は、発行済株式を全部持つ子会社等、法律上の範囲をいう。定款が、90%より高い基準を定めている場合もある。

この方法では、特別支配株主が対象会社へ通知し、承認を受ける。取締役会のある会社では、承認は取締役会の決議による。

対象会社は、原則として、取得日の20日前までに、売渡株主へ所定の事項を通知する。株主総会決議が不要でも、会社の承認や通知まで不要になるわけではない。

取得日から、申立期間を逆算する

179条の8で裁判所へ売買価格の決定を申し立てる期間は、取得日の20日前の日から、取得日の前日までだ。

通知を受けた日から20日以内、という規定ではない。

取得日を2026年12月1日とすると、条文上の期間は11月11日から11月30日までとなる。

11月1日に通知を受けても、その日から20日を数えるのではない。書面の作成、提出方法、受付も確かめ、最終日まで待たずに準備しよう。

179条の8は、取得日から逆算する

取得日を2026年12月1日とした、本文の説明例。ほかの手続へ、この日程をそのまま使わない。

11月11日~11月30日

取得日の20日前の日から、前日まで。

裁判所への売買価格決定申立ての期間だ。

12月1日 取得日

通知に書かれた取得日を確かめ、申立期間を逆算する。

11月1日に通知を受けた場合も、通知日から20日を数える制度ではない。提出方法・受付を調べ、最終日まで待たずに準備しよう。価格の交渉と、裁判所への申立ては別だ。

会社や叔父へ、価格に納得できないと伝えることと、裁判所への価格決定の申立ては違う。

交渉の返事を待つだけで、法律の申立期間が延びるとは考えないようにしよう。

会社から相続人への請求と区別する

会社が、相続人等へ売渡請求をする、174条以下の制度もある。譲渡制限株式について、定款の定め等が必要な、別の手続だ。

こちらの177条では、売渡請求の日から20日以内の価格決定申立てが問題になる。この期間を、特別支配株主による179条の請求と混ぜないようにしよう。

封筒に売渡しと書いてあるだけでは、判断できない。請求者が会社か、支配株主か、何条の手続か、取得日はいつかを、本文と添付資料から確かめる。

併合の反対・買取請求・申立てを分ける

株式を併合する、つまり複数株を一株へまとめる方法もある。元の1,000株を一株へまとめれば、美沙の500株は0.5株相当となる。

持株の全部が、一株未満の端数になる例だ。ただ、端数になったから、価値もなくなるわけではない。

併合で一株未満の端数になる株式について、182条の4の買取請求をする場合は、反対株主の条件を調べる。

総会で議決権を使える株主は、原則として、総会前に反対を通知し、総会でも反対する等の対応が必要だ。議決権を使えない株主には、別の規定がある。

会社へ買取りを請求する期間は、効力発生日の20日前の日から前日までとなる。

価格の話合いが、効力発生日から30日以内にまとまらなければ、その期間満了後30日以内に、裁判所へ価格決定を申し立てる仕組みがある。

総会前の反対、会社への請求、裁判所への申立てを、段階ごとに確かめよう。

全部取得条項付種類株式には、172条の別の手続がある。これは、会社がその種類の株式を全部取得できる定めのある株式だ。どの方法でも、一回の買取請求で済むわけではない。

価格の根拠を、資料から調べる

美沙の500株を、一株1万円で買う提示なら、対価は500万円。一株1万2,000円なら600万円で、差は100万円となる。

この差が、そのまま請求できる額とは限らない。会社の価値、取引条件、評価時点等から、公正な価格を調べる必要がある。

相続税評価、純資産、将来の収益等の資料を確認し、採用した方式と前提が今回の手続に合うかを調べる。「少数株だから必ず大幅に割り引く」「純資産を株数で割れば常に正解」とも決めない。手続や取引の経緯によって価格の判断は異なる。

対価の計算資料、承認の資料、会社が備え置く書面等を確かめよう。

179条の5の書面閲覧等と、433条の会計帳簿閲覧請求は、条件が違う権利だ。

433条は、原則として、議決権の3%以上、または自己株式を除く発行済株式の3%以上等を条件とする。定款で割合を下げられる場合、請求理由、会社が拒める理由も調べよう。

この例の美沙は5%を持つ。ただし、相続人全員で株式を共同相続したままなら、権利を使う人等も問題になる。一株あれば、どの会計資料も必ず見られるわけではない。

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価格の申立てと、差止めを分ける

179条の7は、法令違反、所定の通知・備置き違反、著しく不当な対価等について、売渡株主が不利益を受けるおそれがある等の場合に、取得をやめる請求を認めている。

株式併合でも、182条の3に基づき、法令・定款違反等による差止めを検討できる。差止めは、その行為を止めるための手続だ。

価格決定を申し立てるだけで、株式の取得や効力発生が、自動で止まるわけではない。

取得を止めたいのか、価格を公正に直したいのかを分けよう。取得後の争い方と期間も、別に調べる。期日後も同じ手続をすればよいと考え、待たないようにする。

通知を保存し、期限と資料を確かめる

  1. 通知・封筒・添付資料を保存し、手続名、請求者、取得・効力発生日を抜き出す。
  2. 株主名簿、定款、株数・議決権、相続での取得経緯を確認する。
  3. 手続ごとの反対通知・議決・買取請求・価格決定の期間を日付で並べる。
  4. 価格算定の前提と閲覧できる資料を確認する。
  5. 必要な裁判所への対応と、家族・会社との交渉を並行して検討する。

美沙は、父の株を取り上げるのかと尋ねるだけでなく、取得日と価格資料を確かめた。

佳彦も、株を集めたい事情と、今回の手続・対価の根拠を分けて説明する。家族関係を話し合いながらも、法律の期間は別に守る必要がある。

自分から売る場合は非上場株式(証券取引所に上場していない会社の株式)の事業承継、株式を集める計画は持株会社を使う相続対策も確認できる。

公的資料・根拠

会社法:171・172条、174〜177条、179〜179条の8、182条の2〜5、433条等

ほかにも確認する手続がある場合は、会社・株式・事業承継の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

少数株主の締め出しは、同意なしに行われる可能性がありますか

法律で決められた条件と手続を満たせば、個別の同意がなくても株式を取得される場合がある。特別支配株主の売渡請求、株式併合等で条件と対応が違うため、通知の手続名を確認する。

提示された買取価格が不当に低いと感じた場合、どうすればよいですか

179条の株式等売渡請求なら、価格決定申立ては取得日の20日前の日から取得日前日まで。通知から20日以内ではない。他の手続では反対通知・反対議決・会社への買取請求等も問題になる。

相続で受け継いだ少数株式にも、帳簿閲覧請求権はありますか

433条は原則として議決権3%以上、または自己株式を除く発行済株式3%以上などを条件とし、定款で引下げができる。理由の明示や拒絶事由も確認する。別の書類の閲覧権と区別する。

スクイーズアウトを事前に阻止する方法はありますか

179条の売渡請求では法令違反、所定の通知・備置き違反、著しく不当な対価等について、不利益のおそれ等の条件を満たすと取得をやめる請求を検討できる。価格決定の申立てとは別の手続だ。

少数株主として相続した株式を、自分から売却することはできますか

買い手と譲渡制限等の条件による。譲渡承認請求と、所定の買取りの請求等を確認する。相続による一般承継、会社から相続人への174条の売渡請求、特別支配株主の179条の請求は別に扱う。

本記事は、一般的な情報だ。通知、定款、株式と相続の資料から、個別の条件と期限を確かめよう。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

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文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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