遺産分割調停中の相続税申告|未分割申告・分割見込書・更正請求

未分割の相続税申告|調停中の納税・分割見込書・分割後の請求

調停中でも、申告が必要なら、相続税の申告と納税をする。原則、相続が始まったと知った日の翌日から10か月以内だ。

遺産が未分割でも、期限は自動的に延びない。申告、分割見込書、その後の承認申請や税額を直す手続を、調停の日程と分けて管理する。

父の宗一が亡くなり、母の節子と子の圭・奈緒は、遺産分割調停を続けていた。以下は架空の家族だ。

圭は事業用の不動産を残したい。奈緒は、代償金を実際に払ってもらえるかが不安だった。代償金は、遺産を多く受け取る人が、ほかの相続人へ渡す調整のお金だ。

節子は次の調停期日を待とうと思ったが、その前に税の申告期限が来る。

調停中も、申告と納税を進める

申告が必要な人は、相続が始まったと知った日の翌日から、原則10か月以内に申告し、納税する。

家庭裁判所で調停や審判が続いていても、財産の評価に合意できなくても、それだけでは期限は延びない。審判は、裁判官が事情や資料を調べて判断する手続だ。

調停は、誰がどの遺産を受け取るかを話し合う手続である。調停委員会が税務申告を代行したり、各人の相続税を確定したりするわけではない。調停を担当する弁護士と申告を担当する税理士に同じ資料を渡し、争いの整理と納税の準備を並行する。相続手続の期限一覧も使い、税務の締切を別に書き出しておく。

未分割でも、財産と税を計算する

未分割申告は、納税を待ってもらうための仮申告ではない。期限内に申告し、税を納める。

相続税法55条に従い、未分割の財産も、民法上の相続分や包括遺贈の割合で取得したものとして計算する。包括遺贈は、遺産の全部や一定の割合を遺言で渡すことだ。

この計算をしても、最後に誰が何を受け取るかが決まるわけではない。分割の合意とは分けて考える。

未分割部分だけに、法律の相続割合を掛ければ済むとは限らない。

特別受益に当たる生前贈与や遺贈があれば、相続の取り分を計算するときに調整する。既に一部の財産を分けたなら、その取得分も考える。

一方、介護等による寄与分は、この未分割財産の税の計算へ、そのまま反映するものではない。

相続人が妻と子二人で、特別受益等がない場合を考えよう。民法上の遺産総額が8,000万円なら、取り分の計算の基礎は妻4,000万円、子各2,000万円となる。

妻が既に預金2,000万円を取得したとする。残り6,000万円については、全体の取り分から、取得済みの額を引いて計算する。

残り6,000万円は、どう計算するか

相続人は妻と子二人。全体8,000万円で、特別受益等がない単純例。妻が預金2,000万円を取得済みとする。

妻・節子

4,000万円の取り分
-取得済み2,000万円
=残り2,000万円

子・圭

2,000万円の取り分
-取得済み0円
=残り2,000万円

子・奈緒

2,000万円の取り分
-取得済み0円
=残り2,000万円

未分割の残りだけを、再び妻1/2・子各1/4にしない。全体の取り分から、取得済みの額を引く。民法上の配分の例で、実際の課税価格には税の評価・債務等も関係する。最終的な分割の合意や、現金を引き出す権限を示す図ではない。

生前贈与については、民法上の特別受益の扱いと、相続税へ加算する贈与の範囲・評価額が一致しない場合もある。贈与の日、金額、財産、贈与税申告書を税理士へ示す。国税庁の未分割財産と課税価格の計算例も、分割済み財産と贈与を含めて説明している。

節子が先に受け取った2,000万円と、未分割部分で計算する2,000万円は、分けて記録する。

圭と奈緒の計算上の取り分が各2,000万円でも、その現金をすぐ引き出せるわけではない。不動産が中心なら、税の計算上は財産があっても、納税に使える現金が足りないことがある。

一人の取得だけ決まった場合も確認

国税庁には、相続人四人のうち、一人が財産を取得しないことだけ調停で確定し、残りの人の調停が続く事例がある。

この事例では、取得しない人は更正の請求ができ、残る三人には修正申告が必要とされる。更正の請求は、多く申告した税額等を税務署に直してもらう手続だ。修正申告は、少なく申告した税額等を自分で直す手続をいう。

したがって、調停全体が終わるまで一律に待つのではなく、「誰の取得が、どの調停条項で確定したか」を調べる。ここでいう取得しない旨の調停合意は、家庭裁判所への相続放棄の申述とは区別する。具体的な扱いは国税庁の調停中の更正の請求の事例で確認できる。

最終分割後も、税額が減る人と増える人で手続は異なる。減る人は更正の請求、増える人は修正申告等を確認する。分割協議書や調停調書だけでなく、当初申告書・評価明細・納付記録をそろえて計算し直す。

調停の日程と、税の期限を並べる

例えば、分割見込書は出したが、必要な承認申請を忘れ、申告期限から3年半後に分割がまとまったとする。これは、期限管理を考えるための想定例だ。

分割後すぐ更正の請求をしても、必ず特例を使えるとはいえない。その前の承認申請をしていないこと自体が問題になる。

相続が始まったと知った日、申告期限、その期限から3年を経過する日、承認申請の期限を一覧にする。

判決や調停等で分割できるようになった日と、分割の事実を知った日も記録する。各期限に、担当者、提出予定日、実際の受付記録を添える。

弁護士と税理士が別なら、調停が成立したことを、誰がいつ伝えるかも決めておく。

争いが長引く場合の進め方は、遺産分割協議がまとまらないときの対応と遺産分割調停と弁護士への相談で確認できる。

節子たちは、圭の弁護士と申告を担当する税理士に、同じ財産表と調停条項の資料を渡すことにした。奈緒の取得が先に確定したときは、その時点で連絡する担当も決める。次回期日だけを待つ状態から、申告・納付・見込書・承認・分割後の申告という順序で期限を確認できる状態へ変えていく。

後の軽減と、今の納税資金は別

配偶者の税額軽減は、妻や夫が実際に取得した正味の遺産額を基に計算する。1億6,000万円と法律上の相続割合に当たる額を比べ、多い方までに対応する税額等を軽減する仕組みだ。

小規模宅地等の特例は、条件を満たす土地について、税の計算に使う価格を、面積や割合の限度内で減らす。家族全員に同じ軽減がある制度でも、税額全体を80%引く制度でもない。

当初の申告時に未分割である財産には、これらの特例をそのまま適用できない。その後に適用を受けられる見込みがあっても、今必要な納税資金と、将来の税額の見込みは別々に考える。

税額も、別の単純例で確かめよう。相続人は節子と子二人で、税の計算上の価格は家と土地4,000万円、預金4,000万円の合計8,000万円とする。

ほかの財産・債務、贈与の加算、税額控除等はないとする。基礎控除は4,800万円なので、課税遺産総額は3,200万円だ。

まず、課税遺産総額を法律の割合で妻1,600万円、子各800万円に分ける。現行の税率表に当てはめると妻190万円、子各80万円で、合計350万円となる。

次に、この総額を取得割合で分ける。当初の未分割申告で妻1/2、子各1/4とする例では、妻175万円、子各87万5,000円だ。

先ほどの190万円は、総額を出す途中の数字だ。妻が納める税額そのものではない。

その後、妻が家と土地4,000万円、子が預金2,000万円ずつを取得する分割が成立したとする。妻の軽減の条件と手続をすべて満たせば、この例の妻の175万円は軽減の対象になり得る。

だからといって、未分割の当初から175万円を納めなくてよい、とはならない。実際の評価、取得、控除で結果は変わる説明例だ。

節子は、軽減される見込みの税額と、期限までに用意する資金を別の欄にした。相続した預金の払戻しや、手元の資金、延納等の可否を確かめる。家を受け取る予定があっても、その価値がそのまま納付に使える現金ではない。

分割見込書と、分割後の請求は別

未分割の財産について、後から配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使いたい場合は、当初の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を付けて出しておく。

原則、申告期限から3年以内に分割する。各特例の条件を満たした上で、更正の請求等の手続も行う。

見込書は、今の未分割財産に直ちに特例を使う書類でも、申告・納税の期限を3年延長する書類でもない。節子たちは、提出期限、分割の期限、分割後の請求を一つの「3年後」にまとめないことにした。

分割後に税額が減る人は、更正の請求を確認する。税額が増える人は、修正申告と追加納付を確認する。

国税庁の一般の案内では、分割の事実を知った日の翌日から4か月以内に更正の請求をするとされる。特例のQ&Aでは、分割日の翌日から4か月以内と説明されている。

合意が成立したら、すぐ税理士へ伝える。期間を数え始める日と必要書類を確認し、請求を後回しにしない。

当初申告書、分割協議書等、評価資料、見込書の控えを保管する。税務署が分割の結果を知り、何も請求しなくても自動的に返金するとは考えない。

3年を超えそうなら、承認申請も確認

訴訟が続いている等、一定のやむを得ない事情で3年以内に分割できない場合は、税務署長の承認を受ける制度がある。

所定の申請書の提出期限は、申告期限後3年を経過する日の翌日から、2か月を経過する日までだ。家族でもめていれば自動的に認められる、という制度ではない。

承認を受けた後にも、期限がある。判決の確定等により分割できることとなった日の翌日から4か月以内に、分割する必要がある。

その上で、特例を使うための更正の請求等の期限も守る。申請、承認、分割、請求は、それぞれ確認する。

圭と奈緒は、分割が長引きそうならその時点で税理士へ状況を伝えることにした。3年を過ぎてから「調停中だった」と伝えるだけですべて戻せるわけではない。裁判所の書類と進行の記録も保管しておく。

あわせて確認する手続と資料

ほかにも確認する手続がある場合は、相続税の申告・納付・調査の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

調停中なら相続税申告を待てるか

調停中という理由だけでは待てない。申告が必要なら、原則10か月以内に未分割の状態で申告・納税する。

未分割申告をすると、その割合で分割することになるか

その申告だけで遺産分割の合意が成立するわけではない。税金の計算と、最終的に誰が受け取るかを決める協議・調停は区別する。

未分割財産は単純に法定相続分で割ればよいか

特別受益や一部分割がある場合は単純な割合計算では足りない。生前贈与や既に取得した財産を示して計算を確認する。

分割見込書だけで特例を使えるか

それだけでは確定しない。所定期間内の分割、特例固有の条件、更正の請求等が必要であり、3年を超える場合には別の承認申請も問題になる。

分割後は全員が更正の請求をするか

一律ではない。税額が減る人は更正の請求、増える人は修正申告等を確認する。一人の受け取る額だけ先に確定した場合も手続を確認する。

本記事は一般的な情報を示すものである。具体的な手続や税務は、亡くなった日、財産、資料などを確認して判断する必要がある。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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