賃貸マンションの相続税評価。土地・建物・空室と特例を確認

賃貸マンションの相続税評価|貸家建付地・空室・特例の計算

賃貸マンションの相続税評価は、土地、建物、貸付の状況を分けて計算する。一棟を所有している場合と分譲マンションの一室を貸している場合も区別し、相続開始時の権利と利用状況を確認する。

架空の家族で考えよう。父を亡くした浩介は、一棟の賃貸マンションを引き継ぎたい。

妹の奈緒は、売却の査定では高いのに、税の評価が低くなる理由が気になる。母の敏子は、今後の家賃を、生活費に使えるかが心配だ。

家族は、まず税の評価を計算し、その後に、分割で使う価額、実際の収支、納税資金を調べることにした。

同じ物件でも、数字の目的が違えば、一致するとは限らない。評価が下がることは、現金や利益が増える意味ではない。

土地と建物に、別々の評価調整がある

自分の土地に建てた家を貸す場合、その敷地は、貸家建付地として評価することがある。借り手の権利により、土地の使い方も間接的に制約されることを、評価へ反映するためだ。

土地そのものを貸す貸宅地や、土地を借りる借地権とは、区別しよう。

一般的な貸家建付地の式は、「自用地としての価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」だ。

自用地としての価額は、借り手の権利による減額前の、土地の価額となる。路線価方式や倍率方式等で、形状、面積、どこを一つとして評価するか等を調べて求める。

貸す建物の価額は、一般に「自用家屋価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」で求める。

自用家屋価額は、固定資産税評価額に1.0を掛けた金額だ。建築費や売却の査定額から、一定割合を引く計算とは違う。

借地権割合は、路線価図・評価倍率表等で調べる。路線価図のA~Gは、90%から30%に対応する。すべてが60~90%というわけではない。

借家権割合も、評価基準書で確かめる。以下の説明では、30%とする。

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土地8,000万円・建物2,000万円の例で計算する

説明用の例として、父が土地と建物を単独で所有し、自用地価額8,000万円、自用家屋価額2,000万円とする。

借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%と仮定しよう。区分所有補正等の、別の調整はない一棟の例だ。

  • 土地:8,000万円×(1-0.6×0.3×1)=6,560万円。
  • 建物:2,000万円×(1-0.3×1)=1,400万円。
  • 土地・建物の合計:7,960万円。

自用の単純な合計1億円との差は、2,040万円だ。相続税が、2,040万円減る意味ではない。

税額は、ほかの財産、借金等の債務、基礎控除、法定相続分による総額の計算、実際に受け取る割合、税額控除等を経て求める。法定相続分は、法律が定める相続の割合だ。

分割で使う価額を決めるときも、税の評価7,960万円を、そのまま清算の基準にするわけではない。

売れる見込み、収益性、借入れ、当事者の合意等を含めて考える。代償金は、遺産を多く受け取る人が、ほかの相続人へ渡す調整のお金だ。税の評価と、代償金の額は、分けて考えよう。

賃貸割合は、床面積で調べる

賃貸割合は、独立して貸せる各部分の、床面積の合計を基にする。そのうち、課税時期に賃貸されている各部分の床面積が、どれだけを占めるかを調べる。

部屋の面積が違えば、10戸のうち8戸を貸していても、80%とは限らない。

各独立部分の床面積の合計500平方メートルのうち、賃貸と扱う部分が400平方メートルなら、賃貸割合は80%だ。

先ほどの条件では、土地は8,000万円×(1-0.6×0.3×0.8)=6,848万円となる。建物は2,000万円×(1-0.3×0.8)=1,520万円で、合計8,368万円だ。

賃貸割合は、部屋数より床面積で考える

独立して貸せる各部分の床面積の合計を、500平方メートルとする本文の仮定例。

賃貸と扱う部分

400平方メートル

緑の部分。割合の計算では、こちらの面積を数える。

そのほかの部分

100平方メートル

薄茶の部分。この例では、賃貸と扱う面積に含めない。

400 ÷ 500 = 80%

戸数だけで決めず、各独立部分の面積と利用状況を調べる。一時的な空室を賃貸中と扱えるかは、募集記録や前後の貸付等から別に確かめよう。図は面積割合の説明で、実際の間取りではない。

死亡日に空室でも、一時的な空室として、賃貸中と扱える場合がある。

以前から継続して貸していたか、退去後すぐに募集したか、ほかの用途に使っていないかを調べる。空室の期間や、その後の貸付も確かめよう。

募集していれば期間を問わず全部を含める、1か月を超えたら必ず対象外、といった一律の判定はしない。

契約書、退去日、管理会社の募集記録、前後の入居状況、各室の床面積等をそろえる。課税時期の状態を、後から説明できる記録を残そう。

奈緒は、空室の数だけを見ていた。だが、浩介が管理会社へ確かめると、部屋ごとに面積と、募集の経過が違っていた。

二人は、税を計算する賃貸割合と、将来の家賃収入の予測を、別の表にすることにした。

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分譲の一室は、2024年以後の補正も調べる

区分所有の登記をせず、一棟で持つ賃貸マンションは、居住用区分所有財産の新しい評価の扱いとは異なる。

分譲マンションの一室等、一定の居住用区分所有財産を、2024年1月1日以後に相続等で取得した場合は、区分所有補正率を調べる。これは、評価を調整するために掛ける割合だ。

対象となる物件では、家屋部分と、敷地を使う権利の従来の価額に、それぞれ補正率を掛ける。

その価額を基に、貸家・貸家建付地の評価や、小規模宅地等の特例を考える。貸しているから、この補正が不要になるわけではない。

低層のもの、一定の二世帯住宅、事業用テナント等、適用のないものもある。

マンションという名前や、高層かどうかだけでは決めない。登記、用途、階数、専有部分、敷地権等の資料で確かめよう。

貸付事業用宅地等は200平方メートルまで50%

小規模宅地等の特例は、一定の暮らしや事業の基盤を引き継ぐ負担を、和らげるための仕組みだ。

貸付事業用宅地等に当たれば、200平方メートルまで50%減額する。ただし、条件を満たす土地等の課税価格が対象で、建物を半額にする制度ではない。

故人の貸付事業を、申告期限までに引き継ぎ、期限まで続けること、取得した宅地等を期限まで持ち続けること等を調べる。

故人と暮らしの費用を共にする親族の貸付事業だった場合も、所定の事業継続・保有条件がある。

相続開始前3年以内に、新しく貸付事業に使った宅地等は、原則として除外される。

ただし、故人等が3年を超えて続けていた特定貸付事業に使ったもの等には、所定の例外がある。特定貸付事業は、ここでは、準事業を除く貸付事業をいう。

準事業は、事業と呼ぶには至らなくても、相当の対価を得て継続して行う貸付等だ。始めた年月だけでなく、事業の内容も確かめよう。

満室時の土地6,560万円が200平方メートルで、全部について条件を満たし、ほかの対象地を選ばないとする。この仮定なら、特例後は3,280万円だ。

実際には、面積、持分、用途、受け取る人を調べる。自宅等の土地も選ぶ場合は、限度面積の調整も必要となる。

敏子の住む自宅も対象となり得るなら、どの土地を選ぶかを比べる。

自宅330平方メートルと貸付用200平方メートルの限度を、そのまま足して使えるわけではない。

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分割・申告・納付の予定を立てる

相続税の申告・納付は、通常、相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内だ。

対象地の特例は、原則として分割が必要だが、分割が終わらなくても、税の期限は自動で延びない。

未分割なら、法定相続分等に基づく申告・納付を考える。後で特例を使うために、分割見込書等の手続も調べよう。

原則として、申告期限後3年以内の分割と、分割があったことを知った日の翌日から4か月以内の、更正の請求等を管理する。更正の請求は、払い過ぎた税を減らすよう求める手続だ。

特例を使って初めて税額がゼロになる場合も、申告と必要な添付資料を確かめる。

対象となり得る土地等や、ほかの一定の特例財産を取得する人が複数いる場合は、選択への全員の同意も必要だ。対象地を受け取る人だけで決めないようにしよう。

評価額が下がっても、申告期限までに使える現金は、別に用意する。

家賃から管理費、修繕費、返済等を払った残額を調べよう。敏子の生活費、浩介の納税資金、奈緒への代償金を、同時に払えるかも考える。

管理会社と家族でそろえる資料

  • 土地・建物の登記、図面、死亡年の路線価図・倍率表、固定資産税評価資料。
  • 各室の床面積、賃貸借契約、入退去・募集記録、敷金等の状況。
  • 貸付開始日、事業の継続状況、受け取る人と分割案。
  • 借入契約・残高、家賃と経費、返済予定、修繕の見通し。

浩介は経営を続ける案を、奈緒は売却案と代償金の試算を用意し、敏子の希望を聞くことにした。

物件を取る人だけが、評価の計算を理解すれば済むわけではない。数字の目的と根拠を家族で共有し、税と分割を分けて話し合おう。

全体の整理は不動産評価の補正・特例、国外の物件は海外不動産の評価を参照したい。現行の算式は国税庁No.4614で確認できる。

ほかにも確認する手続がある場合は、不動産評価・小規模宅地・農地の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

土地は自宅用より必ず安く評価されるか

貸家建付地に当てはまるか、権利や利用状況を確認する。自用地価額と借地権・借家権・賃貸割合から計算し、一律の減額額とはならない。

空室はすべて賃貸割合から除くか

一時的な空室として賃貸中と扱える場合がある。従前の貸付、募集、他用途への転用、空室期間やその後の貸付などから確認する。

小規模宅地等の特例は使えるか

貸付事業用宅地等の条件を満たせば、200平方メートルまで50%減額する。開始時期、受け取る人の継続・保有、分割と申告、他の宅地との面積調整等を確認する。

期限までに分割できなければ特例を失うか

当初は使えなくても、分割見込書等と後の分割、更正の請求により適用できる場合がある。申告・納付と各手続の期限を管理する。

相続税の申告期限はいつか

通常は相続が始まったと知った日の翌日から10か月以内で、納付も同じ期限となる。分割未了でも自動的には延びない。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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