生前贈与では、贈与税の枠だけで決めず、渡す目的と、自分の生活に残すお金を先に確かめよう。相続税や家族間の配分も別に考える。
贈与は、無償で与える意思を相手が受け入れる契約だ。生前に渡せば、必ず節税になるわけではない。
母の史乃は、息子の丈へ生前に資金を渡したいと考えている。丈は年110万円なら税は関係ないと思っていたが、娘の杏奈は「母の介護費を残せるか、贈与も将来の配分に関係するか」を知りたいと言う。以下は説明用の架空の家族だ。
制度選択の前に、贈らなかった場合の税額と、本人へ残す生活資金を確認する。 生前贈与で相続税は減る?2024年改正後の暦年課税・相続時精算課税で詳しく確認できる。
住宅、教育、結婚・子育て、配偶者への住まいの贈与には、それぞれ制度がある。
今から使える制度か、既存契約を続ける段階かを分けよう。対象費用と、申告の条件も確かめる。
「知っておくと得をする」生前贈与の具体的な手法
目的ごとに、使える制度と条件を見ていこう。
①暦年贈与(年110万円の基礎控除活用)
暦年課税は、受け取る人の1月1日〜12月31日の贈与の合計から、110万円を引く方法だ。複数の人から受けても、その合計で考える。
丈が母から年110万円を5回受ければ、移る財産は550万円だ。これは節税額ではない。将来の相続税への加算と、史乃の生活資金は別に確かめよう。
②教育資金の一括贈与(租税特別措置法70条の2の2)
新たに資金を入れるための適用は、2026年3月31日で終了した。4月1日以後は新たに使えない。
期限までに適用を受けた既存契約は、終了まで従来の扱いが続く。学校等以外の習い事等に使える部分は、その契約の枠内で500万円が上限だ。
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③結婚・子育て資金の一括贈与(租税特別措置法70条の2の3)
18歳以上50歳未満の子・孫への結婚・子育て資金には、1,000万円までの措置がある。新たに資金を入れる期限は2027年3月31日で、結婚費用300万円はその内枠だ。
前年の合計所得金額1,000万円以下等の条件、管理契約、金融機関経由の非課税申告、支出確認が必要になる。自由に使える現金を渡すだけの制度ではない。
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④配偶者への居住用不動産贈与(相続税法21条の6)
婚姻期間20年以上の配偶者へ、国内の居住用不動産やその購入資金を贈る場合、最高2,000万円を贈与税の計算で控除できる特例がある。基礎控除110万円と合わせれば最高2,110万円だ。
翌年3月15日までに実際に住み、その後も住む見込み等の条件がある。同じ配偶者からの贈与について一生に一度で、申告も必要だ。
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110万円以下なら常に相続税の対象外とは限らず、贈与の実態・課税方式・加算を確かめる。 生前贈与で相続税は減る?2024年改正後の暦年課税・相続時精算課税で詳しく確認できる。
今日から動ける、生前贈与の実践ステップ
送金の前に、次の順で確かめよう。
- 財産と負担を調べる:不動産・預貯金・株式・保険を一覧にする。評価、債務、贈与の加算、申告を条件とする特例も調べ、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)と比べる。超えるから必ず贈与が有利とは限らない。
- 相手・金額・課税方法を決める:本人の生活資金を先に残す。暦年課税と相続時精算課税等の条件を比べ、受け取る人ごとの贈与合計も確認する。
- 合意と資金の動きを残す:年ごとに贈るなら、その合意を日付・金額・当事者とともに書面にする。振込や口座の管理状況も残す。書面一枚で、贈与の実態まで決まるわけではない。
- 特例と期限を確かめる:教育資金は新規利用が終了し、結婚・子育て資金は2027年3月31日まで等、扱いが違う。金融機関等で現行の条件を確認する。
預金2,500万円、生活・介護等に残す予備1,800万円という架空の例だ。ほかの収入・支出は置かない仮計算である。
2,500万円 − 1,800万円
= 700万円
700万円 − 550万円
= 予備のほかに残る 150万円
移る550万円も、残る150万円も、節税額ではない。5年間の給付を最初に約束する契約とは分け、年ごとの合意や課税を確認する。将来の生活費が必ず足りるという判断でもない。
丈は、移る550万円と税の軽減額を別に考えることにした。杏奈は、家族間の配分を確かめる。
特別受益は、一定の生前援助等を取り分へ反映する仕組みだ。遺留分は、一定の相続人に保障される最低限の取り分である。どちらも、税の加算とは違うルールに従う。
母の希望と生活、契約と税を並べ、贈る案と残す案を比べよう。
住宅資金の贈与も、契約や送金の前に確認する
住宅取得等資金の非課税には、受け取る人、所得、住宅の性能、入居、期限、申告等の条件がある。
住宅代を渡せば自動で使えるわけではない。誰のどの住宅に使うかを決め、送金・契約・登記の順番を先に確かめる。
具体的な金額と必要条件は住宅取得等資金の贈与税非課税へ進む。教育資金等も、新規適用を受けられる期間と、既存契約の残額を管理する段階を分けて読む。
ほかにも確認する手続がある場合は、生前贈与の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。
あわせて確認できる説明
よくある質問
生前贈与は年間いくらまで非課税ですか
暦年課税では、受け取る人の年の贈与合計が110万円以下なら、贈与税はかからず申告も不要だ。複数の贈与者からの分も合計する。相続時精算課税を選んでいる場合は、別に確認する。
生前贈与した財産は相続税の計算に含まれますか
相続等で財産を受け取った人には、亡くなった人から受けた一定期間内の暦年贈与を、相続税の計算へ加える仕組みがある。110万円以下の贈与も対象になり得る。2024年以後の贈与から期間が段階的に延び、2031年以後に始まる相続では原則7年となる。適用除外等も確認する。
贈与契約書がなくても贈与は有効ですか
双方の合意があれば、口頭でも有効になり得る。ただし、書面によらない贈与は各当事者が解除でき、すでに渡し終えた部分は除く。契約書がなくても、振込等の記録から経緯を確かめられる場合がある。
配偶者への贈与で2,000万円まで非課税になると聞きましたが、条件は何ですか
婚姻期間20年以上で、国内の居住用不動産や購入資金を贈ること、翌年3月15日までに実際に住み、その後も住む見込み等が条件だ。同じ配偶者からの贈与では一生に一度で、贈与税の申告が必要になる。
相続税の申告期限はいつですか
原則として、相続が始まったことを知った日の翌日から10か月以内だ。未分割というだけでは延びない。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例には、分割・申告等の条件があるので、期限前に確認する。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務アドバイスではありません。具体的な判断は必ず弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。



