非上場株式の相続税評価|株主区分・会社規模・3方式の使い分け

非上場株式の相続税評価|株主区分・会社規模・3方式の使い分け

非上場株式の相続税評価は、一番安い方式を自由に選ぶ制度ではない。まず受け取る人の株主区分を調べる。

原則的評価を使う区分なら、会社規模や、特定の評価会社に当たるかも確かめる。その判定を基に、使う方式と、認められる選択を調べよう。

父の慎二の株式を調べた美穂は、少しだけ取るなら、安い配当還元方式を使えるのでは、と考えた。

会社で働く弟の亮は、経営は自分が継ぐが、株は家族で均等にすればよい、と話す。母の文子は、評価額と同じだけの現金を、家族が用意できるか心配だった。

以下は、評価の順序を説明する架空の家族で、計算も仮の数字だ。非上場株式は、証券取引所に上場していない会社の株式をいう。

定款、株主名簿、決算書、主な資産の明細をそろえよう。本人の持株割合だけでは、評価方法は決まらない。

まず、受け取る人の株主区分を調べる

三つの方式があると聞くと、一番低い額を選べばよい、と考えやすい。しかし、先に確かめるのは、どの方式を使えるかだ。

取得者が会社に持つ支配力等に応じて、通達が評価方法を定めている。同族株主等なら原則的評価、経営への影響が小さい一定の株主なら配当還元価額、という区分をまず調べる。

自分の区分が分かったら、その中で、通達が認める方式の選択を確かめる。

本人の持株比率が5%未満なら、必ず配当還元方式、とはいえない。財産評価基本通達188では、本人の比率以外も調べる。

親族等の同族関係者を含むグループの議決権割合、中心的な同族株主がいるか、取得後の本人の議決権割合を確かめる。

さらに、課税時期に役員か、その翌日から申告期限までに役員に就くかも、条件に沿って調べる。本人が5%未満でも、グループの構成等によって原則的評価になる場合がある。

議決権のない株式や種類株式がある場合も、単純な発行済株式数だけで判断しない。株主名簿の持株数という一行の数字は、判定の材料の一つにすぎない。

なお、配当還元価額が原則的評価による価額を上回る場合は、原則的評価による価額を用いる。配当還元方式に該当しても、機械的に低い価額になるとは限らない点も確認しておきたい。

定款、株主名簿、種類株式と議決権の資料、親族・関係会社を含む株主関係図をそろえよう。

関係図があると、誰を同じグループに含め、議決権を合計するかを確かめやすい。

美穂本人の議決権が4%でも、親族等のグループが大きな割合を持つ場合がある。4%だけでは、配当還元方式と決められない。

中心的な同族株主への該当性、役員就任等も、通達188の条件で調べる。配分案を変えるなら、亮も含め、受け取る人ごとに判定し直そう。

原則的評価なら、会社規模を調べる

株主区分の判定で原則的評価に入ると決まったら、次の問いは「会社の規模はどこに当たるか」だ。大会社・中会社・小会社の区分によって、使う評価方式と計算の組み合わせが変わる。

区分 原則的な評価 確認点
大会社 類似業種比準価額 純資産価額を選べる場合もある
中会社 類似業種比準価額と純資産価額の併用 会社規模に応じたLを用いる。純資産価額を選ぶこともできる
小会社 純資産価額 Lを0.5とする併用方式を選ぶこともできる

会社規模は、業種、総資産価額、従業員数、取引金額を、通達の基準で確かめる。

売上が小さいから小会社、従業員が多いから大会社、と一つの数字だけで決まるものではない。四つの指標を組み合わせる。

通常の中会社の併用方式で、二つの価額を組み合わせる例を見よう。株主区分、会社規模、特定会社等の判定と、必要な調整は済んだものとする。

比率のLを0.60、類似業種比準価額を1株2万円、純資産価額を1株5万円と仮定する。2万円×0.60+5万円×0.40=3万2,000円。100株なら、320万円だ。

この例はLや評価額を好きに設定できるという意味ではない。特定の評価会社の判定や必要な調整を済ませた上での説明用の数字であり、320万円で買い手が付くとも、320万円の現金を家族が受け取れるとも限らない。

二つの価額を、決まった比率で組み合わせる

本文の仮定。通常の中会社でL=0.60を使えると判定し、必要な調整も済んだ例だ。Lは自由に選ぶ数字ではない。

類似業種比準価額の分

1株2万円 × 0.60
= 1万2,000円

純資産価額の分

1株5万円 × 0.40
= 2万円

合計:1株3万2,000円
100株なら、320万円となる。

評価の仮計算であり、320万円で売れる、または家族の預金が320万円増える、という意味ではない。

類似業種比準価額:比べる業種と数字

類似業種比準価額は、国税庁が公表する類似業種の株価を基礎に、評価会社と類似業種の1株当たり配当・利益・簿価純資産を比べて計算する。

業種目の選び方、直前期・直前々期の数値、普段は生じない利益や配当の調整を確かめよう。

特別な事情で一時的に利益が増えた期は、そのまま使うか、調整するかを調べる。業種目も、会社の実態に合うものを選ぶ。決算書の数字を入れるだけで終わりではない。

純資産価額:帳簿の額を評価し直す

純資産価額方式では、課税時期の資産と負債を、相続税評価の決まりで評価し直す。評価差額に対する法人税額等相当額も調整して、1株の価額を計算する。

帳簿上の純資産を、発行済株式数で割るだけではない。

土地等は、帳簿の額と、相続税評価の決まりで調べた額に差が出ることがある。評価し直すと、純資産価額が上がる場合も、下がる場合もある。

有価証券、保険積立金、含み損益、帳簿に載っていない債務等も調べよう。債務は、借金等の、支払う義務などをいう。

「帳簿の純資産が少ないから評価額も低い」という見込みが、土地の含み益一つで大きく変わることがある。主要資産の明細——土地・建物、有価証券、保険、貸付金——を先に確認しておくのは、そのためだ。

特定の評価会社に当たるかも調べる

会社規模を当てはめて計算式を選んだ後、もう一つ確認が必要な場面がある。特定の評価会社に当てはまる場合、通常の規模区分とは別の評価方法が適用される。

当てはまる類型は次の通りだ。

  • 比準要素数1の会社
  • 株式等保有特定会社
  • 土地保有特定会社
  • 開業後3年未満の会社
  • 開業前・休業中・清算中の会社

資産の多くが株式や土地の会社は、規模では中会社でも、株式等保有特定会社や土地保有特定会社として、別の計算になる場合がある。

規模だけで終えず、資産の構成も確かめよう。

特定の評価会社の判定には、総資産に占める株式等や土地の割合を確認する作業が伴う。決算書と主要資産の明細が揃っていないと、この判定が始められない。

株主関係と資産の資料をそろえる

株主区分の判定から特定の評価会社の確認まで、評価の全体を通じて必要になる資料をまとめると次の通りだ。

  • 定款、株主名簿、種類株式・議決権に関する資料
  • 親族・関係会社を含む株主関係図
  • 直前期以前の決算書、法人税申告書、勘定科目内訳書
  • 土地・建物、有価証券、保険、貸付金など主要資産の明細
  • 従業員数、取引金額、業種、課税時期までの重要な変動

株主関係図は、同族関係者の議決権を合計するために使う。勘定科目内訳書は、資産等の詳しい内訳を調べる資料だ。

課税時期までの増資、役員変更、資産の売却等、大きな変化も確かめよう。評価に影響する場合がある。

名義株の問題が絡む場合は、取得資金の出所と管理の実態によって相続財産かどうかの判断が変わる。名義株が相続財産になるかどうかの判断基準は別に整理している。

税の評価額と、売買・分割の価格

評価額が出た後に、もう一つ確認しておきたいことがある。相続税申告のために計算した評価額と、遺産分割や売買・会社法上の価格は、常に同じになるわけではない。

相続税評価額は税金を計算するときの評価だ。支配権の有無、換価可能性、会社の実態的な価値、当事者の合意といった要素は、別に検討する。少数株式を他の相続人から買い取る場面や、会社に買い取ってもらう場面では、相続税評価額をそのまま交渉の基準にできないことがある。非上場会社の少数株式を相続した場合の換価・買取交渉では、この点を別に整理している。

評価額が高く出た場合の納税資金の問題は、自社株評価が高い場合の納税準備で確認できる。延納の条件や手続については相続税の延納を参照してほしい。

文子が気にする納税資金は、評価の計算表とは別に確かめる。

会社の資産を評価し直して株価が上がっても、株主個人の預金が同じだけ増えるわけではない。評価方法は、株式を現金に換える仕組みではない。

株主名簿の一行から、何を確かめるか

計算式を探す前に、自分の株主グループ、その議決権割合、中心的な同族株主がいるかを確かめよう。

株主区分を基に、使える評価方法を調べる。原則的評価なら、会社規模、特定の評価会社への該当性も確かめ、計算へ進もう。

評価の全体像を知った上で申告の準備を進めたい場合は、親の会社の株に相続税がかかる時の評価と納税資金も合わせて確認してほしい。相続した非上場株式を売却する場合の税金や特例については相続した非上場株式の売却で整理している。上場株式の相続との違いを確かめたい場合は含み益のある上場株式を相続した場合の取得費・売却税・特例を参照してほしい。

株主名簿と決算書があれば、まず株主関係図を書こう。同族関係者の範囲と議決権の合計を調べ、株主区分を確かめる。

その後の計算は、資産の内訳と会社規模の数字をそろえ、税理士へ資料を示して確かめよう。

美穂は、4%だけで判断するのをやめ、亮と、親族・関係会社を含む株主関係図を作ることにした。

文子の生活費と納税資金は、別の表にする。分かりやすい配分案でも、評価方法、議決権、使える現金を確かめて比べたい。

ほかにも確認する手続がある場合は、会社・株式・事業承継の関連ガイドから目的に合う説明を探せる。

よくある質問

3方式から最も安いものを自由に選ぶか

株主区分・会社規模・特定会社を先に判定し、その区分内で通達が認める選択をする。

本人の議決権が5%未満なら配当還元か

本人だけでなく同族グループ、中心的株主、役員等の条件を確認する。

純資産価額は帳簿の純資産を割るだけか

資産・負債を課税時期に評価し、評価差額に対する法人税等相当額などを調整する。

評価額は売却価格と同じか

税務申告の評価と売買・遺産分割の価格は必ず同じ額になるわけではない。

この記事は一般的な情報を説明するものだ。個別の判断は、相続関係、財産、契約、取引記録などの資料を示して弁護士・税理士へ確認したい。

この記事の読み方

相続の制度は、家族の状況と財産の中身で結論が変わります。

法律・税金・手続きを合わせて読む

税金の計算と、家族の合意・登記・支払資金をあわせて考えるための一般的な解説です。

個別事情で変わる点を重視

期限、特例、評価、分割方法はケースによって変わります。本文では一般的な考え方を示し、個別判断が必要な箇所は留保しています。

最終更新日

最終更新:

文章・図・表示の変更を含む。参照資料の日付や制度の適用時期は、本文で確認してください。

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